◎エッセイ
家庭菜園のオススメ野菜ベスト10
家庭菜園を始めて10年になります。地主さんに初めて土地を借りたときは、草ぼうぼうのただ空き地で、割り当てられた区画には木の切り株さえ残っていた。思えば抜根作業から始まったんだなあ、などと今、作物が実る畑を見ながら感慨深く思っているわけであります。
そんなわけで、この10年間に育てた野菜の中で、家庭菜園でオススメの野菜ベスト10を考えてみました。東京なので、気候的には中間地、または温暖地域になるでしょうか。ついでにイマイチだった作物も、いくつか紹介したいと思います。
その前に、あらかじめお断りしておきますが、このランキングは一通り家庭菜園で野菜を育てた者の意見で、これから家庭菜園をはじめる人は、自分の心のときめきに忠実に、ありとあらゆる野菜を試すのが良いと思います。マニアックな野菜を育てられるのが、家庭菜園の醍醐味でもありますしね。さて、では第1位から。
■オススメの野菜ベスト10
1位 ミニトマト……定番中の定番ですが、家庭菜園にミニトマトは欠かせません。とにかく収穫量が多い、夏から秋までずっと取れ続ける、育て方も簡単と、いいことずくめです。最近ではちょっと飽きてきて、うちの畑はイタリアントマトばかりですが、それでも4株はミニトマトを植えています(そのうちの2株は脇芽を挿し木にしたものですが)。取れすぎたときはドライトマトにしても楽しめます。
2位 キュウリ……これまた定番ですが、食べる経口補水液ことキュウリは、夏の家庭菜園の王道でしょう。安定して取れ続けますが、最盛期には食べきれないほどの量になるのが家庭菜園あるあるです。その場合は、漬物にしてみるのも良いと思います。ピクルスもオススメ。栽培は水と肥料を切らさないのがポイントで、切れてくると、途端に曲がった実になります。味は変わらずおいしいので、あまり気にする必要はないですが、曲がっていると使い勝手が少し悪くなります。
3位 パクチー……パクチー好きの人は、もはや植えない選択肢はないでしょう。スーパーで買うのが馬鹿らしくなるほど、パクチー食べ放題です。うちではラーメンが見えなくなるほどトッピングしています。秋まきがオススメで、冬が来る前に少し収穫できますし、春になると根張りが良いためなのか、春蒔きのものより収穫量が多い気がします。あと、根を収穫できるのも家庭菜園ならでは。刻んで炒めものに使えば簡単エスニック! 害虫もほとんどつかないですね。
4位 タイム……タイムに限らずハーブ類は何かしらあると便利。お店で買うと結構お高いですが、畑にあると気軽に使えます。タイムをジントニックに添えるのが、僕のお気に入りです。ローズマリーも良いのですが、畑に植えると「木」に育ってしまうのでお気をつけください。引っこ抜くのに苦労しました(また抜根……)。バジルやイタリアンパセリも使い勝手が良いです。
5位 ししとう……とにかく収穫期間が長く、春に植えたら晩秋まで楽しめます。ピーマン代わりに使えるので実用的。しかもピーマンより育てやすいと思います。株が古くなってくると辛い実、いわゆる「当たり」が増えてくる気がしますが、それも魅力のうち。たまに虫がつくことがありますが、気にするほどではないです。
6位 オクラ……オクラも「元を取れる」野菜で、毎日毎日取れます。ムクゲやタチアオイみたいなお花もきれいです。実際に育ててみると、スーパーで売られているオクラは、かなり若いうちに収穫したものだということがわかります。家庭菜園では、スーパーで売っているのよりもう一日くらい大きくしてから収穫した方が食べ応えがあります。育てすぎると固くて食べられなくなりますが……。
7位 九条ネギ……九条ネギに限らず、長ネギはどんな品種でもあると便利。九条ネギは土を深めにかければ、白ネギ部も葉ネギも両方楽しめます。とにかく放っておいて良いので管理が楽。株が勝手に分かれて増えるので、いったん植えたら二度と買う必要がないところも経済的です。
8位 ホウレンソウ……アルカリ土壌を好むらしく、うちの畑との相性は悪いのですが、うまく育つと甘さが乗って最高のパフォーマンスを発揮します。株を抜かず、育った葉っぱのみを切って収穫し、しゃぶしゃぶにして食べるのが冬の贅沢。
9位 ナス……こちらも定番ですが、満足度が高い野菜だと思います。家庭菜園ではついつい肥料をあげすぎてしまう人も多いと思いますが、ナスは少々の肥料過多はどーんと受け止めて収量をアップさせてくれます。夏の終わりに切り戻すと、秋にはちょっと小さくなりますが、引き続き収穫でき、長く楽しめるのも魅了です。
10位 芋類……春はジャガイモ、秋にはさつまいも。とにかく放っておいても勝手に育つところが魅力的。収穫後に長期保存できるところも実用的だと思います。芋掘りというイベントつきの作物だと考えると、楽しさ倍増です。さつまいもは葉柄もきんぴらにして食べられます。皮をむいた手が真っ黒になりますけどね。
以上が植えて良かった野菜ベスト10となります。定番のお野菜が多かったですね。さて、以下はおまけです。
■イマイチだった作物
枝豆(ダイズ)……育てたことがない方には、ぜひチャレンジしていただきたいと思います。なにしろ、取れたての枝豆は最高においしいんです。ただね、苦労する割には収穫量が少ないというか、株ごと抜いて「はいおしまい」というところが寂しいんですよね。せめて豆以外の部分も食べられれば……。
ゴボウ……ミニゴボウを育てたことがあるのですが、ミニとはいえ、かなり地中深くに根を張りまして、収穫にえらく苦労した記憶があります(また抜根……)。根菜類はかなり深く耕す必要があって、ちょっと大変です。ミニ大根くらいなら、それほど深く耕さなくても良いとは思いますが。
カブ……これは単にうちの畑との相性なのですが、とにかく虫がつく。それもただ葉を食べられるならまだ良くて、根切り虫のたぐい(タマナヤガ?)が地上部をちょん切ってしまうのです。ひどい! なのでカブは滅多に植えなくなりました。
トウモロコシ……これも枝豆と同じく、育てたことがない方には一度は試していただきたいとは思いますが、畝を占領する割には収穫量が少ないのが難点。取れたては最高においしいんですけどね……。摘果したベビーコーンを食べられるのが、家庭菜園の特権ではあります。
以上、家庭菜園でオススメの野菜ベスト10とイマイチだった野菜でした。天気の日が続くようなので、そろそろトマトを片付けてブロッコリーの苗を植えようと思います。あ、ブロッコリーもオススメの野菜ですね。ブロッコリーは、冬には葉っぱをやたらと鳥に食べられますが、許します。鳥はブロッコリーの大切な、つぼみの部分は食べないので。
◎超短編
星とブロッコリー
星形の口金から出たマヨネーズを絞る。マヨネーズがブロッコリーに触れた瞬間、「ブロッコリー」と「星」が入れ替わった。確かにそんな感覚があった。それを確認するため、外に出た。
夜空を見上げれば満天のブロッコリー。天の川にはブロッコリーがびっしりだ。街角のブロッコリー占い師に占ってもらうと、今はブロッコリーの巡り合わせが悪く、勝負は当分黒ブロッコリー続きだそうだ。
気分転換に、街で有名な三つブロッコリー・レストランに入る。鴨肉のソテーの付け合わせは星。サラダにも星。シェフがやって来てサラダの仕上げをする。
「星は、冬には葉っぱをやたらと鳥に食べられますが、許します。鳥は星の大切な、つぼみの部分は食べないので」
そう言いながら、ブロッコリー型の口金からマヨネーズを絞る。ああ、今まさに、マヨネーズが、星に、触れる!
【タカスギシンタロ/超短編作家/フリーペーパー「コトリの宮殿」編集長】
『コトリの宮殿』では500文字程度の短い物語を募集中です。
原稿はkotorinokyuden01@mac.comまでどうぞ。
コトリの宮殿バックナンバー
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