[5012] 脳内で散歩するの巻2◇50年前の新聞の文字◇バーチャルワールドとVTuber

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《在宅勤務:快適だったのは最初の数日間くらい》

■わが逃走[260]
 家の中でじっとしていてもツマランので、脳内で散歩するの巻 その2
 齋藤 浩

■もじもじトーク[129]
 50年前の新聞の文字は小さかった
 関口浩之

■晴耕雨読[60]
 コロナ騒動忘備録
 福間晴耕



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■わが逃走[260]
家の中でじっとしていてもツマランので、脳内で散歩するの巻 その2

齋藤 浩
https://bn.dgcr.com/archives/20200521110300.html

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いつも散歩のことばかり書いてるけど、外出自粛要請が出ちゃったから、これからしばらくの間、散歩は脳内ですることとしたい。

今回は、6年前の9月、宮崎での散歩を思い出す所存。

このときは写真家・小河孝浩さんと県立美術館で展示をしたのが、その際、市内やら西米良村内やらを歩き回ってみたところ、意外なオモシロさに出会うことができたのだ。

今回紹介する写真はすべてSONYのRX100で撮影したもの。このカメラ、まず登場時のインパクトがすごかった。1インチのセンサーとズームレンズが、こんな小さなボディに入ってしまうという衝撃。

しかもレンズはカールツァイスの28mm-100mm(35mm換算で)f1.8-4.9。

ほぼ完璧なスペックである。これでファインダーが付いて、ズーム域がもう少し広角寄りだったらなーと思ってたら、後継機RX100M3の登場で実現。

以降、RX100シリーズはこのジャンルにおいて他の追随を許さない存在となってゆく。お散歩カメラとしては、これ以上のものは必要ないだろう。

現在もなおシリーズの拡充が続き、最新はRX100M7だったかな。初代機からすべてが現行機種なのもスゴイ。基本コンセプトがいかに優れていたかという証拠だろう。

初代機、M3と乗り継いできたが2018年、どうしても望遠ズーム搭載のコンパクトが必要となりやむなく手放した。

しかしRX100M3は、新しくやってきたカメラよりもはるかに使いやすかったのだ。ちと後悔した。とくにRAWデータの自由度が高く、現像時の微妙なトーン調整も、フルサイズに近い感覚で思い通りにできた。つまり、ラチチュードが広いのだ。

とはいえ、1インチコンパクトを2台持つかといえば、NOである。ミラーレスを選択した方がはるかにコスパが高いし、表現の幅も広いと考える。でもまたいつか、RX100とお散歩に出かけたいものである。

さて、これは「米良街道」をゆく途中で出会った、ぞうさんのようなコアラさんのような構造物だ。
https://bn.dgcr.com/archives/2020/05/21/images/001

山から湧き出た水がオーバーフローしそうになった際、それらを集めて道路の下の水路へ導く、的な仕事をするのだろうか。口から水を吐き出してるシーンを見てみたいものではあるが、そんなときこの峠は通行止めになってる可能性が高いかもしれない。

これは市内で飲んで酔っ払ってなにげなく空を見上げたの図。
https://bn.dgcr.com/archives/2020/05/21/images/002

アジアを感じましたね。

また外階段の格子や壁面パターンも、写真に撮ると「線」になるんだねえ。あたりまえだけど。日本の日常を風景で表現する際、意図的に電線や電柱を入れたりすることもあるけど、この写真は逆に意味を持ってしまうので却下だ。

西米良村にて。
https://bn.dgcr.com/archives/2020/05/21/images/003

この村ではなんてことのない当たり前の朝の風景なんだけど、当たり前の風景に山も清流もあるってのがすごすぎて言葉にならない。この時は、ただ記録の意味でシャッターを切ったにすぎなかったのだが、木と水の匂いがとても濃かったことを思い出した。

それにしても、RX100は繊細な描写をする。原寸で見ると、対岸の葉っぱの1枚まで描写しているのがわかる。手放すんじゃなかったと、思わなくもない。

宮崎市のはずれにて。
https://bn.dgcr.com/archives/2020/05/21/images/004

いや、西都市だったかな。コインランドリーの裏の壁面なのだが、ミニマルアートのようだなあ。

そうそう今回の「脳内散歩」は、これまでに紹介していた「構造美」とは違う側面で語ろうと思っていたのだが、結局、同じような話になってしまったという事実。

宮崎市内の駐車場にて。
https://bn.dgcr.com/archives/2020/05/21/images/005

こういう、ちょっとした気配にも南国感がある。人を撮ることも楽しいが、人がいた痕跡という被写体も、想像力を刺激させるよいモチーフだと思う。

宮崎県の人口は世田谷区より少し多いくらい。西米良村の人口は世田谷区の1/850くらい。世田谷区の面積は、たしか西米良村の1/25くらい。

脳内散歩はもう少し続くかな。


【さいとう・ひろし】
saito@tongpoographics.jp
http://tongpoographics.jp/


1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。


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■もじもじトーク[129]
50年前の新聞の文字は小さかった

関口浩之
https://bn.dgcr.com/archives/20200521110200.html

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こんにちは。もじもじトークの関口浩之です。

4月上旬からテレワーク勤務になりました。僕の仕事は、リモートでできる仕事がほとんどなので、自宅の仕事部屋で、ビデオ会議したり、メールしたり、資料作成したり、インターネット生放送に出演したりしていると、あっという間に一日が過ぎてしまいます。

テレワーク勤務になる前は、往復2時間かけて、毎日、満員電車に乗っていました。通勤時間がなくなったことにより、1日24時間の使い方が有効的で効率的になった気がします。でも、溜まりに溜まった仕事がたくさんあるので、バリバリと仕事をこなしても、仕事がなくなるわけではありません。コロナ体制になる前よりも、実際に仕事をする時間が増えてしまったような気がします。

そして、一番の問題は、体重管理です。昨年12月から「半年かけて5kgダイエットしよう」を計画していました。3月末の時点で2kg減量に成功していたのですが、この7週間の巣ごもりテレワーク環境で、1.5kgもリバウンドしてしまいました。

差し引き0.5kgの減量なので、「まぁ、いいか」と自己納得しようとして思っていましたが、今日から心を入れ替えて、6月20日までにリバウンドした分の1.5kg削減を目標に掲げて、室内でのストレッチと軽い運動をコツコツやることにしました。と、宣言してみました………。

●わたしのテレワーク仕事部屋

もう一つの目標として、「溜まっている仕事を6月末までに全部やっつけよう」があります。テレワークになって、仕事の効率が良くなっていますので(気のせいでなければいいが……)、7月からスッキリした心持ちで再スタートしたいと思っております。

なぜなら、6月末で定年退職なので。「7月以降はどうするの?」は、のちのちの『もじもじ』でお話します。

そうそう。僕の仕事部屋は、文字や活字の書籍や古書などが、たくさん、山積みになっています。文字好きな人なら、数か月、住み込んで読書したいと思うのではないでしょうか? できれば、僕もそうしたいです(笑)

そして、写植文字盤(メインプレートやサブプレート)や金属活字、インキュナブラ、タイプライター、インレタ等々、楽しげなコレクションも積み上がっています。文字の伝道師としての小道具ですね!

それから、1980年代の米国西海岸でFM放送をエアーチェックしたカセットテープが100本ぐらいあったり、1980年代から1990年代のレトロなオーディオ機器や歴代のウォークマンがあったり、楽しげなグッズもたくさんあって、ジャングルのような仕事部屋になっています。

おまけに、インターネット番組をライブ配信できる機材が、最近、着々と揃いつつあります。ミニ放送局というか、秘密のおじさん基地局が完成しつつあります。

現在、仕事部屋が足の踏み場のない状態なので、6月までには、整理整頓と断捨離をして、7月からゆとりをもって仕事ができるようにしたいと思います。

●一か月半ぶりに電車に乗った

1990年代前半からパソコン通信をいそしんだり、パソコン自作が好きだったりしたこともあり、自宅のインターネット環境やパソコン環境は、かなり整備されていると思います。

いつでもテレワークできる環境は整っていましたが、今年3月までは、基本的に毎日、会社に通勤していました。ほぼ45年間、毎日、満員電車に乗って、通勤していた自分を褒めたいです。それが、コロナのおかげで、約一か月半、まったく電車に乗らない生活をしたのは、不思議な経験でした。

そして昨日、どうしても会社にいく必要があり、一か月半ぶりに、地下鉄東西線に乗りました。オフピーク通勤が推奨なので、11時の電車に乗りました。

予想はしていたのですが、座席は空いていませんでした。なるべく、ソーシャルディスタンスをキープしつつ、立って通勤しましたが、もし、8時とかの地下鉄に乗ったら、かなり、混んでいたのではないか思います。

東西線「木場~門前仲町」間は日本一混雑率の高い区間なので、もし、東京も緊急事態宣言が解かれると、地下鉄東西線は、すぐに、超ぎゅうぎゅう詰めになる予感がします。僕は東西線の満員電車に、もう乗れない体になってしまった、ような気がする……。

あっ、今日は、久しぶりに文字ネタを書こうと思っていましたが、前置きが長くなってしまいました。では、ちょっとだけ。テーマは、「50年前の新聞の文字は小さかった?」です。

●祖父江慎さんのツイート

僕は、祖父江慎さんのツイートと、藤田重信さんのツイートが大好きです。先週、祖父江慎さんのツイートで、こんなのがありました。じゃーん!


そうなんです。昔の新聞の活字は小さかったのです。というか、50年間かけて、だんだんと新聞の活字の大きくなったのです。ためしに、20年ぶりに、コンビニで朝日新聞を買ってみました。おおぉ、なんか、文字が大きい!!!
https://bit.ly/2X8Y2Rw


ネットで調べてみたら、こんな記事も発見しました。60年前、紙面の文字の大きさは | フォントうらばなし(中井晶子さん)
https://bit.ly/3cTnlxO


時代とともに、新聞や雑誌の文字の大きさは変化したのです。老眼の度合いが年々ひどくなっているのですが(笑)、それに合わせて、活字の大きさが変化したと言えるかもしれません。

筑紫書体の藤田さんも、こんなコメントを書かれていました。


扁平率、文字詰め、段組構成なども時代とともに変化しているようです。今度、時間を作って、新聞や雑誌における60年間の活字や組版の変遷を、まとめてみたいと思います。

では、二週間後に、また、お会いしましょう。


【せきぐち・ひろゆき】mailto:sekiguchi115@gmail.com
関口浩之(フォントおじさん)
Facebook
https://www.facebook.com/hiroyuki.sekiguchi.8/

Twitter@HiroGateJP
https://mobile.twitter.com/hirogatejp


1960年生まれ。群馬県桐生市出身。1980年代に日本語DTPシステムやプリンタの製品企画に従事した後、1995年にソフトバンク技研(現ソフトバンク・テクノロジー)へ入社。Yahoo! JAPANの立ち上げなど、この20年間、数々の新規事業プロジェクトに従事。現在、フォントメーカー13社と業務提携したWebフォントサービス「FONTPLUS」のエバンジェリストとして、日本全国を飛び回っている。


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■晴耕雨読[60]
コロナ騒動忘備録

福間晴耕
https://bn.dgcr.com/archives/20200521110100.html

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忘備録としてここ数か月の出来事や感想を、覚え書きとして留めておきたい。そんなわけで、記事としてはたいして面白くないかも知れないが、新型コロナウイルス(COVID-19)で自粛生活になったときの所感をまとめておく。

新型コロナウイルス騒動を、身近な事として認識したのはいつだろうか。自分の場合で言えば、緊急事態宣言が出た4月7日が明らかなターニングポイントだった。

それまでも色々とニュースになっていて、そろそろ緊急事態宣言が出るかも知れないというアナウンスは出ていたものの、今から考えればとんでもないが、その前に飲みに行こうということで、予定を前倒しにして出かけてたくらい、ある意味、遠い世界の事だったのだ。

だが7日に緊急事態宣言が出て、それに合わせて仕事先でも外注や派遣も含めて全スタッフの在宅勤務が決定し、準備が出来たメンバーから順次在宅勤務体制に移行するということになった。バタバタと準備をしていたところ、自分の仕事先のビルでもコロナ患者が出て、全員即座に帰宅して在宅勤務をする事になってしまった。

その日のうちに全スタッフは原則帰宅を命じられ、仕事用の機材を自宅に運ぶためにタクシーが用意された。よほど遠かったり、何らかの事情で直ぐに機材を持って帰れないメンバーを除けば、全員が機材と共にそれで帰ったのだが、沈みゆく夕日の中、周囲のお店が閉まった町並み、がらがらに空いてる道路を走っていると、まるでゾンビ映画の、“安全な新天地を目指して脱出するラストシーン”みたいだったのを覚えている。

その日から在宅勤務体制に切り替わり、数日おきの買い物や歯医者などのやむをえない用事を除けば、家にこもった生活が続いている。

当初難航するかと思っていたテレワークは、仕事がクラウドベースの開発が中心で、既にGitやSlack、Googleアプリケーションなどが導入されていたこともあって、思ったよりもスムーズに移行して、数日も立たないうちにこれまでと変わらないペースで仕事は回るようになっていた。

最初は怠けてしまうんじゃないかと心配していたが、データを共有しているため、セミリアルタイムで全メンバーの作業内容がわかることもあり、むしろ働きすぎが問題になるくらいだった。

思ったよりも順調に移行した仕事と違い、意外に慣れなかったのは日常の生活だった。元々フリーランスで働いていたこともあって、自分の場合は在宅勤務になっても机や椅子を含めて作業環境は完備されており、むしろ仕事先よりも快適なくらいだった。

だが、快適だったのは最初の数日間くらいで、長いこと家に留まっていると、目に見えないストレスが心身を蝕んでいることに驚いた。単にめんどくさいと思っていた通勤時間が、意外にも気分転換になっていたのだ。

この前の東日本大震災などの経験から、しばらく家にこもれるように食料品を含む様々なものを備蓄していたつもりが、実際に在宅生活を始めてみると、意外なものが足りてないことに気がついた。ある時など、夕食を作っている途中で材料が足りないことがわかり、急遽スーパーに買い出しに行く羽目になった。

買い出しといえば、大変なことの一つは買い物だった。なにせマスクをはじめとして、どこに行っても売り切れて手に入らないものがある上に、テレビのワイドショーなどの影響で、突然何かが売り切れになっていることがあるのだ。

あるときは納豆がコロナに効くというデマが流れたのか、どこを探しても納豆が売り切れになっていたのには閉口した。さらに追い打ちをかけたのが、スーパーを始め多くの店の営業時間が短縮されて、夕方には多くの店が閉まってしまうことだった。

早いところでは夕方6時、遅いところでも夜の10時には閉店してしまうので、テレワークが終わった時間に買い出しに出ると、軒並みどこも閉まっている。そんなわけで外出自粛もあるが、買い物は週末にまとめて行うようになった。

ところが、今度は買い占めや密集を避けるための入店制限があるせいで、長時間並ぶ羽目になる。また本屋、床屋など生活必需品とは微妙に言えないものの、どうしても立ち寄る必要があるところが閉まっているのにも閉口した。

そんなわけで、元々それほど外出する方でもなく、人とどこかに遊びに行く性質でもないから、平気だろうと思っていた自粛期間は思った以上に大変だった。

唯一の救いは、仕事と趣味の大部分がネット上で完結していることだろう。仕事については先に触れたが、趣味の方も以前に書いたように、VRが中心になっているおかげでかなり助けられた部分がある。
https://bn.dgcr.com/archives/20200416110100.html


家に閉じ込められて1週間ほど経った頃には、流れてくるコロナ関係のニュースにかなりイライラしていたのだが、VRの集まりで文字通り仮想空間で実際に人と集まって話したりしていると、気に病んでいたのが嘘みたいに思えたのは、仮想空間とはいえ、人と集まって話すのが意外と気分転換になっているのを実感した。

またバーチャル関係では、ゴールデンウィークに合わせて100万人近くが訪れた巨大イベント「バーチャルマーケット」が行われていたのもありがたかった。
https://www.v-market.work/v4/


おかげで連休中はほとんど外出しなかったものの、暇つぶしどころか逆に忙しいくらいだった。

こうして雑多に所感を書いてきたが、当初思っていたよりもネガティブな内容になっていて驚いた。とは言え、満員電車には二度と乗りたくないし、テレワークを中心に働き方や生活がこれを期に見直されるとありがたい。

これを書いている時点で、5月末まで緊急事態宣言の延長が決まったが、早く解除されて、また普通の日常に戻れる日が来ることを祈っている。

【福間晴耕】
Seikoh Fukuma
CONTACT:fukuma@kw.netlaputa.ne.jp


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編集後記(05/21)

●浅川芳裕「ドナルド・トランプ 黒の説得術」

トランプが大統領候補になる前、筆者はトランプの演説や討論会をくまなく見ていった結果、「トランプは『話術』のとんでもない達人であり、『説得術』のとてつもない天才である。(略)彼が駆使する技術があまりも自然で、巧み過ぎ、誰もその凄さに気づけないぐらいのレベルに達しているのだ」と分かったという。大方の予想に反して共和党予備選を勝ち上がる。しかもダントツで。

トランプは共和党の歴史上、最も人気を獲得した大統領である。トランプの凄さは、演説の達人・オバマの話術と比較すれば分かる。オバマは説得力で感動させ、聞き手に影響を与える。トランプの話はバカげていて、説得力があるとは思えない。感動できない。にもかかわらず、無意識のうちに聞き手の心に忍び込んでいき、気がついたときにはトランプの虜になってしまう、らしい。

このトランプの「黒の説得術」のテクニックを公開、解説するのがこの本の目的だ。古代ギリシアから伝わる弁論術、現代の心理学、言語学、最新のブランド理論、自己啓発思想などの教えを独自に組み合わせたシンプルなもので、トランプはそれを愚直に実践しているのだという。思いつきの人ではないようだ。でも我々がテレビで知るトランプの話からは、強い説得力が感じられない。

我々がそんな不安をいだいてしまうのは、トランプ得意の「脅迫論証」話術を駆使した成果が出ているだけで、狙い通りだという。トランプが言っていることの中身など、じつはたいした問題ではない。そもそもトランプの発言の70%が事実にもとづいていない(2016年の調査)。よく理解できないのだが、けっこうトランプのこと好きになった私。トランプの発する口撃も嫌いではない。

トランプの悪口は、自分の存在感を高めるために用いているのだからそれでいいのだ。共和党大統領予備選でトランプと最後まで戦ったテッド・クルーズは、キリスト教右派やティー・パーティから絶大な支持を得た強者だが、トランプから「嘘つきテッド」と仇名をつけられて敗退した。なんと幼稚な、と思うが「聖書を高く掲げいつも嘘をつく」と言いいふらされたんだからたまらない。

トランプはさらに追い打ちで「人の姿をした悪魔」という別の仇名もつけた。トランプは宗教心がないとみなされ、キリスト教右派からの支持が低い。しかし自分がすぐに信仰心に篤いイメージを醸し出すのは難しい。そこで、クルーズの信仰心が嘘であると細工すればいい。それを信じた人々がトランプ支持に鞍替えしてくれればいいのだ。汚い手口である。結果は狙い通りになった。

トランプは「名称だけで価値の『低さ』がわかり、顧客(有権者)から『嫌われ』、商品(立候補者)として『選ばれない』状況を確立させたのである。ポジティブなブランド構築につかうはずの手法を、ネガティブなブランド構築に応用したのだ」。なんという悪辣なwww。一時はトランプに迫ったクルーズの人気は、トランプのネガティブ・ブランド化を境に一気に暴落してしまった。

「言論の正しさ」を得意とする説得術は封じられた。仕返しにトランプに「いじめっこ」「不道徳」「ナルシスト」とあだ名をつけたが、まったく流行らなかった。なぜなら、それらはトランプのブランドそのものだったからだ。結局、クルーズはトランプに利用されただけだった。トランプの言動を中心に世界は回っている。カオスのようなトランプの説得術を学べる役立ち本。(柴田)

浅川芳裕「ドナルド・トランプ 黒の説得術」2016 東京堂出版
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4490209525/dgcrcom-22/



●「ぞうさんのようなコアラさんのような」。可愛いっ!/6月でご定年なのですね。/そういえば、この自粛中に並んだことない。レジは並んだけど、待つ人数は変わらず。店内は自粛前より空いていた気がする。

/トランプさんが怒ったように話す時って、WWEっぽい。日本でいえば新日。プロレスのマイクパフォーマンスみたいだなぁと。

検索したら出てきたわ。「彼らはブロードウェーに登場する日本人俳優のような立場にあり、試合後にはファンをエキサイトさせる英語スピーチが求められる。」「強靱なボディーやスピリットとともに、卓越した『言葉力』が問われるのだ」「『プロレス発』の英語は多様で、実は奥が深い。」って。

/関係ないけど、格闘技やプロレスの煽りVTR作ってみたいな。夜明け、誰もいない海や山上で練習させたり、同じく人のいないコンクリートの通路や屋上、駐車場、倉庫でトークさせたり、低音のざらついた声のナレーション入れたり。いえ、動画のプロではありませんっ(笑)。(hammer.mule)

トランプ大統領は一流プロレスラー 「マイクパフォーマンス」に学ぶ英語術
https://www.sankei.com/sports/news/170216/spo1702160001-n1.html