[5093] 家庭菜園のオススメ野菜ベスト10 星とブロッコリー◇買いものの話 百年と八日目の蝉

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《家庭菜園の特権》

■エセー物語(エッセイ+超短編ストーリー)[58]
 家庭菜園のオススメ野菜ベスト10 星とブロッコリー
 タカスギシンタロ
 
■エセー物語(エッセイ+超短編ストーリー)[59]
 買いものの話
 百年と八日目の蝉
 海音寺ジョー
 


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■エセー物語(エッセイ+超短編ストーリー)[58]
家庭菜園のオススメ野菜ベスト10
星とブロッコリー

タカスギシンタロ
https://bn.dgcr.com/archives/20201001110100.html

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◎エッセイ

家庭菜園のオススメ野菜ベスト10

家庭菜園を始めて10年になります。地主さんに初めて土地を借りたときは、草ぼうぼうのただ空き地で、割り当てられた区画には木の切り株さえ残っていた。思えば抜根作業から始まったんだなあ、などと今、作物が実る畑を見ながら感慨深く思っているわけであります。

そんなわけで、この10年間に育てた野菜の中で、家庭菜園でオススメの野菜ベスト10を考えてみました。東京なので、気候的には中間地、または温暖地域になるでしょうか。ついでにイマイチだった作物も、いくつか紹介したいと思います。

その前に、あらかじめお断りしておきますが、このランキングは一通り家庭菜園で野菜を育てた者の意見で、これから家庭菜園をはじめる人は、自分の心のときめきに忠実に、ありとあらゆる野菜を試すのが良いと思います。マニアックな野菜を育てられるのが、家庭菜園の醍醐味でもありますしね。さて、では第1位から。

■オススメの野菜ベスト10

1位 ミニトマト……定番中の定番ですが、家庭菜園にミニトマトは欠かせません。とにかく収穫量が多い、夏から秋までずっと取れ続ける、育て方も簡単と、いいことずくめです。最近ではちょっと飽きてきて、うちの畑はイタリアントマトばかりですが、それでも4株はミニトマトを植えています(そのうちの2株は脇芽を挿し木にしたものですが)。取れすぎたときはドライトマトにしても楽しめます。

2位 キュウリ……これまた定番ですが、食べる経口補水液ことキュウリは、夏の家庭菜園の王道でしょう。安定して取れ続けますが、最盛期には食べきれないほどの量になるのが家庭菜園あるあるです。その場合は、漬物にしてみるのも良いと思います。ピクルスもオススメ。栽培は水と肥料を切らさないのがポイントで、切れてくると、途端に曲がった実になります。味は変わらずおいしいので、あまり気にする必要はないですが、曲がっていると使い勝手が少し悪くなります。

3位 パクチー……パクチー好きの人は、もはや植えない選択肢はないでしょう。スーパーで買うのが馬鹿らしくなるほど、パクチー食べ放題です。うちではラーメンが見えなくなるほどトッピングしています。秋まきがオススメで、冬が来る前に少し収穫できますし、春になると根張りが良いためなのか、春蒔きのものより収穫量が多い気がします。あと、根を収穫できるのも家庭菜園ならでは。刻んで炒めものに使えば簡単エスニック! 害虫もほとんどつかないですね。

4位 タイム……タイムに限らずハーブ類は何かしらあると便利。お店で買うと結構お高いですが、畑にあると気軽に使えます。タイムをジントニックに添えるのが、僕のお気に入りです。ローズマリーも良いのですが、畑に植えると「木」に育ってしまうのでお気をつけください。引っこ抜くのに苦労しました(また抜根……)。バジルやイタリアンパセリも使い勝手が良いです。

5位 ししとう……とにかく収穫期間が長く、春に植えたら晩秋まで楽しめます。ピーマン代わりに使えるので実用的。しかもピーマンより育てやすいと思います。株が古くなってくると辛い実、いわゆる「当たり」が増えてくる気がしますが、それも魅力のうち。たまに虫がつくことがありますが、気にするほどではないです。

6位 オクラ……オクラも「元を取れる」野菜で、毎日毎日取れます。ムクゲやタチアオイみたいなお花もきれいです。実際に育ててみると、スーパーで売られているオクラは、かなり若いうちに収穫したものだということがわかります。家庭菜園では、スーパーで売っているのよりもう一日くらい大きくしてから収穫した方が食べ応えがあります。育てすぎると固くて食べられなくなりますが……。

7位 九条ネギ……九条ネギに限らず、長ネギはどんな品種でもあると便利。九条ネギは土を深めにかければ、白ネギ部も葉ネギも両方楽しめます。とにかく放っておいて良いので管理が楽。株が勝手に分かれて増えるので、いったん植えたら二度と買う必要がないところも経済的です。

8位 ホウレンソウ……アルカリ土壌を好むらしく、うちの畑との相性は悪いのですが、うまく育つと甘さが乗って最高のパフォーマンスを発揮します。株を抜かず、育った葉っぱのみを切って収穫し、しゃぶしゃぶにして食べるのが冬の贅沢。

9位 ナス……こちらも定番ですが、満足度が高い野菜だと思います。家庭菜園ではついつい肥料をあげすぎてしまう人も多いと思いますが、ナスは少々の肥料過多はどーんと受け止めて収量をアップさせてくれます。夏の終わりに切り戻すと、秋にはちょっと小さくなりますが、引き続き収穫でき、長く楽しめるのも魅了です。

10位 芋類……春はジャガイモ、秋にはさつまいも。とにかく放っておいても勝手に育つところが魅力的。収穫後に長期保存できるところも実用的だと思います。芋掘りというイベントつきの作物だと考えると、楽しさ倍増です。さつまいもは葉柄もきんぴらにして食べられます。皮をむいた手が真っ黒になりますけどね。

以上が植えて良かった野菜ベスト10となります。定番のお野菜が多かったですね。さて、以下はおまけです。

■イマイチだった作物

枝豆(ダイズ)……育てたことがない方には、ぜひチャレンジしていただきたいと思います。なにしろ、取れたての枝豆は最高においしいんです。ただね、苦労する割には収穫量が少ないというか、株ごと抜いて「はいおしまい」というところが寂しいんですよね。せめて豆以外の部分も食べられれば……。

ゴボウ……ミニゴボウを育てたことがあるのですが、ミニとはいえ、かなり地中深くに根を張りまして、収穫にえらく苦労した記憶があります(また抜根……)。根菜類はかなり深く耕す必要があって、ちょっと大変です。ミニ大根くらいなら、それほど深く耕さなくても良いとは思いますが。

カブ……これは単にうちの畑との相性なのですが、とにかく虫がつく。それもただ葉を食べられるならまだ良くて、根切り虫のたぐい(タマナヤガ?)が地上部をちょん切ってしまうのです。ひどい! なのでカブは滅多に植えなくなりました。

トウモロコシ……これも枝豆と同じく、育てたことがない方には一度は試していただきたいとは思いますが、畝を占領する割には収穫量が少ないのが難点。取れたては最高においしいんですけどね……。摘果したベビーコーンを食べられるのが、家庭菜園の特権ではあります。


以上、家庭菜園でオススメの野菜ベスト10とイマイチだった野菜でした。天気の日が続くようなので、そろそろトマトを片付けてブロッコリーの苗を植えようと思います。あ、ブロッコリーもオススメの野菜ですね。ブロッコリーは、冬には葉っぱをやたらと鳥に食べられますが、許します。鳥はブロッコリーの大切な、つぼみの部分は食べないので。


◎超短編

星とブロッコリー

星形の口金から出たマヨネーズを絞る。マヨネーズがブロッコリーに触れた瞬間、「ブロッコリー」と「星」が入れ替わった。確かにそんな感覚があった。それを確認するため、外に出た。

夜空を見上げれば満天のブロッコリー。天の川にはブロッコリーがびっしりだ。街角のブロッコリー占い師に占ってもらうと、今はブロッコリーの巡り合わせが悪く、勝負は当分黒ブロッコリー続きだそうだ。

気分転換に、街で有名な三つブロッコリー・レストランに入る。鴨肉のソテーの付け合わせは星。サラダにも星。シェフがやって来てサラダの仕上げをする。

「星は、冬には葉っぱをやたらと鳥に食べられますが、許します。鳥は星の大切な、つぼみの部分は食べないので」

そう言いながら、ブロッコリー型の口金からマヨネーズを絞る。ああ、今まさに、マヨネーズが、星に、触れる!


【タカスギシンタロ/超短編作家/フリーペーパー「コトリの宮殿」編集長】

『コトリの宮殿』では500文字程度の短い物語を募集中です。
原稿はkotorinokyuden01@mac.comまでどうぞ。

コトリの宮殿バックナンバー
https://inkfish.txt-nifty.com/kotori/



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■エセー物語(エッセイ+超短編ストーリー)[59]
買いものの話
百年と八日目の蝉

海音寺ジョー
https://bn.dgcr.com/archives/20201001110200.html

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◎エッセイ

買いものの話

ネットの科学コラムで、火山湖(カルデラ湖)に棲む魚は、最初どうやってここに来たのか? という謎を解いていた。川と繋がってない、もともと水溜まりとして生まれた湖に。

鳥がエサとして摂食した魚の、胎内の卵が胃で消化しきらず、ごく少数生き延びて、糞として湖に落とされ、それが繁殖していったというのが、一番妥当と考えられるとのこと。

https://nazology.net/archives/63129


ふーん、そうなんかと、その確率の低い魚の繁殖、種の存続の知恵に感心した。そして、ちょっとした時間差や、その日の天気や鳥の機嫌で、捕食される魚の運命、次世代の運命も含めて大きく変転する奇妙さを思った。

思ったのは一瞬で、すぐに明日の仕事や頼まれてた原稿のことや、いま図書館で借りてる本の返却期限、冷蔵庫内のR-1ヨーグルトの残存本数などなどに気を取られて、あっという間に記憶うやむやになった。

ただでさえ疫病フィーバー、悪天候、それに伴う葉野菜の高騰…おもしろサイエンストピックに耽ってられなかった。

そう、葉野菜である。春に100円で買えたキャベツが128円になり、さらに158円になり、248円に。ついには298円(税別)に跳ね上がった。レタスもだけど、レタスは普段あんまり買わないから、まあいいわ。

買いものはたいてい、家と職場の間にある平和堂というスーパーか、ジャパンというスギ薬局グループのドラッグストアですませるのだが、主に観光客目当てで、山の方で営業してる道の駅やマキノピックランドの方が、野菜は少し安いのではないか。直売所なので、少し安いのである。

ただ、葉野菜がどれだけ売ってるかは、滅多に寄らないので記憶あいまいだった。夜勤明けの先週、(8月末の)金曜日にふと思いたって、道の駅まで車で野菜を買いに行った。坂を上ってバイパスに合流した直後に、助手席からパタパタパタ、ジッジジー! と力強い羽音と啼き声が聴こえた。

蝉やん。いつの間に車に乗ってたのだろう。家のガレージの隣は空き地で、草ぼうぼう、雑木生えほうだい伸びほうだいなので、そっちからスルっと忍び込んでたのかもしれん。落ち着かなかったが、そのまま道の駅へと車を走らせた。

信号を二つ越えたくらいで、蝉の音は後部席へ移動した。窓を全部開けていたが、車外へ飛び出さなかった。気圧差があるからだろうか。車を走らせながら最近読んだ、くどうれいんさんのエッセイ『うたうおばけ』の帯に書いてあった惹句を思い出してた。

「人生はドラマではないが、シーンは急に来る」

車を道の駅の駐車場に停めたと同時に、バタターッと大きな羽音を立てて、蝉は窓から飛び去っていった。結局音だけで、蝉の姿は一切見ることがなかった。

自宅から、ここ追坂峠の道の駅まで、約10キロ。蝉はもともと交尾し、子孫を残すはずだった隣の空き地から、山手の叢林まで生活圏を変えてしまったな。そして、その子孫も。火山湖の魚みたいに。

道の駅にはキャベツは売ってなくて、ネギ(120円)とカボチャ(150円)となすび(120円)、うなぎ弁当(800円)を買って帰った。


◎超短編

百年と八日目の蝉

りゆ婆が食べなくなった。おしっこも出なくなった。もうそろそろらしい。

KPを呼ぶように、と院長指示があった。キーパーソン。りゆ婆の。りゆの居室に行ってみた。りゆがオレを見とめて片手を差し出した。両手で包むように握ると目をつぶって嬉しそうに握り返してきた。飯もいらないのに肌の温かみは必要なのか。いちばんさいごに欲しいものっていったい何だ? オレはまだ、それが何なのかわからないな。

その日から百年後、オレはりゆ婆が寝ていたのとまったく同じ部屋でベッドに横たわり、窓から蝉が羽化するのを見た。三人の孫がベッド脇に座って、その光景を一緒に見た。

蝉の成虫が殻を破る時に、あの日りゆ婆の口元にニヤッと浮かんだ皺を思いだした。

もういつくたばっても思い残しはないが、いやないはずだったが、今、羽を固めている蝉が、今日からどんな八日間をおくるのかが急に気になってきた。(500文字の心臓タイトル競作応募作品)


【海音寺ジョー】
kareido111@gmail.com

ツイッターアカウント
https://twitter.com/kaionjijoe

https://twitter.com/kareido1111


(付記)めっちゃ面白いくどうれいんさんのエッセイ集「うたうおばけ」は、書肆侃侃房さんから絶賛発売中です。
http://www.kankanbou.com/books/essay/0398

https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/486385398X/dgcrcom-22/



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編集後記(10/01)

●偏屈BOOK案内:青山繁晴「ぼくらの哲学」2016 飛鳥新社
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4864105219/dgcrcom-22/


青山繁晴の本はとても読みやすい。行間が広いからだ。普通1ページ16行のサイズに13行である。貧乏性のわたしにはこのスカスカ感が気になるが、実にていねいな語り口で、たしかにとても重要なことを書いているから、読み終えて不満に思ったことはない。とにかく、読んでいて疲れないところがいい。

青山の研究者としての活動は、社会科学、人文科学、自然科学の分野にまたがっている。青山と独立総合研究所は、2004年から新資源メンハイドレートの研究最先端に立ち、表層型といわれる純度の高い真っ白な塊を海底からの試掘に成功している。日本政府は2014年4月12日に「メタンハイドレード日本海で初めて発見した」と発表したが、これは「政府としては初めて」という意味だ。

ようやく日本の官民が連携して、メタンハイドレートを実用化する時代が始まった。青山らはこの発見によって特許を持ち、日本だけでなく、アメリカ、オーストラリア、EU全加盟国、中国、韓国、ロシア、ノルウェーでも特許を持つ。特許使用料は0円。日本の根幹精神「自分のためだけではなく人のために」を実践するためだ。

青山らが世界で初めて発見した表層型メタンハイドレートは、二つの大きな特徴を持つ。メタンハイドレートは、要は海底などで凍った天然ガスである。その塊(CO2の20〜25倍)が海底から柱のように立ち上がり、自然状態で大きく地球温暖化を進めてしまっている。これを人類が取りだし、燃やして使えば、地球温暖化効果はこの局面で1/20から1/25に抑え込める。

人類が使って燃やした方が、地球温暖化を抑制できる埋蔵資源があるということは、世界中の地球科学者を驚かせた。使っても使っても、地球が新たに供給してくれる可能性の埋蔵資源が存在する。インドやベトナムの海にもこのメタンハイドレートが存在している。メタンハイドレートに関する青山の国際的講演は、世界中に大きな感動を与えた。

青山は永遠に、女系天皇を認めない。「女性天皇はもちろん問題ない。過去に何代もおられる。女系だ、女性だと言うから分かりにくくなる。ほんとうは父系なのか母系なのかの違いである。性別は関係ない。天皇陛下が父系による継承であれば万世一系が続く、しかし母系にしてしまえば、それが男性による皇位継承であっても万世一系は崩れ、日本国の根幹が一瞬にして壊される」

「中国共産党の長期戦略のうち対日工作の要中の要が、この母系の皇位継承の実現による、天皇陛下のご存在のかけがえのない値打ちのひとつの破壊だ」。ところが、河野太郎がヤバイ。総裁選の直前に女系天皇容認に言及し波紋を広げた。このタイミングで持ち出す問題ではないだろう。しかも皇位継承の原則を理解していないようだ。青山繁晴や八幡和郎に教えを乞うたほうがよい。(柴田)


●家庭菜園したくなった……。/キャベツ高かったですよね!/今年は蝉が多かったらしく、虫かごを持った女の子たちまでいた。ふと木を見上げたら、探さなくても大量にいた。難なく取れただろうなぁ。/またややこしい話を編集長が。

/デジクリサイト常時SSL化の続き。解決しないトラブルを、笹川さんに連絡しておいたら、休日なのに「いまパーキングにいますが、運転中なので」というようなお返事が。

ええっ! 休み明けでもいいですぅ、すみませんすみませんすみません! と恐縮しまくり。連絡するのを忘れちゃうんじゃないかと思って、気がついた時に投げてしまうのだ。メール文化に染まっているのだ。

「Google Search Consoleは設定しましたか?」「HSTSは?」など、頭からすっかり抜け落ちていたことのアドバイス&作業から、「これやってみませんか?」「これが前々から気になってました」というような提案&作業まで。

休日や真夜中まで動いてくださって、新潟方面には足を向けて眠れませんっ。本当にありがとうございました。(hammer.mule)