こんにちは。もじもじトークの関口浩之です。
新年を迎えたばかりだと思っていたら、もう3月なんですね。そして、平成は残すところ、あと2か月……。時が経つは早い。
新連載『街中で見つけた素敵な書体探検記 その1』では「春日駅フォント」を紹介しました。本日は「ガムテープ文字」です。
●ガムテープ文字ってなに?
JR山手線の新宿駅、階段付近の工事エリアでこんな看板を発見しました。
じゃーん!
http://bit.ly/syuetsutai
愛嬌があって可愛らしい文字ですよね。撮影したのは先月2月24日です。
この文字、ガムテープで作られています。テープ幅を変えてウエイト(太さ)違いの文字があったり、テープ色を変えて背景色や文字色が異なる文字があったり、バリエーション豊富です。
フォント名は「修悦体」と言います。なぜ、修悦体かというと、考案者が佐藤修悦(さとう しゅうえつ)さんだからです。
制作工程の動画を発見しました。すごい。
ロケットニュース24(取材動画: 2分間)
下書き線のような縦横グリッドが、最終的には、実際の文字の縦線と横線になります。論理的であり、レタリング技術の応用と言えそうです。
●修悦体の誕生秘話
修悦体は、2004年にJR新宿駅で誕生しました。
2004年、JR新宿駅東口で改築工事があったんですが、駅は迷路のような状態でした。佐藤さんは、当時、三和警備保障の警備員として、乗客の誘導整備をおこなっていました。
JR新宿駅は多くの人が乗降するので、左側通行の案内を音声を使って誘導するのには限界があったようです。また、「階段はどっちですか?」などと多くの人から尋ねられたそうです。
そこで、佐藤さんが手に取ったのは、工事現場にあった「ガムテープ」なのです。カッターを駆使して、手作り書体が完成したのです。
JR新宿駅から「案内板を制作して欲しい」と依頼があったわけではなく、必要に迫られて、勝手に制作したところ、駅員に褒められそうです。
そして、正式許可がおりて、ガムテープ文字「修悦体」が完成したのです
工事現場にあったガムテープは、最初、白・黒・黄の3色だったのですが、その後、赤・青・緑の3色が追加で認められ、電車の色に合わせた案内板の制作が可能になったそうです。
案内板を設置するのであれば、専門業者に発注するのが普通ですよね。でも、制作には数週間は掛かるはずです。現場の人だからこそ、必要に迫られ、知恵が働いて、味わいのある素敵な書体が完成しちゃったんです。
●みんなから愛される修悦体
修悦体のことは、記事で読んだことがあったので知ってましたが、実際に見たことはありませんでした。
実は、1年半前の2017年夏に、修悦体をJR新宿駅で発見して、「おぉ、これがガムテープ文字かぁ」と感激したのを、今でもしっかり覚えてます。
今まで、3回ほど、SNSで「本物の修悦体を発見したよ」と写真掲載したら、多くの人からコメントをいただきました。
・ウェイトの違いや長体、結構バリエーションあるんですね!
・「ぎょうにんべん」のアレンジがすごい!
・職人技! すごい!
・サインシステムとしての機能も、ちゃんと果たしている!
・ほんと見やすいですよね!
・一瞬、左側通ッテ、と見えてしまうけどそれでも間違ってないw
・レタリングの基礎習ったの? っていうくらい秀悦。お名前もしゅうえつさん。
……などなど、たくさんのメッセージと、いいね! をいただきました。みなさんも、ガムテープ文字「修悦体」が好きなんですね。
JR新宿駅だけでなく、JR日暮里駅では工事看板のみならず、さまざまな広報掲示物も手がけたそうです。
2007年、駅長特別賞として賞状と靴下2足が贈呈されました。そんな記事も読んで、ほっこりしました。
●「フォントおじさん2019」in 大阪
最後に、セミナー情報です。今度の日曜、大阪開催のクリエイターズ向けセミナーイベントに出演します。
第38回リクリセミナー「Webデザイントレンド in Osaka 2019」
2019年3月10日(日)14:00〜18:45
https://recreators.doorkeeper.jp/events/87226
僕は「フォントセッション」を担当します。タイトルが「フォントおじさん2019」になってる。なんかタイトルが変ですけど(笑)
「Webデザイントレンドセッション」では、グローバル500企業、上場3,400社、自治体1,700サイトを定点観測して、傾向を発表するという企画なんです。
これだけの数のサイトを、実際に目で確認してるって変態技ですね。(←褒めてます)
原一浩さんが、『Web デザイントレンド in OSAKAをより楽しむためのキーワード』プログを公開しているので、こちらもご覧ください。
https://kansock.industries/ja/articles/static__api__20190305_01/
原さんは、2014年に「フッター山」のトレンドを発見しましたが、そのトレンドは、今でも、さまざまなサイトで脈々と引き継がれているみたいです。
すでに150名以上の方にお申し込みいただいてますが、まだお席がありますので、ご興味ある方で、関西方面の方(関西じゃない方ももちろんOK!)、ご参加を検討してください。
リクリセミナーの「リクリ」は、「Re:Creator’s Kansai」の略です。リクリは2007年3月27日に発足した伝統あるコミュニティでです。12年間、セミナー&コミュニティを継続するのって凄いです。継続は力なりだと思いました。
では、二週間後に、もじもじトークでまたお会いしましょう。
【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com
フォントおじさん
https://event.fontplus.jp/about/hiroyuki_sekiguchi.html
1960年生まれ。群馬県桐生市出身。1980年代に日本語DTPシステムやプリンタの製品企画に従事した後、1995年にソフトバンク技研(現 ソフトバンク・テクノロジー)へ入社。Yahoo! JAPANの立ち上げなど、この20年間、数々の新規事業プロジェクトに従事。
現在、フォントメーカー13社と業務提携したWebフォントサービス「FONTPLUS」のエバンジェリストとして、日本全国を飛び回っている。
日刊デジタルクリエイターズ、マイナビ IT Search+、オトナンサー等のWebメディアにて、文字に関する記事を連載中。CSS Niteベスト・セッション2017にて「ベスト10セッション」「ベスト・キャラ」を受賞。フォントとデザインをテーマとした「FONTPLUS DAYセミナー」を主宰。
フォントおじさんが誕生するまで
https://html5experts.jp/shumpei-shiraishi/24207/