[5184] 塗装作業の動画を撮ってみた/伯爵になるはずだった作家・有馬頼義

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《6個同時進行はしんどかった》

■グラフィック薄氷大魔王[691]
 塗装作業の動画を撮ってみた
 吉井 宏

■日々の泡[51]
 伯爵になるはずだった作家
 【赤い天使/有馬頼義】
 十河 進
 


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■グラフィック薄氷大魔王[691]
塗装作業の動画を撮ってみた

吉井 宏
https://bn.dgcr.com/archives/20210310110200.html

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●塗装作業の動画撮影

みなさん、誰も彼もが、制作作業の動画をSNSにアップしてる。なんか「最近は動画でないと見てくれないから」という風潮らしい。

立体制作の作業写真はたくさん撮ってきたけど、初めて動画で撮ってみた。iPhoneを台にテープ留め。緊張しつつ撮影開始したら、モードが間違ってタイムラプスになってたり、作業個所が画面から外れてたり、ピンボケしてたり、むずかしい。



結局、タイムラプス主体になったけど、Premiereで再生速度を調整したところや、ピンボケ失敗部分も混在。

突然思いついたもんだから、機材の用意もなし。検索したら、スマホを三脚にとりつけるアタッチメントって売ってるのね。百均にもスマホ用三脚的なものがあるらしい。

あと、作業中の手と顔の間にスマホがあるためやりにくいし、ハズキルーペも使えず。全編撮るというより、ポイントで撮ってつなぐ感じになった。ピントを固定したり、アスペクト比を変更できる撮影アプリがあるそうなので、次回使ってみよう。

●仕上げのトップコートスプレー吹き

完成!
http://www.yoshii.com/dgcr/3dp-IMG_3114

トップコート仕上げがあまりにツルッツル。背面の写真もあるんだけど、部屋が丸写りなのでボツにしたくらいのw

最終工程のトップコート吹きについて、いつも思うこと。

一週間とか10日とか時間をかけて作業をしてきた最後の最後、仕上がりを左右する最も重要な工程が「缶スプレー」っていう、不安定で運任せのツール(ここ一年ほどはクレオスの水性プレミアムトップコートを使ってる)。

最低でも4〜5回くらい噴霧と乾燥を繰り返さないとツルッツルにならないんだけど、吹き付けてる時間に比例して、ホコリがついたり、大きな飛沫が飛んだり、垂れたりする危険も増大する。

「あと一回吹けばもっとツルツルになる」と「あと一回って時に失敗したら全部台なし」のせめぎ合い。実際、最後と思って吹いてるときに、虫が飛んできてべったりくっついたりすることが何度もあった orz

今回でいうと、夕方までかかって5〜6回吹いてもう完成かなと思ったら、お尻の下あたりがザラザラのまま残ってた。しかたないので翌朝にまた2回ほど吹いたんだけど、吹きすぎてしまい垂れ下がる始末。

垂れ下がってきたトップコートを紙にくっつけて除去、なんとかセーフだったけど、ヒヤヒヤもの(相当垂れてても、完全乾燥してしまえばほぼ平らになるはずだけど、トロ〜リと垂れてるのを見ると冷静ではいられないw)。

筆塗りできるトップコートやニスなどいろいろ試してるんだけど、どれもイマイチ。ルアー制作に使うエポキシかウレタンが良さそうだけど、溶かしてしまう可能性もあるし。

ずいぶん以前に試した家具用などの一液ウレタンニスは、試し塗りを爪で引っ掻いて傷つくからダメと即決してたけど、どうも完全硬化に数週間かかかる場合があるそうで、また試すつもり。

●作業時間かかりすぎ

今回は「いっぺんに何個も作らず、一個だけ作る。削りやすいという触れ込みのPLAフィラメント使用と合わせ、ちゃっちゃと作業が進むスピード感が出るんじゃないか?」がテーマだった。終わってみると、「一個だとムダにじっくりていねいに作業してしまって、スピード感は出ない」だったw

複数同時進行で、ちょっと焦りながら取っ替え引っ替え作業だと、作業がちょっと雑になるけど、仕上がりにはぜんぜん影響なかったりする。6個同時進行はしんどかったけど、3個くらいが適当かもね。

出力用に3Dデータを整えるところから数えて11日かかってる。フルパワーでかかりきりじゃなく、どちらかというと片手間に一日に長くて5〜6時間くらいしか費やしてないけど、11日って、かかりすぎ! 塗装がラクなものを選んだのに。1個ならせめて2〜3日で完成させたいなあ。

【吉井 宏/イラストレーター】
http://www.yoshii.com

http://yoshii-blog.blogspot.com/


U-NEXT、ふと検索したら「ツイン・ピークス」の配信が始まってる! どこも配信してなかったから、DVDボックス買ったのに(まだ見てないw)。あと、まさかと思って確認したら、やはりU-NEXTで「刑事コロンボ」の配信が始まってる〜! 同じくどこも配信してなかったから、以下略 orz

○吉井宏デザインのスワロフスキー

・十二支(丑年)OX
https://bit.ly/37gbNEN



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■日々の泡[51]
伯爵になるはずだった作家
【赤い天使/有馬頼義】

十河 進
https://bn.dgcr.com/archives/20210310110100.html

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一昨年の十二月半ば、初めて比叡山に登った。晩秋というより初冬である。琵琶湖側の坂本から登り、途中、世界一長いというケーブルカーに乗り、延暦寺に入った。延暦寺は広くて全部は見切れなかったが、何となく歴史の重みは感じた。映画に登場した僧兵たちの姿が浮かんでくる。

頂上からロープウェイの駅に向かったが、高所恐怖症の僕はずっとロープウェイは避けてきたのだ。心中は穏やかではない。戦々恐々というところか。かみさんが「ひとりだけ歩いて降りたら」と笑う。歩くと言っても道もわからないし、時間がどれくらいかかるのかも不明だ。

ということで覚悟を決めてロープウェイに乗ったのだけれど、後から客が乗り込むたびに揺れる。これはどうなることか、と思っていたらロープウェイが動き出し、僕は窓から遠くに目をやった。下を見るなんてとんでもない。しかし、ロープウェイは数分で下の駅に到着した。何だか肩透かしだった。

そのまま急傾斜のケーブルカーに乗り込むと、後ろの席に登山服姿の数人のグループがいた。その中のひとりの女性が「ねえ、有馬記念の有馬ってどういう意味?」と言うのが聞こえた。その週末に有馬記念が行われる予定だった。その年に活躍した名馬が出揃う一年最後のG1レースだ。

その女性の質問には別の男性が「競馬界に貢献した有馬さんというのを記念したレースだよ」と答えたが、僕は「有馬伯爵。その息子が作家になった有馬頼義。『貴三郎一代』は大映で『兵隊やくざ』として勝新主演で映画化されてヒットし、シリーズ化された」と心の中で補足していた。

有馬頼義が亡くなったのは、もう四十年も前のことになった。書店で著作を見かけることもない。戦後すぐの頃から流行作家として活躍し、様々なジャンルの作品を残したが、やはり戦争を描いた作品が多かった印象がある。ただし、初期は推理小説家だと思われていた。

僕がずっと見たいと思っている映画に「三十六人の乗客」(1957年)と「四万人の目撃者」(1960年)がある。前者が東宝作品で、後者は松竹作品である。その頃、有馬頼義は流行作家だった。「三十六人の乗客」はバスの中が舞台で、「四万人の目撃者」は野球場で事件が起きる。

この二本はサスペンス映画として評判がいいのだが、プログラム・ピクチャーで名画座にかかることもなかった。調べていないのでわからないが、もしかしたらDVDになっているのかもしれない。今度、ユーチューブで検索してみようかな。

僕は内容は知らないのだけれど、有馬頼義は「ガラスの中の少女」という小説も書いていて、これは1960年に吉永小百合が映画化し、美少女の誉れ高かった後藤久美子が1988年にリメイクした。タイトルがいかにもという感じだから、どちらも原作のタイトルをそのまま使っている。

この辺は、様々なジャンルの小説を書き、お嬢様とチンピラの悲恋を描いた「泥だらけの純情」が、吉永小百合と山口百恵によって二度も映画化された藤原審爾に似ている気がする。世代的にも近いのではないだろうか。藤原審爾の「新宿警察」シリーズは、今の警察小説ブームのハシリだった。

さて、前述のように有馬頼義は戦前の伯爵・有馬頼寧の三男だった。長男と次男が病弱で三男の頼義が伯爵を継ぐことになっていたらしい。戦後、長男と次男は若死にしているから、華族制度が廃止にならなかったら伯爵になっていたのだ。

有馬頼義の「貴三郎一代」を映画化した「兵隊やくざ」は、めっぽう喧嘩が強く殴られ強い貴三郎(勝新太郎)とインテリ上等兵(田村高廣)のコンビが日本陸軍の不条理を頭脳と腕力で跳ね返し最後は脱走する物語で、軍隊でいじめられた戦中派が溜飲を下げる内容だった。公開当時、軍隊経験のある人はまだまだ多かった。

十本近くあるシリーズの前半の五本ほどは見ているが、日中戦争最中の日本陸軍の生態がよく描かれている。僕は、ずっと田村高廣が演じるインテリ上等兵は有馬自身ではないかと思っている。有馬頼義は軍隊での体験を様々な作品に仕上げているのだ。

そのひとつが従軍看護婦を主人公にした「赤い天使」(1966年)である。どんなジャンルでもこなした大映のエース監督だった増村保造と若尾文子が組んだ作品は名作ぞろいだが、ベストワンとして僕は「赤い天使」を挙げる。増村監督は「兵隊やくざ」を手がけており、そのつながりで有馬の「赤い天使」に出会ったのだろうか。

若尾文子が演じる従軍看護婦は、増村作品のすべてのヒロインと同じく、とても強い意志を持っている。簡単なことでは傷つかない。傷病兵にレイプされても彼女は負けないし、戦場で両手を失った若い兵士の頼みを受け入れ彼を性的に満足させる。

彼女は過酷な前線を希望し、不眠不休で働く軍医(芦田伸介)の下に就く。残酷な戦争の現実を彼女は目撃するが、ただ自分の仕事を黙々とこなすだけだ。その精神の強さには恐れ入ってしまう。僕が増村作品のヒロインを好きなのは、彼女たちの強さに惹かれるからだろう。

戦傷を負った兵士たちを手当し再び戦場に送り出すことに、軍医は医者として虚しさを感じている。それでも、毎日、ひどい負傷者たちが運び込まれ、瞬時に「助かるか、助からないか」を判断し、助からない負傷者は見捨てざるを得ない。

ヒロインは、次第に軍医に惹かれていく。だが、軍医は彼女の想いを受け入れることができない。精神的に深く傷ついている軍医はモルヒネに頼り性的不能者になっている。だが、ヒロインの強さは、そんな男の弱さを補う。どんなことも彼女の心を傷つけられず、意志を挫くことはできない。

作家生活の後半、有馬頼義は戦争をテーマにした作品ばかり発表していた印象がある。「反戦」を明確に打ち出しているわけではないが、戦場の現実を描き出す作品だった。だから、「赤い天使」のように作品全体から「厭戦」気分を誘われる。心の底から「戦争は厭だ」と思わされる。

【そごう・すすむ】
ブログ「映画がなければ----」
http://sogo1951.cocolog-nifty.com/

「映画がなければ生きていけない」シリーズ全6巻発売中
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編集後記(03/10)

●偏屈BOOK案内:八幡和郎「歴史の定説100の嘘と誤解 世界と日本の常識に挑む」扶桑社新書 2020
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4594084214/dgcrcom-22/


この本は、世界史・日本史の広い分野の中で歴史の定説とか常識について、筆者が「間違っている」と思った100テーマを、選び出してまとめたものだ。

歴史でもファンの関心が高いのは政治・外交史である。通産省の官僚であった筆者からすれば、「定説」にはリアリティがないものが多いという。

定説が陥っている勘違いの原因は、文献学者も考古学者も、たまたま存在する確実な証拠にこだわり過ぎているからだ。歴史はさまざまな分野の専門家が知恵を持ち寄って、切磋琢磨すべき分野である。

だがこの本は、一人の視点でさまざまなテーマを見ることも大事だと欲張った筆者によるもので、一つのテーマに2ページ、大事なところは太字、お気楽に読めるからおススメだ。

なかでも気になったいくつかを紹介する。「歴代米国大統領の通信簿をつけてみたら」では、44人全員をAからEの5段階で評価している。

トランプは現職(当時)だから評価外。アメリカの偉大な大統領は誰かと問えば、ワシントン、ジェファーソン、リンカーン、ウィルソン、フランクリン・ルーズベルトを挙げることが伝統的に多い。有名人であり、戦争を始めた大統領ばかりである。

筆者は「アメリカ歴代大統領の通信簿 44代全員を5段階評価で格付け」という本を書いたこともある。最高評価としているのはワシントン、ポーク、リンカーン、セオドア・ルーズベルト、フランクリン・ルーズベルトの5人である。

日本ではほぼ無名の11代ジェーム・スポークは、カリフォルニアの買収をはじめ、アメリカの版図を広げ、連邦の財源確保や関税引き下げなどを実現した人。セオドア・ルーズベルトは力を背景にした「棍棒外交」で現実的成果を十分に上げた人。

フランクリン・ルーズベルトの、ニューディールに類する政策は各国でやっているから過大評価はすべきではない。ソ連を甘く見たり中国に肩入れしたり、日本にとっては良くない大統領だったが、政治的能力の高さでアメリカの厳しい時期を乗り切ったことは、アメリカの立場に立つなら評価すべきである。

「日本の高度成長が世界を共産主義から守った」。これとはどういことか。日本が西ドイツを抜いて世界2位の経済大国になったのは1968年、池田勇人首相による所得倍増計画の結果だった。その後42年間、2010年に中国に抜かれるまで2位の座を守った。

この戦後日本の成功は世界史的に大きな意味がある。世界革命を起こさなくとも、西欧的な民主主義と市場経済のもとでまっとうな国造りをしたら、欧米先進国追いつくことが可能だというモデルを具現化したことだ。

「この日本モデルは、韓国や台湾のような旧日本領で容易に模倣され成功しました。そして、マレーシアやタイが続き、ついには中国がそれに続き、アジアは世界経済のセンターとなりましたが、すべては、日本モデルの応用だったわけですから、戦後日本は世界史に貢献をしたわけです」。誇れる話だ。(柴田)


●そうかゴム手袋!! 動画興味深い。ムラにならないの凄い。

/『貞操逆転世界』続き。トンデモマンガかと思いきや(や、トンデモなんだけど)、考えさせられるものだったわ。だんだんと下ネタ強めになってきているので、どこまで読むかはわからないけど、今のところ面白い。

でも現実に置き換えつつ読むと、すごく疲れる。これの反対ってことは……と考えてしまうので。

コメント欄を読むと、考えさせられるというものもあった。

「なんだろう、世の中の女性性・男性性に疑問を投じるような深さを感じるような気がしないでもない。」

「逆になることではじめて見えてくる当たり前と思ってしまってる異常性…これは案外なかなか深いぞ…」

続く。(hammer.mule)

貞操逆転世界
https://manga.line.me/product/periodic?id=916074