[5080] ヒトとの接触を避けつつ近所を歩くの巻2◇ガムテープ文字「修悦体」

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《おお、間違いなくコルビュジエの弟子!》

■わが逃走[267]
 ヒトとの接触を避けつつ近所を歩くの巻 その2
 齋藤 浩
 
■もじもじトーク[135]
 まちもじ探検記 ガムテープ文字「修悦体」との感動的再会!
 関口浩之




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■わが逃走[267]
ヒトとの接触を避けつつ近所を歩くの巻 その2

齋藤 浩
https://bn.dgcr.com/archives/20200910110200.html

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ステイホームもいいかげん飽きてきたとはいえ、「go toトラベル」せよと言われても悪質な冗談にしか思えず、おまけにこの猛暑である。

9月に入って多少涼しくなったような気がしたが、気温は30度を超えていた。慣れとはホントに恐ろしい。

暑さと同様、「エライ人が掛け声だけで何もしない」状態に慣れてしまうことは、熱中症に気づかないことと同じくらい危険なことだなあ。

さて、まだまだ暑くて外に出る気はしないが、それなりに出かけねばならんこともある。買い物とか銀行とか。そんなとき、少しだけ遠回りするくらいはよかろう。というわけで、カメラ片手にご近所を歩いている。

体温よりも気温が高かった日、世田谷区役所にてフラッグを撮影。体育の日が10月10日というのは、理にかなっていると思う。

https://bn.dgcr.com/archives/2020/09/10/images/001

区役所通り沿いに設置されているプランターは、なぜかヒエログリフ柄なのだが、しばらく見ないうちに経年変化でやたらリアルになっていた。

世田谷区のホームページで確認したが、とくにギザと姉妹都市というわけではなさそうだ。

https://bn.dgcr.com/archives/2020/09/10/images/002

前川國男設計の名建築を、ワイドレンズで見上げてみた。現在は全体にわたり改修の跡も目立つのだが、このトリミングでフレーム外を想像すると竣工当時の姿が見えてくる!

おお、間違いなくコルビュジエの弟子! と実感するのだった。

いつも思うことなのだが、私がイイなと思って写真を撮ると、その建築は解体されてしまうという妙なジンクスがある。ここは過去にもたくさん撮ってるからねえ。。

https://bn.dgcr.com/archives/2020/09/10/images/003

世田谷区役所に隣接する世田谷区民会館。

今回の高層化計画でも、ここだけはぶっ壊されずにすむらしい。とはいえ、全体の構造が見られるうちに、たくさん写真を撮っておこうと思う。

https://bn.dgcr.com/archives/2020/09/10/images/004

区役所からほんの少し歩けば、松陰神社前商店街だ。味わい深い佇まいは健在だが、昭和から続く店は少しずつ減ってきている。長年営業を続けていた碁会所も、先日ついに更地になってしまった。

とはいえ、“近未来21世紀”テクノポリスTOKIOのイメージにはまだ遠い。この写真に限って言えば、雑貨屋の電話番号に3がついたことこそ、昭和との最大の違いといえよう。

https://bn.dgcr.com/archives/2020/09/10/images/005


【さいとう・ひろし】
saito@tongpoographics.jp
http://tongpoographics.jp/


1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。
 
 
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■もじもじトーク[135]
まちもじ探検記
ガムテープ文字「修悦体」との感動的再会!

関口浩之
https://bn.dgcr.com/archives/20200910110100.html

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こんにちは。もじもじトークの関口浩之です。

今日のテーマは、先週に引き続き、「まちもじ探検記」です。

前回の「まちもじ」は、松屋銀座のエレベーターボタンの文字のお話でした。40年前に制作された上品で愛らしい文字が、毎日さりげなく表示されています。

毎日の生活の中で、少しだけ意識的に視点を変えて景色を見ると、インフォメーションの役割をしている看板や標識などの文字の裏側には、素敵な物語が存在していることがあります。

今日のもじもじトークは、JR新宿駅東口で再会したガムテープ文字「修悦体」のお話です。

●ガムテープ文字「修悦体」

まずは、いつも通り、僕が撮影した「まちもじ」の写真を掲載しますね。じゃーん!

http://bit.ly/mojimojitalk135


たくさんの「修悦体」の看板が、JR新宿駅東口駅前で使われていました。大漁です。

※修悦体の誕生秘話は、もじもじトーク[103]で詳しく解説していますので、そちらもご覧ください。
https://bn.dgcr.com/archives/20190307110100.html


街中で見つけた素敵な書体探険記 その2 ~ガムテープ文字(修悦体)~
https://bn.dgcr.com/archives/20190307110100.html


ガムテープ文字「修悦体」に数年ぶりの再会したので、その探検記を書きます。

特筆すべきことがいくつかあります。3年前にJR新宿駅山手線ホームで、実物の修悦体を発見した時は、「左側通行」以外のガムテープ文字は、ほとんど見つかりませんでした。

今回は、「新宿駅」「通れません」「ゴミを捨てない」「タバコ(アイコンマーク)は喫煙所で!」「立入禁止」「鉄建・大林・フジタJV」「東口ヤード」「関係者以外立入禁止」など、たくさんのガムテープ文字を発見しました。

最初の写真の「新宿駅」ですが、「宿」の表情とバランスがいいですよね。「駅」の四つの点も、うまく処理しています。3本のガムテープの2本目にスリットを入れています。4本共に等幅にしてしまうと、バランスが崩れるのだと思いました。

2つ目の写真の「れ」の文字、「れ」に見えないけど「れ」に見えます(笑) 文脈から脳が勝手に「れ」と判断しちゃうのかもしれませんが。

でも、よく見てください。「れ」の横線の最後の筆使いが、「れ」を連想させています。そんな末端処理をしています。意図的にデザインしたのかはわかりませんが、修悦体にはそんなことを連想させる魅力があります。

3つ目の写真の「ゴミ」および「で」の濁点処理、素晴らしいですね。濁点を字面の中に、丸二つを配置することで、全体のバランスが心地よく、楽しく感じられます。風通しがいいですね。

おっ、「ゴミを捨てない」の「い」を見てください。やはり、筆の動きを表現しています。やはり、「とまれ」の「れ」は、筆使いを表現しているのですね。

タバコのアイコンマークも見事です。ガムテープには、いろんな色のテープがあるので、ビジュアル表現する上で効果的です。感嘆符「!」の赤のガムテープ、視覚伝達上、役に立ちますね。感嘆符は、エクスクラメーションマーク(exclamation mark)、びっくりマークともいいます。

「立入禁止」も芸術作品です。スーパーマリオゲームができそうです。左端の「立」から始まって、切れ目をジャンプして進んでいくと、「止」に辿り着きます。「入」のバランス、「止」の文字の形といい、縦横が洗練されたグリッドシステムって感じですね。

「止」の一文字だけを眺めていると、ゲシュタルト崩壊してきました。あれっ、動物のリスにも見えてきました(笑)

最後のほうの写真で「関係以外立入禁止」の看板がありますが、その看板の裏側を見たら、「左側通行」の文字が見えました(笑) そうです。3年前に、JR新宿駅の山手線ホームで出会った「左側通行」の看板でした。最後の2枚が証拠写真です。

修悦体との感動の再会でした。

●FONTPLUS DAYスペシャルライブ(まちもじ特集)のお知らせ

『FONTPLUS DAY』という、文字にまつわるセミナーイベントがあります。会場でのイベントが24回、今年7月から再始動したオンラインライブは3回、開催しました。この4年半で合計27回、セミナー開催してきました。毎回、たくさんの方にご参加いただき、ありがとうございます。

さて、オンラインイベントは、日本全国から(世界中のどこからでも)参加できるというメリットがあります。そこで、スピンオフ企画として、今月9月25日に「FONTPLUS DAYスペシャルライブ」を開催することにしました。

昨日から受付開始しましたので、もじもじトークの読者のかたも、ぜひ、参加ご検討ください。

FONTPLUS DAY スペシャルライブ2020秋 みんなで愛でよう! 私の「まちもじ」特集〜フロップデザイン加藤さんとマニアッカーズデザイン佐藤さん生出演〜
https://fontplus.connpass.com/event/186547/


●私の「まちもじ」

今回のイベントで、みなさんの周りの身近な「まちもじ」を募集しています。

「私のまちもじ」応募フォーム
https://bit.ly/fontplusday-machimoji


『FONTPLUS DAY スペシャルライブ2020秋 みんなで愛でよう!私の「まちもじ」特集』のイベントページで、「まちもじ」の事例サンプルを掲載していますので、参考にしてください。

タバコ屋の昔の看板でもよし、アース香取線香やオロナミンCの琺瑯看板でもよし、手書きのかわいいお店の看板でもよし、気になる文字にまつわるものなら、なんでもOKです。

「まちもじ」は、情報伝達としての役割(インフォメーション、サイン)だけでなく、感情や楽しさを訴える要素(エクスペリエンス、エンターテインメント)があります。そして、「まちもじ」を制作した人の情感、人柄、生き様なども感じとることができます。

ぜひ、お気軽に、「FONTPLUS DAYまちもじイベン」トへのご参加、「私のまちもじ」の投稿、お待ちしております。

では、また、お会いしましょう。


【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com
関口浩之(フォントおじさん)

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1960年生まれ。群馬県桐生市出身。1980年代に日本語DTPシステムやプリンタの製品企画に従事した後、1995年にソフトバンク技研(現SBテクノロジー)へ入社。Yahoo! JAPANの立ち上げなど、この25年間、数々の新規事業に従事。現在、活字や文字の楽しさを伝えるフォント伝道師(エバンジェリスト)、フォントおじさんとして活動。


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編集後記(09/10)

●偏屈BOOK案内:高橋洋一「ファクトに基づき、普遍を見出す 世界の正しい捉え方」2

2019年の日本人の平均寿命は、女性が87.45歳、男性が81.41歳でいずれも過去最高を更新した。女性が7年連続、男性が8年連続の更新だ。年金受給日にはいつも、すいませんね、長生きしちゃってと思うのだが、もうしばらく生きちゃいそうで申し訳ない。いまだに、日本の年金は破綻していると煽る人がいるが、高橋さんはの答えはキッパリと「ノー」だ。大事なことなので何度でも書く。

そもそも年金は昔も今も、厳格な保険理論に基づいて運営されている。数学科出身の筆者は年金数理の専門家である。2004年の小泉政権の年金制度改革にも間接的に関わった。「年金は保険である」という原則に基づいて制度の安定化が図られ、「100年安心プラン」が発表された。このとき導入されたのが「マクロ経済スライド」である。もちろん、わたしにはチンプンカンプンだが。

端的に言うと「保険料収入の範囲内で物価や賃金が上がると、それに連動して給付額は増えるが、現役世代の人口減少や平均余命の延びを加味して給付水準を自動的に調整(抑制)する仕組み」だという。自分が将来的に受け取れる年金の額を知らせる「ねんきん定期便」をつくったのも、役人時代の筆者だ。

年金制度をわかりやすくいうと、長生きするリスクに備えて、早逝した人の保険料を長生きした人に渡して補償する保険である。65歳を支給開始年齢とすれば、それ以前に亡くなった人にとっては完全な掛け捨てになる。遺族には遺族年金が入るが、本人には1円も入らない。運良く100歳まで生きたら、35年にわたってお金がもらえる。掛け得の人と掛け損の人がいる。運のようなもの。

このように単純な仕組みだから、人口動態を正しく予測できれば、まず破綻しない。「現役世代の人口が減って保険料収入が少なくなろうが、平均寿命が延びて給付額が増えようが、社会環境に合わせて保険料と給付額を上下させれば、『破綻』しない制度なのだ」。人口減少は予測通り起こっていて、それは社会保障制度での心配は想定の範囲内。にもかかわらず、国民は不安を抱く。

「《年金は保険》という正しい認識が一般に広く浸透すれば、消費増税ではなく、給付とのバランスにより保険料で対応すればいいという、至極まっとうな“結論”になる」。そうなると、予算編成と国税の権力を握る“最強官庁”財務省の屋台骨が揺らぐ。財務省は「年金は社会福祉であり、今は原資が不十分な状態である」というフェイクが、広まれば広まるほど好都合なのである。

「社会福祉は税金で賄うものだから消費税しかない」という俗論がまかり通る。経済界も『年金は保険』という認識が世間に浸透すると困る。年金保険料は労使折半だから、保険料アップで年金を賄うことは、企業の負担が増えることだ。それなら広く社会一般に負担を押し付ける消費税の引き上げの方がマシだと、経済界は「保険料の引き上げ」という、本来の解決策に強硬に反対するのだ。

筆者は北欧の事例を分析し「年金は福祉ではなく保険である」という事実を見出す。そして、「日本の年金制度が数学や統計学を用いてリスクを評価する数理計算に基づいた『保険』である以上、人口が想定通りに減少しても、破綻することはないのである」と断言する。横行する「年金破綻」というフェイクに騙されてはならない。社会保険料徴収のための歳入庁を創設せよ。(柴田)

高橋洋一「ファクトに基づき、普遍を見出す 世界の正しい捉え方」2020 KADOKWA
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4046045663/dgcrcom-22/


【ふろく】「現代ビジネス」サイト9/8 山田厚俊「石破・岸田は、こうして潰された…二階俊博の怖ろしき『深謀遠慮』」の記事中、大見出しに「すでに蚩尤は決した」とある。初めて出会った漢字だ。これはどういう意味なのか。

調べてみると、「蚩尤:中国の伝説上の人物。黄帝と戦い、濃霧を起こして苦しめたが、指南車を作って方位を測定した黄帝に□鹿(たくろく)で敗れたという」とある。なぜこんな人物が自民党総裁選の記事中に登場するのか。

おそらく、「蚩尤」は「しゆう(シイウ)」と読むらしいから、「すでに雌雄は決した」の間違いだろう。本文中に「すでに雌雄は決したような形だ。」とある。おそまつ。校正者もバカ。いまだにネットにさらされたままである。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/75464?page=3



●冷凍庫(の話題から離れてしまったが)続き。「業務スーパー」。何年か前、通りがかりにシャーベットやアイスを買ったことがある。冷凍庫がずらりと並んでいたが、キロ単位の食材が並んでいたので、買うことはないだろうとスルーしていた。

Google Mapsでルート検索すると、一番近い業務スーパーまでは徒歩15分。25分のスーパーに行けたんだからと、行ってみることにした。

狭い店内に、狭い通路。人がひとりすれ違えるかどうか。移動するのが時々困難になるぐらい客がいた。レジには列。「業務」という名前だけれど、お客さんの半分以上は一般客だと思う。

ニュースアプリをいくつか使っていて、そのうちのひとつは、こちらが読んだ記事に合わせて、リコメンドしてくる。百均関連を見ていたら、ドン・キホーテやコストコや三百均、無印やニトリ、節約関連などがずらりと並ぶ。私はコスパ枠と勝手に呼んでいる。業務スーパーもその枠だ。続く。(hammer.mule)