[5133] M1チップ搭載のMacBook Airが来た/猫エッセイ「まっくら」

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《高速というよりも「瞬速」》

■クリエイター手抜きプロジェクト[637]
 M1チップ搭載のMacBook Airが来た
 古籏一浩

■I do not understand[3]
 まっくら
 田中 実
 



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■クリエイター手抜きプロジェクト[637]
M1チップ搭載のMacBook Airが来た

古籏一浩
https://bn.dgcr.com/archives/20201130110200.html

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今回は、11月17日に発売された〈MacBook Air〉の使用レポートです。まあ、人身御供とも言えるかもしれませんが、仕事の都合で購入しました。少し遅く注文したので、手元に来たのは11月25日でした。

さっそく開封。うまく開封できるように、色々工夫されていました。最近の日本のメーカーの商品はコスト削減し過ぎて、普通に開封することすら難しいものが結構あります。日本のおもてなしの心は、Appleとかが引き継いだのか? と思ったりするほどです。でも、商品にかけることができる金額が異なるので、ここらへんは仕方ないのかもしれません。

それはさておき、最新版のM1チップを搭載したMacBook Airですが、二か月ほど前に都合でMac miniを買ったため、予算がないので二番目に安いモデル(SSD 512GB)にしました。Mac miniの方が遥かに安いのですが、どうしても持ち運びする必要があったので、MacBook Airを選択したのです。

・MacBook Air
https://www.apple.com/jp/macbook-air/

・M1チップ
https://www.apple.com/jp/mac/m1/


電源スイッチを入れると起動音が鳴ります。重低音で、やや深みのある音といった感じでしょうか。昔は高音で軽かった感じでしたが、ここらへんは歴史を感じさせる部分もあるかもしれません。

電源が入って起動したら、初期設定です。ここらへんは、これまでのmacOSとたいして変わりません(MacBook Airには最新版のBig Surが入っています)。

今回も完全に新規のマシンとして使用するので、アプリケーションやデータなどは引き継ぎません。至ってクリーンな状態です。初期設定はすぐに終わりますが、アップデートがいくつかあったので、ダウンロードしインストールしました。これで使用する前準備が完了です。

まずはSafariを起動して、ページを表示してみます。予想以上に高速です。高速というよりも「瞬速」といったところです。自分のサイトも表示してみましたが、0.5秒くらいで表示されちゃったりと、異様な速さでした(リファレンスページなので、なお速いというのもありますが…)。

二か月前に購入したMac mini(Intel)より格段に高速です。これまで自分のサイトにあるページの表示が遅いのは、サーバーが古くて低速で、自宅の回線も遅いからだと思っていました。でも、M1チップを搭載したMacBook Airでアクセスすると、かなり速い。

さらに、同じネットワーク内にある複数のMacに、画面共有でアクセスしても非常に快適に使えます。そればかりか、インターネット上にあるサーバーの画面を共有しても、普通に使えます。

今までのマシンでは、そこまで高速に表示・処理されませんでした。15年間くらいずっと、遅いのはルーターやネットワークの回線だと思っていましたが、間違ってました。遅かったのは使ってるマシンのせいでした。

結局のところ、Windows 7(Core i5、i7マシン)もWindows 10も、Macも、UNIX(Ubuntu)も、低速だったのです。

せっかくなので、次にGoogle Chromeをダウンロードしました。Google ChromeはM1チップに対応したバージョンが出ているので、それを選択します。特に機能拡張とかは入れていないせいもありますが、高速で便利です。ストレスが溜まりません。

さらに、お試しで8K映像(Galaxy S20で撮影したもの。以下のURLにありますので試したい人はどうぞ)を再生してみましたが、コマ落ちせずに再生されてしまいました。もっとも、1/4に縮小されているわけですが、それでもコマ落ちせずに再生できるというのは、確認する時に便利です。

・8Kフリー映像素材
http://footage3.openspc2.org/HDTV/footage/8K/24f/


映像系だとどうしても必要になるのが、エンコード処理です。Adobe Media Encoderをインストールして、実験してみました。ただ、Adobe Media Encoderを起動すると、ロゼッタ入れる? というダイアログが表示されます。

11/25の時点では、Adobe Media EncoderはM1チップに対応していないということです。
このため、ロゼッタ2を介して、一度M1チップで動くように翻訳する必要があります。一度翻訳してしまえば、二度目からは翻訳しないので2倍くらい速く起動します。

テストとして、パナソニックの業務用4Kカメラで撮影した、4K/60P映像をエンコードさせてみました。MacBook Airでは、4分30秒でエンコードが終了しました。

最初は調子よく進んだのですが、次第に遅くなって行きました。ここらへんは放熱の関係で、CPU温度が上がると処理を遅くする仕組みがあるので、そのせいかもしれません。もしくは、8GBというメモリ容量のせいかもしれません。

エンコード処理はファンがついている、MacBook Proの方がよいのかもしれません。あと、メモリ容量にも依存しそうですし、映像系で使用するなら次か、その次のモデルの方がよさそうです。

多分、次はM1チップ×2かM2チップでiMac(Pro)で、その次はM2チップ×2もしくはM3チップとかで、Mac Proなんじゃないかなあと勝手に推測。

比較のためにMac Pro(2012、2x2.4GHz 6-core Xeon、High Sierra)でも、同じ映像をエンコードさせてみました。結果は2分50秒でした。

Mac ProはHDDなので同じ条件ではありませんが、現状ではエンコード処理は8年前のMac Proの方が格段に高速ということになります。ただし、Adobe Media EncoderがM1チップに対応したら倍速くらいになるのかもしれません。そうなると8年前のMac Proと同等クラスということになります。

最後にバッテリーですが、YouTubeを再生したまま1時間放置しましたが7%減少しただけでした。この状態でも14時間程度は持ちそうです。もっとも、そこまで負荷のかかるようなことをしなければ、もっと持つでしょう。
バッテリー消費しそうなアプリケーション何かないかなと思ったらVRoid Studioがありました。3DCGでリアルタイムに処理・表示するのでGPU使うはずです。

・VRoid Stuido
https://vroid.com/studio


モデルを歩かせ続けてみたところ4分で1%減少しました。40分なら10%なので計算すると400分(6時間半)でバッテリーを使い果たしそうです。

次に大量にインストールする必要があるAdobe関係のアプリケーションです。必要なものだけ入れてみましたが、Photoshopはフィルタまわりが表示されるプレビューが変な場合があったりしました。

Illustratorは、まあまあ良さそうな感じですが、細かくチェックしていないのでなんともです。文字回りは非常に高速に処理される感じで、これならストレス溜まらないかもしれません。Adobe系は怪しいのでAppleシリコンのチップに完全対応するまでは仕事で使うのは控えた方がいいかもしれません。


【古籏一浩】openspc@alpha.ocn.ne.jp
http://www.openspc2.org/


この原稿もMacBook Airで書いていますが静かで快適です。日本語変換は変換が微妙な部分があって、多少ストレス溜まることがありますが、まあ慣れでしょう。

ちなみにIchigoJam Webの動作速度も高速になっていて、まあまあ実機に近い速度が出ます。

・IchigoJam Web
https://fukuno.jig.jp/app/IchigoJam/


・創って学ぼうプログラミング
https://news.mynavi.jp/series/makeprogram


・8K/4K/ハイビジョン映像素材集
http://www.openspc2.org/HDTV/


・クリエイター手抜きプロジェクト
http://www.openspc2.org/projectX/



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■I do not understand[3]
まっくら

田中 実
https://bn.dgcr.com/archives/20201130110100.html

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吾輩は猫であるが、もはや死んでいる。

さっき目の前が真っ暗になったから、死んだに違いない。不思議なこと、にしばらくすると体がふわりと浮いて、満月に向かって引き寄せられていく。とても不思議な体験だが、以前にも似たような体験をした気もする。何度か生まれ変わっているのかもしれない。

満月の光が雲にさえぎられてしまうと、なかなか進まないのだが、別にあわてて猫天国に行く必要もないだろう。いや、猫天国でなくて猫地獄かもしれないが。

月がなぜか赤銅色になり、その後しっかりと雲に隠されてしまった。天国への道は真っ暗になった。真っ暗になったからといっても慌てることはない。が、ふと目の前が真っ暗になって、慌てたことがあったのを思い出した。

吾輩は元々は飼い猫だった。最後は流浪の猫となってしまったが、それはあの時の目の前真っ暗事件と関係している。目の前が真っ暗になったといっても、目を潰されたりしたわけではない。ショックのあまり、目の前が真っ暗になったという比喩の方だ。つまり、精神的ダメージ100%だ。

飼い猫だった吾輩は、雄猫の定めに従って家の周辺をテリトリーとした後、雌猫探しに出かけた。雌猫探しは案外と難しい。出歩くのは雄猫ばかりで、雌猫に出会う事はない。雌猫は基本的に住んでる家からほとんど離れない。

ゆえに家を探し当て、こちらから出向かなければならない。まるで、平安時代の貴族のようだ。だが、雄猫を待つ雌猫の気持ちを思うと、早く行ってやらねばならぬ。

人気の雌猫には、やってくる雄猫も多い。曜日ごとに相手してくれる雄猫を決めてくれればよいのだが、不幸な事に猫には曜日感覚はない。あるのは、本能だけだ。そう言えば、人間には加えて煩悩というのもあるらしい。

賢くない猫が集まると、いつも喧嘩しか起こらぬ。雌猫を巡っての喧嘩だ。敗れたら他の雌猫探しの旅に出るのだ。

そして、疲れたら飼い主の元に戻って、体力を回復させるのだ。たまに帰ると、家のものは泣き叫んで歓迎してくれる。これは、なかなか気持ちがいいものだ。吾輩を大事にしてくれてるのが、ひしひしとわかる。

最初は三日留守にした。
その次は一週間。
そして、一か月。

帰るたびに家のものは吾輩を大歓迎して、美味しいものを食べさせてくれた。

もっと、長い期間留守にすれば、もの凄く歓迎してくれるのではないか? そう考え、一年留守にしてみた。

そして、帰宅した。もう、吾輩の居場所はなかった。新たなる飼い猫がいたのだ。

遠目で飼い主を見つめていたら、向こうも気付いたようだ。しかし、手招きすらされなかった。やがて、こんな声が聞こえてきた。

まだ、死んでなかったのか!

目の前が真っ暗になった。猫はそう簡単には死なぬ。いなくなれば死んだも同然なのか。人間はそういう解釈なのか?

吾輩は察した。この家に居場所はない。新たな居場所を見つけなければ……。

しかし、今日の死を迎えるまで、新しい居場所は見つからなかった。野良猫状態の吾輩を、飼ってくれる家はなかった。餌にはあまり困らなかったが、寒さはこたえた。やはり、コタツの中は最高だ。だが、もうあれから二度とコタツの恩恵にあずかることはなかった。

そう、思いかえしているうちに雨も上がり、月が雲の切れ間から顔を出し始めた。赤銅色だった月あかりは黄色に戻っていた。

コタツほどではないが、月の少しだけあたたかい光につつまれた。多分、猫天国は暖かいところなのだろう。ま、猫天国に着くまで、ゆっくりと寝ることにしよう。とは言え、永遠に眠らないようにしないといけないが。


【田中 実】
〈日本一多いフルネームランキング 男性編第1位〉のなかの一人
I do not understand の意味:わかりません
連絡先:デジクリ編集部


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◎業務連絡(笑)筆者のみなさん、12月は18日(金)までです。香盤は送ってあるはずですが、もしご自分の担当日(掲載日)が不明な方はデジクリ柴田までご連絡ください。

編集後記(11/30)

●偏屈BOOK案内:橋本治「そして、みんなバカになった」河出新書 2020
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B087WHPPFV/dgcrcom-22/


橋本治は昨年1月29日に70歳で亡くなった。1968年(昭和43年)東京大学在学中に、「とめてくれるなおっかさん 背中のいちょうが泣いている 男東大どこへ行く」という東京大学駒場祭のポスターで注目された。わたしもさっそくパロディを作って、大学の文化祭で展示した。なにしろ「レタリング研究会」なる愛好会の設立者なのだ。女子部員が8割というお花畑だった。52年前の話かい!

♪お魚くわえたどら猫〜、って泥棒猫が台所に、という歌かと思っていた。橋本が解説する。戦後に食料の配給があると、町内会が道ばたに新聞紙みたいのを広げて、配布用の魚を並べておく。誰かが見張り番をしている。サザエさんが番をしているとき、野良猫がくわえて逃げちゃった、というシーンだという。「サザエさん」は戦後風俗にシンクロしている時期があったらしい。

橋本にとって本を「読む」のと、絵を「見る」のは同じ。「読む」の幅を拡げている。文章も絵もいっぺん壊して解体しないと読めないという。三島由紀夫がすごいのは情景描写で、「午後の曳航」は近代でいちばん美しい写生画だと絶賛。デッサンの跡が緻密に書いてあって、それに薄く絵の具を塗った水彩画のようなもの。つまり字が見えていて、そこに風景があるというもの。

行間で絵を見せるのではなく、文章が全部、彼の骨格になっていくくらいで、正確きわまりなくて、その正確さが美しいのだそうだ。「あれだけの風景画を描いている人って、画家でもそんなにいないでしょう」とまで書いているので、どんなにすごいのか、書棚から三島由紀夫全集14を引き出して「午後の曳航」を読んでみたが、橋本の力説するような現象は、わたしには全然起きなかった。

橋本がワープロで書かなくなった理由は、三島について書いているときに、三島の直筆原稿が頭に浮かんだからだ。三島は死に向かいながらも、一字一字、万年筆で書いていた。もうひとつは、「ひらがな日本美術史」の取材で、寺僧の許可を得て円空仏に触れたとき、小刀を持って何かを作りたがっている子供みたいな感覚が蘇り、自分は手が好きなんだと思った。それから手書きになった。

橋本はいつも、知識を持たない人にも分かるように議論を展開する。それは、どんな文章を書くときにも、15歳の男が背伸びしてわかろうとしたときにわかるように、準備しておかなければいけないと思っていたからだ。だから、どんな本でも遠慮会釈はない。橋本は1989年よりあとの時代(平成〜)の日本人には、「美学はなかった。美学という言葉を使うことで美学を殺している」と断言する。

「年をとると物忘れがひどくなるというのは、もうご愛嬌というか、一種のギャグみたいにしていて、平気で忘れてますね。(略)おれいま何しようとしてたんだっけとか、(略)でもそれで不都合じゃないんですよ。(略)どれだけの集中力を自分の中にキープしておいたかを考えたら、もうしんどくてね」。このお言葉は、わたしのような年寄りにとって大きな励みになるのであります。

「『瘋癲老人日記』を書いた谷崎潤一郎はすごい。(略)年をとった自分を笑うことを快感にしているから、ああいうフィクションができるわけでしょう。だから年とった自分に引きずられて死んじゃった川端康成と、年とった自分を笑える谷崎の差ってすごく大きいと思う」。三島は年寄りには同化できない人。漱石は年をとれない人。……もっと読みたいが、橋本治はもういない。(柴田)


●『SwitchBot Hub Mini』の続き。ついでにブルーレイHDDレコーダーも登録したかったがカテゴリがない。セットトップボックスやディスクプレイヤーはある。

用意されているのは、エアコン・テレビ・ライト・IPTV・扇風機・プロジェクター・カメラ・空気清浄機・スピーカー・ヒーター・ロボット(掃除機)と上記ふたつだ。

「その他」でボタンをひとつずつ登録することはできるが、そもそも便利多機能なレコーダー用リモコンがあるわけだし、レコーダーはスマホアプリから録画予約や削除、視聴ができるようになっているので、面倒くさいことをするまでもない。

ということで、実際に使うのはエアコンぐらいだろうなぁと思っている。世の家電自体がIoT化してきているから、Hub Miniの出番はそう長くないかも。

/プライムデー、後日談。注文後、期間中にさらに値下がったとかで、値下がり額相当分のポイントが付加されたわ。急ぎでないものを買うならプライムデーだなぁ。

/先日、AWSトラブルでHub Miniが動かなかったようだ。ようだ、と書いたのは、今はまだ朝のエアコンが必要ないからなのだ。復旧するまで20時間。(hammer.mule)

https://www.switchbot.jp/post/AWSサービスによるSwitchBotシステム障害完全復旧のお知らせ及び今後対策