[#5092] 本格VRゴーグル、期待と挫折 その3◇メイン環境がWindowsになった理由

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《「別の空間にいる」感がすごい》

■グラフィック薄氷大魔王[672]
 本格VRゴーグル、期待と挫折 その3 「やってみたかったこと」
 吉井 宏

■ネタを訪ねて三万歩[189]
 メイン環境がWindowsになった理由
 海津ヨシノリ
 



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■グラフィック薄氷大魔王[672]
本格VRゴーグル、期待と挫折 その3 「やってみたかったこと」

吉井 宏
https://bn.dgcr.com/archives/20200930110200.html

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●VR空間に入ってみた

前回は「Oculus Rift SとHP OMENノート」が届いたところまで。いよいよ本格VRゴーグルを使ってみる!

初めて起動すると現れる、2つのチュートリアル的なアプリ。コントローラーのボタンを操作すると、握ったり離したり指差したりでき、「そこの立方体をつかんで持ち上げてください」などの指示にしたがい、基本的な操作を学ぶ。

特に感動したのは「Oculus First Contact」というチュートリアル。ごちゃごちゃとメカやガジェットが積まれた部屋で、いろんな操作をしたり、ロボットと遊んだり。
https://www.oculus.com/experiences/rift/1217155751659625/


「別の空間にいる」感がすごい。しばらくやってると、本当は自分の仕事部屋にいるってことを忘れてしまうほど。それが体験できただけでも大満足!

●VRでやってみたかったこと

VRゴーグルで何がやりたかったかというと、VR空間の中での3D制作。具体的には3つのアプリ。平面のパソコンディスプレイでチマチマやるんではなく、3D空間で全身を使って次々にキャラクター制作できたら楽しそうでしょ!?

「Quill」
3D空間に絵を描くように立体物を作るアプリ。アニメーション機能も備えている。Facebookにアニメーション作品を投稿してる人がいて、これはすごい!と。
https://www.oculus.com/experiences/rift/1118609381580656/

https://www.moguravr.com/quill-vr-animation-tools/


「medium」
スカルプトやペイントができ、手軽に3D立体物が作成できる。見るからに簡単そう。もともとOculusのアプリだが、Adobeに買収された。
https://www.oculus.com/experiences/rift/1336762299669605/

https://www.moguravr.com/oculus-medium-vr-2/


「Gravity Sketch」
上記2つは「初心者でもVR空間で制作を楽しめる」的なニュアンスが大きいものだが、このGravity Sketchは割と本格的な3Dモデリングソフト。プロダクトデザイナーがCADに近いニュアンスで、いきなり空間に製品を出現させるようなイメージ。ポリゴンモデリングもできる。
https://www.oculus.com/experiences/quest/1587090851394426/

https://www.moguravr.com/gravity-sketch-2/


もうひとつ、「Kingspray Graffiti」
4年も前にこの連載で「VRやるならこれを使って全身で描いてみたい」と書いた、グラフィティ・シミュレーター。壁やシャッターや貨物列車にスプレーで思いっきりラクガキ!
http://bn.dgcr.com/archives/20160629140100.html

https://www.oculus.com/experiences/rift/1052821828143109/


さっそくインストール! 続きは「その4」で。

◯もうOculus Quest2の先行予約が始まったそう。初代は2019年5月発売。SketchfabのおかげでOculus Rift Sをようやくまともに使いはじめたばかりだけど、パソコン接続必須なのはやはり面倒。スタンドアローンで使えてパソコンにも繋げられるって点で、Questの2代目となれば、こなれてるだろうな。
https://www.oculus.com/quest-2



【吉井 宏/イラストレーター】
HP  http://www.yoshii.com

Blog http://yoshii-blog.blogspot.com/


「半沢直樹」が終了、おもしろかった〜。この高視聴率ドラマが席巻した日本では、これからリアルの「悪」はやりにくくなりそうだな。「あ、今のオレって倍返しされる側?」みたいに。そういえば前回、「今やってる『半沢直樹』の前に、能動的に毎週欠かさず見てた番組って7年前の「リーガルハイ」(2013年の第2期)。って書いたけど、違った。「アオイホノオ」(2014年7月)があったわ。

○吉井宏デザインのスワロフスキー

・三猿 Three Wise Monkeys
https://bit.ly/2LYOX8X


・幸運の象 LUCKY ELEPHANTS
https://bit.ly/30RQrqV



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■ネタを訪ねて三万歩[189]
メイン環境がWindowsになった理由

海津ヨシノリ
https://bn.dgcr.com/archives/20200930110100.html

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●macOS環境で操作がボロボロなこと

2019年初頭からメインマシンはWindowsになっていますが、Macもサブ環境として使用しています。リアルに問題なのはサブスクリプションの関係で、どちらでも使用可能なソフト達の使い勝手ですかね。

Adobe CCは、正直、どちらであっても違和感は皆無です。しかし、Office365に関してはWindowsですね。

これはときどきネタにしていますが、macOSにインターフェイスをむりやり合わせているので、大学でWindowsを使っている私としては、慣れの問題でMac上ではちょっと操作がボロボロになります。

MacでOfficeを使う場合は、Boot Campで素直にWindowsにした方が、精神衛生上は良いかもしれません。modoやZBrush等はAdobe CC同様に、どちらでも違和感はありません。

まっ、他にも色々あって、メイン環境はWindowsになったわけです。世間的にはNVIDIAのGPUが使えなくなってしまったことや、Catalinaがメタメタという点が大きなポイントのようです。確かにそれもありますが、私は少し違います。

シフトした主な理由を改めて整理すると、手書き文字入力ができないこと、長年愛用していてSnapzProがEl Captan以降まともに使えなくなってしまったこと、そして大学での環境が100%Windowsであることの3点でした。些細なことなのかも知れませんが、些細なことに引っかかると、何もやる気にならなくなってしまいます。

まず一番の致命傷ともいえる、macOS環境での手書き文字入力。これに関しては、Google日本語入力のオプションであるHandWritingがありますが、WindowsのIMEパッドの賢さに慣れてしまうと、冗談でも使う気になれません。

Macの横には手書き入力用のために、古いWindowsノートパソコンを置いていますが、これって本末転倒ですよね。とにかく、Mac上でまともに手書き入力が出来ないのは、私にとっては致命的です。まっ、国語力が低い私自身の問題なのでしょうが……。

GoogleとMicrosoftの手書き入力の機能対決
https://kaizu-blog.blogspot.com/2020/08/googlemicrospft.html


次が、画面キャプチャー問題です。少なくとも2007年以降から使い続けているSnapzProは、2016年9月以降アップデートが行われておらず、一年以上前から古いmacOS(El Capitan)上でもまともに使えなくなってしまったので、状況的にはオワコンです。

そして、優秀かつ私と相性の良い代用品が、いまだに見つからないのは痛かったですね。ちなみに、St. Clair Software時代からのユーザーなので、もしかすると20年近く使い続けていたかもしれません。

しかし、今は一年ほどの利用で、Windows環境のScreenpressoが便利すぎて、体の一部になってしまいました。デジタルの世界って残酷かもね。

WindowsのScreen captureはScreenpressoが神
https://kaizu-blog.blogspot.com/2020/01/windowsscreen-capturescreenpresso.html


最後は、Windows環境での執筆依頼が多かったのも影響しています。思えば、ちょうど16年ぐらい前にも、メイン環境をWindowsにシフトしたことがありました。Windows XPと、MacはPantherとTigerの狭間の頃ですね。

理由は忘れてしまいましたが、もしかしたらZBrushを使い始めた頃だったので、それが影響していたかも知れません。当時Mac版はありませんでしたから。で、この時は一年ほどで元のMacに戻りました。

今回はどれくらいで戻るのかはわかりませんが、現在21か月ほど経過しています。まっ、振り出しに戻ると、Adobe CCがCatalinaでは色々と問題が出ることも影響しています。

あと、Apple Siliconには一応期待していますが、実際に出てしばらくは様子見ですよね〜。重要なのは「安定してデータが作成できる環境」ですから……。

●液晶と板タブレットを使い分ける

そんなWindows環境は、昨年1月に購入したノートPCで、現在外付けモニターが二基になっています。一台はXP-Penの22インチ液晶タブレット(PC本体のモニターとリンク)、もう一台は23インチの普通のモニター。どちらもフルHDです。

で、ここまでは特別変わった環境ではないのですが、1月の「三万歩178」でも触れましたように、この環境にはXP-Penのもう一台の板タブレットが繋がっています。ここで多くの方は混乱してしまうかもしれませんね。

メーカー非公式(?)なので私も気が付かなかったのですが、液晶タブレットと板タブレットが共存できるのです。

整理すると、液晶タブレットは当然ながら液晶タブレット上でしか使えませんが、板タブレットは液晶タブレットを含む、すべてのモニターに連動しているのです。つまり、使い勝手に合わせて、液晶と板タブレットを使い分けることができるのです。

これが恐ろしく便利でビックリ。とくにオンライン授業などでは、思っていたよりも大活躍して助かりました。ペンタブレットは描くことや、3Dのスカルプト系のモデリングに威力を発揮しますが、通常のオペレーションでも違和感なく使えるコトが大切ですね。

ただし、この環境にはコツが入ります。最初に液晶タブレットを認識させてから、板タブレットを接続するという手順が必要です。もしかしたら偶然かも知れませんが、とにかくメーカー非公式なので自己責任です。


■えこひいきミュージックと映画

"A Perfect Day" on Directed by Fernando León de Aranoa in 2015(ES)

邦題「ロープ/戦場の生命線」。1995年、ユーゴスラビア紛争停戦直後の「バルカン半島のどこか」を舞台としたブラック・コメディ映画。

「ボーダーライン」のベニチオ・デル・トロ、「ショーシャンクの空に」のティム・ロビンス、「その女諜報員アレックス」のオルガ・キュリレンコ、「ゼロの未来」のメラニー・ティエリーという顔ぶれで描く、国際援助活動家たちの活動とくだらない現実。

紛争地が舞台で、ベニチオ・デル・トロとオルガ・キュリレンコが出ているのに、戦闘シーンは疎か武器も持たず、アクションシーンも一切なく、淡々とストーリーは展開します。信じられます? でもラストまで観ると名作と納得。

結局、外国人でしかなかった彼らの絶望と悟りかな? とにかく牛飼いのお婆さんや、劇中で関わってきた人達が出てくるラストシーンで、マレーネ・ディートリヒ版の「花はどこへ行った」が流れてきたのには圧巻でした。

そして、見終わってみると原題の素晴らしさが伝わってきます。本当に名作ですね。邦題はつくづく残念な表現だと思いました。

「ロープ/戦場の生命線」予告編


"Where have all the flowers gone?" by Pete Seeger 1955(USA)

邦題「花はどこへ行った」。ピート・シーガーによる世界で一番有名な反戦歌ですね。個人的に反戦と冠が付く映画や歌には、違和感を覚えています。それは、あえてそのような表現を取ることが不自然と感じているからです。

それはさておき、今回は映画「ロープ戦場の生命線」のラストシーンでバート・バカラック編曲によるマレーネ・ディートリヒ版(1962)が流れ、シームレスにエンディングへ溶け込んでいたことで思い出しました。

オリジナルのピート・シーガー版を、マレーネ・ディートリヒ版は完全に越えていますね。他にピーター・ポール&マリーやキングストン・トリオのカバーもいいですね。まっ、有名すぎますけれど。

ちなみにマレーネ・ディートリヒは、ゲイリー・クーパーと共演した『モロッコ(1930)』でハリウッド・デビューしていますね。なんと、日本語字幕映画の第1作だったそうです。

Where Have All the Flowers Gone?(Marlene Dietrich)


Pete Seeger-Where Have all the Flowers Gone



【海津ヨシノリ】
グラフィックデザイナー/イラストレーター/写真家/お菓子研究家

突発の支払い、しかも振込用紙のために郵便局へ出かけた時の不快な出来事。

恰幅のいい60代後半ぐらいのオジサンが、いつから使い回しているのか分らないほど薄汚れた使い捨てマスクを、嫌々顎のあたりに付けて。大きなクシャミを何度もしながら、割り込んでくる迷惑千万行為。

いわゆる、電車の中などで大声で馬鹿な話をしているオジサン系ですね。私は直接の被害はありませんでしたが、本当に迷惑な話です。態度が横柄なのは言うまでもありません。ああなりたくないと強く感じた一日でした。

人間、歳を重ねると無意識に横柄な態度に陥りやすくなりますね。友人達にも増えてきました。もちろん、えらそうにソレを注意するなんてことは絶対にしません。それこそ、大きな御世話の上から目線ですからね。

私は横柄な態度に陥りたくないので、かなり神経質に自分の話し方などに注意するようにしています。それは大学へ関わるようになってから、とくに強く意識しています。とかく上から目線の高圧的な先生が目立ち、気分が悪かったことも影響しているのかも知れません。

一歳でも年下とわかれば、「君は〜」なんて話しかけてくる先生が本当に多く、その昭和的な感覚に思わず笑っちゃいます。どれほど素晴らしい実績と学歴があっても、人としては残念な方としか言えません。

非常勤講師の時はフレンドリーであったのに、専任になった途端「打ち上げには非常勤なんて呼ぶ事はないでしょ」とか。もう笑っちゃうほど分かりやすいお馬鹿さんが多いので、近づかないようにしています。

私は学生への対応は、上から目線ではなく、平行線で対応するように心掛けています。ま、年を重ねたら、求められない限り余計な話はしないことですね。自発的にやると確実に「ウザイ」と烙印が押されますからね。

yoshinori@kaizu.com
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編集後記(09/30)

●偏屈BOOK案内:橋本 治「百人一首がよくわかる」2016 講談社新書
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062200104/dgcrcom-22/


9月末日に百人一首を持ち出すわたしはあきれた季節外れぶりだが、橋本治はいつ読んでも面白くて、分かりやすくて、役に立つんだからありがたい。中途半端なタイトルだと思うけど。橋本は、藤原定家が選んだとされる百人一首を、そのまま和歌の形で現代語に訳している。そんな訳は百人一首に対する冒涜だとも言えなくもないが、橋本は「それを言う前に、元の歌を見て下さい」と書いている。

「たいした内容の歌でもないのに、昔の言葉にすると、とても深い内容で、美しいイメージがあるように見えるのです。大切なのは、そのことです。どんなことでも、言い方によっては、美しくなるし、深くなるのです。現代語訳は、そんな古典の言葉の美しさをしるための、参考だと思って下さい」。

百人一首はどうも「二人ずつのペアが五十組ある」という仕組みらしい。そんなこと初めて聞いた。和歌の名手が作った歌には、「どうとでも解釈できる」という部分があって、そこらへんが和歌の神秘らしい。五十組のうち、たまたま四三と四四を例にしてみるが、もっと上品で美しいペアもある。

四三・権中納言敦忠「逢ひ見ての 後の心に くらぶれば 昔はものを 思はざりけり」を現代語訳すると「実際に やった後から くらべれば 昔はなんにも 知らなかったなー」となる。こんな品の良くない解釈に初めて出会った。平安時代の「逢う」は「ベッドに侵入」と同じことである。

一度関係を持ってしまったら「じっと我慢」ではおさまらない。また逢いたいとイライラジリジリして「昔もいろいろ考えてたと思うけど、今にして思えばあんなの『悩み』の内に入らなかったよな」と、昔から男は純情というか、単純というか、バカである。

四四・中納言朝忠「逢ふことの たえてしなくは なかなかに 人をも身をも 恨みざらまし」を現代語訳すると「セックスというものが この世になければ 絶対に こんなにイライラ しないだろうさ!」となる。中納言同士のペアは「逢うの歌」のペアでもある。そうだったのか! と橋本の発見というか、都合よすぎる強引な解釈というか。

この歌の作者は在原業平の「世の中にたえて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし」を知っていたはずだ。「桜の花がなかったら、世間の人は静かだろう」というのだから、この歌だって……。こういった具合に、対となる歌を都合よく解釈していて非常に面白い。こういう構想は橋本治ならではであろう。たまたま四三と四四のペアを例にしたが、他のペアも強引といっていい解釈で楽しませてくれる。定家には情熱的な女の恋の歌の後に、シーンとした男の心象風景を続けるという癖があることを橋本は発見している。

定家による和歌の「オールタイム・ベスト100」の九七に、彼は自分の歌をはめこむ。「来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに 焼くや藻塩の 身もこがれつつ」。女になって詠んだ恋の歌である。現代語訳(橋本訳)は「来ぬ人を 松帆の浦は 夕凪ね 藻塩を焼くわ 私もジリジリ」だってさ。(柴田)


●デジクリサイト常時SSL化の続き。苦労して移動したんだから、常時SSL化しなきゃな〜って思いつつ、使っているCMSでの方法を調べたりして下準備をしていた。

この連休にしなければ、次にやれるのはお正月かもしれないと思い、取り組むことにした。

「取り組む」なんて書いているけれど、大きなトラブルはないものと思っていた。CMSは問題なく稼働するようになったし、証明書の発行は簡単だ。なので、CMSの設定をちょちょっと触れば済む程度だろうと。

が、webfont側の申請やら、テンプレートの書き換えやら、他にもいろいろトラブルが出てきてお手上げ。続く。(hammer.mule)