[5150] 「リトルナイトメア2」体験/本を読む訓練/小川てつオくん

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《それは「本」を読む訓練だ》

■装飾山イバラ道[280]
 「リトルナイトメア2」体験版をプレイしてみた
 武田瑛夢

■万年思春期[005]
 5話目:「本」を読む訓練
 木村きこり

■Scenes Around Me[85]
 小川てつオくんのこと[18]
 エノアールカフェで撮った写真[1](2005年)
 関根正幸




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■装飾山イバラ道[280]
「リトルナイトメア2」体験版をプレイしてみた

武田瑛夢
https://bn.dgcr.com/archives/20210119110300.html

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Youtubeのゲーム実況動画を見て知った「リトルナイトメア」というゲーム。最近はゲームを見て楽しむ層も増えていて、私もその一人である。今回、Nintendo Switchでも「リトルナイトメア2」が2月10日に発売されるというのを知って、既に出ている体験版をプレイしてみた。Switch体験版は無料。

※以下はゲームのネタバレを含みますので要注意。

リトルナイトメア2 | バンダイナムコエンターテインメント
https://n6ls.bn-ent.net


「リトルナイトメア」はスウェーデンのゲーム会社Tarsier Studiosが開発し、バンダイナムコエンターテインメントより発売されたゲームソフト。上記サイトのPVをチェックして欲しい。私も記事を書くために初めて見たけれど、さらに発売が楽しみになってきた。

ダークトーンの美しいグラフィックのホラー系アドベンチャーゲームで、背景もかなりリアルに描きこまれている。出てくるキャラクターも、謎に満ちているのに妙に魅力的だ。悪役もものすごくキモかったり、陰湿なんだけれど、造形としてはクールなイメージ。

本国では漫画もあるらしく、キャラクターの関係を考察する動画やサイトも多数存在する。日本でも神ゲーと呼ばれている人気のゲームだ。

●前作概要

とりあえず、前作の「リトルナイトメア」の概要を簡単に書いておく。このバージョンは、私はYoutubeの実況動画を見ただけだ。

謎の場所に囚われた少女シックスが主人公。部屋の内装などから、どうも巨大な船内のようだ。少女は黄色いフードを被っていて顔の表情は見えず、とても小さい。ホラー要素もあり、けっこう残酷な部分も。しかし、何とも言えないムードがある。

ゲーム画面は背景が広くとられ、チョコチョコと主人公が歩き回る。ここがどんな場所なのかは、主人公が歩き回るにつれて解るようになっている。手に持ったライターで照らしながら、やっと周囲が見渡せるような暗さだ。

室内を一人で探検しているうちはいいけれど、化け物みたいな存在がいる場所では気づかれないように進む。気づかれたら走って逃げる。ハラハラドキドキする。実況プレイを見ているだけでもゾクゾクする怖さ。

拾ったアイテムなどを使いながら、恐る恐る進んでいく。自分が主人公になって自由に動けるゲームなので、興味を持った場所に長居したり、スイスイ進んだりは自由だ。この辺はゲーム実況者によって、全く違うスピード感で楽しめる。自分が見たい場所でゆっくり遊んでくれる、ゲーム実況者さんの動画がやはり楽しい。

そして、主人公よりもさらに小さいとんがり帽子の「ノーム」という存在が可愛くて、魅力的。

私は実況動画でラストまで見たけれど、映画を見終わったような独特の感覚があった。複数の実況者さんでリアクションも感想も違うので、見比べてみるのも面白かった。

●「リトルナイトメア2」体験版

そして今回、Nintendo Switchの体験版をダウンロードしてプレイした。ゲームが始まると、森の中で目がさめる。四角い紙袋に目の部分だけ穴が空いているものを被った、主人公モノを操作する。

背景との比率は前作と変わらない感じ。最初は基本的には右へと進んでいきながら、ジャンプや掴まるなどの動作を覚えていく。前作の室内の雰囲気よりは閉塞感はないけれど、土の中の穴をしゃがんで通り抜けたり、身を隠しながら進むのは一緒だ。

実はYoutubeのゲーム実況動画を見た後だったので、「リトルナイトメア2」体験版の展開は知っていた。知っている内容でも自分がプレイするのは初めてなので、操作感に慣れるのが大変だった。

森のあちこちに動物や人間(?)の死体らしきものがあったり、ワナが仕掛けられているのを回避しながら進んでいく。ゲームなのでうっかり死んでしまっても、復活する。ただ、怖いし、痛そうだし、悲しいので、ゲームと言えどもできるだけ死にたくはないものだ。復活の時に体育すわりして膝を抱えて座っている姿も物悲しい。

光と影をうまく使った演出で臨場感も抜群。ハラハラしながら、ようやく体験版を最後までプレイし終えた。実は隠し部屋などもあるらしいけれど、操作テクニックが上級者でないと大変そうで、まだ入れていない。

ゲーム実況動画については、ゲームの魅力を広めることでゲームを買ってプレイする人が増える可能性もある。私もかつて、ゲーム実況で知ったゲームを買ったことが一回ある(ヒューマンフォールフラット)。

しかし、興味を持つ人が増える恩恵もある反面、ただ動画を見るだけの人が増え、ゲームが売れないのもゲームメーカーとしては困ってしまうだろう。動画でストーリーのすべてがわかってしまうわけだから、実況動画とゲームメーカーさんの関係には、色々な意見があるようだ。

「リトルナイトメア」関連ではアプリにもゲームとコミック版があり、2月の「リトルナイトメア2」発売に向けて勢いづいている感じがする。発売が楽しみだ。


【武田瑛夢/たけだえいむ】
装飾アートの総本山WEBサイト"デコラティブマウンテン"
http://www.eimu.com/


母の家へは保存容器でお弁当のように料理を入れて持って行っている。そんなに離れていないので、温かいまま食べてもらうことも出来る。カレーうどんはスープとうどんを別々にしておいて、母の家で丼に移してレンチンする。冷凍にしておいてバリエーションを増やしたいので、初めて日付シールというのを買った。あんまりマメじゃないので、こういうの使うかなぁ。


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■万年思春期[005]
5話目:「本」を読む訓練

木村きこり
https://bn.dgcr.com/archives/20210119110200.html

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年が明け2021年になった。私はといえば、あいかわらず漫画原稿と絵画制作で、日々を過ごしている。そんな毎日の合間に、実はもう一つあることをしていた。

それは「本」を読む訓練だ。23歳ごろから「本」というものが読めなくなってしまったのだ。ここでいう「本」とは、漫画本やネットなどに載っている個人の小説のことではない。文字で構成されている、出版社などから出ている製本された「本」のことだ。

まず、手に取った時に感じる重みで拒否反応が出てしまう。何とかページをめくって読もうとすると、「文字」が目から滑り落ちる。「文字」が見開きのページの中を、這いずりまわって動くように感じる。まるでミミズに似た生き物のようだ。

今まで読むのが速いと言われていただけに、その出来事はショックだった。そこで、これではいけないと思い、少しずつ訓練することにしたのだった。

まず、読む本の種類を限定した。幸い漫画の仕事にしろ、このような文章の執筆にしろ、ジャンルが「エッセイ」と名がつくものだったので、短編を集めた随筆を読むことに決めた。「随筆が読みたい」と言ったら、本好きの母がかなりの量をセレクトして持ってきてくれたので、その中からまた選ぶことになった。しかし、内容が未知数な故に、判断はジャケットの絵や写真ですることになる。

本に装丁された絵や写真は、どれもとても魅力的だった。きっとデザイナーさん達が悩みに悩んだ末、出来上がったものなのだろう。そうして見続けるうちに、様々な装丁の中から私にとってひときわ魅力的に見える表紙の写真があったのだ。その本のタイトルは「塩一トンの読書」。著者は須賀敦子、表紙の写真はなんと、尊敬する芸術家の一人である岡本太郎が撮ったものだった。

岡本太郎の写真はいくつか見たことがあるが、どれも動きがある人物のモノクロ写真ばかりであった。しかし、「塩一トンの読書」の表紙はカラーで、俯瞰して本を撮った写真である。本が置かれた机の木目が美しさと静けさを感じさせ、ほのかに明るい照明の光が優しさと寂しさを感じさせた。

写真に写る本の表紙には、一匹の鳥が木の枝にとまっている。私はこの「本」を、何としても読み終えることに決めた。何年かかってもいい、それだけこの本に対して愛着を持つことが出来た。結局、読み終えたのは昨日だ(この文を書いているのは1月16日なので、15日に読み終えたことになる)。

須賀敦子さんの独特な静けさを持った文章を読むことは、生活の一部となっていたので少しさびしかった。それと同時に、やっと一冊「本」を読み終えることができた喜びにも浸った。

この世には様々な「本」がある。どれも個性的で面白いものばかりなのだろう。世界の情勢や書いている人間によって表現の幅は無限大で、出来上がった「本」はまた人の手に渡り広がる。そんなあたり前のことが、私には「本」という生き物が繁殖していくようにも見えた。

私はまだまだ読めない本が多い。しかし、少しずつでもいいから、表現の海に漂う「本」という生き物を捕まえて吸収していきたいと思う。そして、おこがましいけれど、皆さまにとって私の文章もそうでありますように。今年もよろしくお願いします。


【木村きこり】
漫画家/美術家
ツイッター:chara_334466
インスタグラム:kikori_k_1112

漫画発売・配信しております

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■Scenes Around Me[85]
小川てつオくんのこと[18]
エノアールカフェで撮った写真[1](2005年)

関根正幸
https://bn.dgcr.com/archives/20210119110100.html

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今回から、小川てつオくんといちむらみさこさんが、代々木公園のテント村内に開いたカフェエノアール(絵のあーる)で撮った写真を紹介することにします。

エノアールは物々交換カフェです。
http://kyototto.com/books/enoa-ru


エノアールに集う人は、お菓子などの差し入れを持っていくか、何かの作業を手伝うかして、お茶やコーヒーをいただくことができました。
http://kyototto.com/books/ewokakukai


また、週一回火曜日の午後、いちむらさんがエノアールで「絵を描く会」を開いて、出来た絵を飾りました。
https://live.staticflickr.com/65535/50738610826_87f8b5f0e8_c

2006年2月7日撮影。おそらく、いちむらさんが描いた絵

実のところ、私がエノアールで撮った写真はそれほど多くないようです。それは、私がテント村の住人を写さなかったことが一つの理由になっています。

私がエノアールに遊びに行ったとき、陽だまりの中、常連の人たちがのんびり将棋を指しているのを見て、写真を撮ろうとしたことがあります。

私自身、てつオくんからテント村の住人には訳ありの人がいるから写真を撮るのは良くない、と言われたことを覚えていたので、顔は写さないように配慮していました。

それでも、ひとりの人に、「私ならいくら撮っても構わないが、他の人は撮ってくれるな」と注意されました。
そんなこともあって、エノアールで写真を撮ったのは、展示やパーティーが行われた時に限られました。

2005年3月22日

この時はたしか、まんねんさんというテント村の元住人が「絵を描く会」で描いた絵の展覧会を行ったのだと思います。

https://live.staticflickr.com/65535/50742379692_6427ee6d54_c
https://live.staticflickr.com/65535/50742276746_17ea8a4f70_c
https://live.staticflickr.com/65535/50741537783_25e639c361_c
https://live.staticflickr.com/65535/50741537923_d1b689b56e_c

2005年11月1日

エノアールに出入りしていたドキュメンタリー写真家(名前は失念しました)が撮影した写真をエノアールで展示しました。
https://live.staticflickr.com/65535/50737876183_c1f2a99c2b_c

2005年12月11日

てつオくんの誕生パーティー
https://live.staticflickr.com/65535/50738721252_c2201000fb_c


【せきね・まさゆき】
sekinema@hotmail.com
http://sekinema.com/photos


1965年生まれ。非常勤で数学を教えるかたわら、中山道、庚申塔の様な、自転車で移動中に気になったものや、ライブ、美術展、パフォーマンスなどの写真を雑多に撮影しています。記録魔


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編集後記(01/19)

●偏屈BOOK案内:「SF映画術 ジェームズ・キャメロンと6人の巨匠が語るサイエンス・フィクション創作講座」発行:ディスクユニオン 2020
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/486647095X/dgcrcom-22/


版元の内容紹介によれば、「SFの過去と現在と未来。我々が伝えたいすべてのこと。『アバター』の続編が待たれるジェームズ・キャメロン監督がハリウッドで活躍する重鎮たちを招いて、SF映画談義。SFの各ジャンルについて、また、SF映画のこれまでと、未来について熱く語る」という趣の本である。3200円。

A5判で304ページもあるが、ほとんどのページが白地ではなく、主に濃い藍色系でテキスト白抜きという、恐るべき読みにくい本。なんで普通の本の体裁にしなかったんだろう。原本側からの制約だったのか。掲載される画像やイラストなどは150点以上あり、非常に興味深いものが多く、それだけ見てても楽しいのだが、テキストのページにはうんざり。でも、そのうち慣れてしまった。

ジェームス・キャメロンは映画監督・脚本家。「殺人魚フライングキラー」「ターミネーター」「ランボー/怒りの脱出」「エイリアン2」「アビス」「ターミネーター2」「タイタニック」「アバター」などを手がけた人。これらは全部DVDで見た。どれもが面白かった。そんな彼が語り合う6人の巨匠とは誰だ。映画をあまり見ないわたしでさえも知っていた大御所たちであった。

スティーヴン・スピルバーグ、ジョージ・ルーカス、クリストファー・ノーラン、ギレルモ・デル・トロ、リドリー・スコット、すさまじい陣容である。対談はけっこう格好良く(エラそーに)まとめられている。改行が少なく、強調部分は太字。ものすごく読みにくい。トリがサイエンス・フィクションを書く側ではない、アーノルド・シュワルツェネッガーの「マシンを演じること」。

ジェームス・キャメロンがスティーヴン・スピルバーグに「『未知との遭遇』で、君は地球外生物が恐ろしい存在にも、友好的な存在にもなり得るふたつの可能性があることを示した」と言うと、スピルバーグは「それって、広島と長崎に落とされた原爆に端を発していると思う」と妙なことを語り出す。

「もちろん、最初に原爆の影響を芸術に反映したのは日本人だ。東宝の『ゴジラ』は、国内で起きてしまった取り返しのつかないことに対する文化的、国民的な不安を利用した最初の映画だ」とは何たる無神経な言い草だろうか。初代ゴジラは、度重なるアメリカの核実験により、海中洞窟にいた太古の巨大怪獣が安住の地を奪われ、地上に現れた。その因果関係を希釈するような言い方。

無抵抗の日本に二つも原爆を投下したのは、スピルバーグのアメリカだぞ。しかも「ゴジラ」を「日本人の生々しい原爆への恐怖」あってこその名作としながら、「命懸けでオキシジェン・デストロイヤーを仕掛けに行く芹沢博士」について、「原爆を投下しようとする米パイロットにも同じ葛藤があったと考えられる」といった、まったく後付けの、大ウソご都合主義の発言もある。1954年の水爆大怪獣映画「ゴジラ」のポスターが掲載されているのがうれしい。手書きの「大70、小40」というのは入場料だろう。(柴田)


●ド近眼である。0.02と0.04。外出時にはワンデー用使い捨てコンタクトレンズを使っているが、老眼が始まって、遠近両用コンタクトレンズを着用。

しかし、0.02をカバーできる使い捨てレンズはなく、片目のみ遠近両用、もう片方は普通のものを使っている。

ワンデー、使い捨てという単語からわかるように、普段は眼鏡を使用していて、遠くを見る必要のある初めての場所、慣れない場所や環境、大事な時はコンタクトレンズで、近所を出歩く時は眼鏡のままだ。その近所でさえ外出するのは、せいぜい週に一度。

昨年末、急に寒くなり、マスクをつけて外出したら、眼鏡が曇り困ってしまった。ド近眼なのに、眼鏡をはずした方が見えるぐらい。慌てて曇り止めを探す羽目になった。続く。(hammer.mule)