[5195] 線路っ端散歩の巻/人は善に生きている

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《ちょっと視点を変えて》

■わが逃走[277]
 線路っ端散歩の巻
 斎藤 浩

■crossroads[102]
 人は善に生きている
 若林健一




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■わが逃走[277]
線路っ端散歩の巻

斎藤 浩
https://bn.dgcr.com/archives/20210325110200.html

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経済と感染防止の両輪で、とかよく聞くけど、国民あっての経済だろう、両輪という表現には納得いかんな。
とか考えつつ世田谷線沿線を3キロほど歩いた。

なぜ歩いたかといえば、電車賃をケチるためと、健康のためというか、もうすぐ健康診断なので、運動するふりをしたくなったからだ。

この一年、会議も授業もぜんぶリモートだったので、仕事にまつわる移動がほとんどなかった。

原因はそれだけじゃないだろうけど、数か月前から腹の肉が増えてきたように思えてきた。しばらく放置していたら、つかめるくらいに育ってきたのだ。よく浮き輪にたとえられるアレだ。

久々に体重計に乗ってみるも、体重自体は変化していないようだ。ということは、少ない筋肉がさらなる贅肉へと変換されているのだろうか。

家を出て踏切を渡り、前々回に紹介した阿部定物件を見舞う。コンクリート柵のてっぺんは相変わらずちょん切られていたが、今日はここにオシャレなスニーカーがディスプレイされていた。
無事持ち主のもとに帰ったかな??

https://bn.dgcr.com/archives/2021/03/25/images/001

春の線路っ端というのは雑草がたくさん生えてくるので、なかなか風情があって好ましい。

私はいわゆる観賞用の花より雑草が好きなのである。まあもともと花ってものは人間でいうと生殖器なので、それを鑑賞すると思うとなんだか恥ずかしくなってしまうのだが。

春の線路っ端の雑草はバラストや枕木の褐色と新緑の緑、そこに群生する彩度高めのドットとのコントラストがとても美しいと思うのだ。

ふと足元を見ると、紫色のドットが複数連なっている。なかなかカワイイ。アプリで調べてみると、「ムスカリ」と表示された。

ムスカリは園芸種だそうで、だとするとこういう場所に咲いているのも不思議な感じだが、引きで見たときの色彩がなんとも風流で、雑草のように美しいと思うのだった。

https://bn.dgcr.com/archives/2021/03/25/images/002

駅を越えてさらに歩く。すると、コンクリート柵のてっぺんの棒が、まだ阿部定物件になっていないではないか!

駅のこっち側はなぜか無事だったとみえる。元気に屹立する者、ナットつきの者、ふにゃっと曲がりつつも前向きに生きようとしている者など、どれも個性的で面白い。

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さて用事を済ませ、同じ道を帰る。陽も傾いてきたが、まだ明るい。線路の反対側にハナニラが咲いていたので、踏切を渡って見に行った。この花も線路によく似合う。

線路といえば、この花か、もうちょっと後に咲くダイコンバナだ。

https://bn.dgcr.com/archives/2021/03/25/images/006

ダイコンバナは、錆びた廃車にもよく似合う。

昔は空き地にナンバーの外された軽トラや乗用車が放置されていて、よくそこで遊んだものだが、そういうのは最近あまり見かけなくなった。

子供の頃のスリコミなのか、どうも私は錆び色と緑・紫の対比が好きなようだ。

その頃から、雑草だらけの庭に錆びたフォルクスワーゲン・ビートルを放置して、朽ちてゆく姿を定点観測したいと思っていたが、いまだ同じようなことを考えている。

価値観とは変わらないものかといえば、そうでもない。

以前も書いたが、私は幼稚園に入る前から女子高生が好きで、高校生になっても女子高生が好きで、大人になっても女子高生が好きだったが、最近は女子高生よりもむしろ、女子高生のコスプレをした三十女に魅力を感じている。

そう考えると、作為によって生まれた錆びに無作為を見出し、そこに華を感じる時がいずれ来るのかもしれない。

さてダイコンバナを引きで見てみる。実はこの道、このあたりの線路沿いで最も狭くなっている場所なのだ。
昔はこの場所に踏切があったのか?

もともとこの線は路面電車なので、軌道と道路が曖昧のままある日突然こうなったのか? 50年くらい前の地図を見ればわかるかもしれん。そのうち調べてみよう。

この辺りは一方通行や行き止まりが多く、パトカーに追われてもここに入り込めば逃げられるかもしれないと思っている。脇に少し前まで住宅が建っていたはずだが、いつのまにか更地になっていた。

https://bn.dgcr.com/archives/2021/03/25/images/007

ホントに日が伸びたなあ。
私は夏が嫌いなのだ。暑いから。
暑い夏が来る前に、もっと自由に出歩ける日常が訪れることを切に願う。


【さいとう・ひろし】
saito@tongpoographics.jp
http://tongpoographics.jp/


1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。


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■crossroads[102]
人は善に生きている

若林健一
https://bn.dgcr.com/archives/20210325110100.html

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こんにちは、若林です。

3月も終盤を迎え、桜の季節になってきました。私の自宅の周りでも桜が咲き始め、今週末ぐらいにはあちこちで満開を迎えそうです。

まだまだ大勢で集まることは避けた方が良いので、ひとりでひっそりと桜を楽しみたいと思います。

■ヒステリックな日々に疲れました

桜もほころぶおだやかな春を迎えているというのに、世の中は批判に満ち溢れギスギスした毎日を感じています。

やれ失言だ、やれ差別だ侮辱だ、情報が海外のサーバーに流れてて怖い、などなど。

テレビをつければ(最近はほぼテレビを観てませんが)キャスターは自分たちが正義だと言わんばかりに問題点をあげつらっている。

ネットにアクセスすれば、たくさんの正義の味方が、われ先にと批判の言葉を並べていく。

「パトラッシュ、僕はもう疲れたよ」

ひとつひとつのことに、それぞれ問題や考えなければならないことはあると思いますが、あまりにも煽動されすぎている印象があるのは私だけでしょうか?

ただでさえ新型コロナウイルスの影響で閉塞感につつまれているのに、こう世の中がヒステリックだと息苦しくなりませんか?

あるいは、新型コロナウイルスで閉塞的な毎日だから、みんなヒステリックになっているのでしょうか?
私は、こんな状況に辟易(へきえき)としています。

■WhatよりもWhyに目を向けよう

このヒステリックな状況を生みだしている原因の多くは、「マスコミによる情報の伝え方」にあると私は考えています。

しかし、私たちがこれを変えることはできません。私たちにできることは「受け取った情報をどのように処理するか」しかありません。

何かしらの情報を受け取った時に重要なのは、WhatではなくWhyに目を向けることです。

メディアが報じる「誰が何をした」をそのまま受け取るのではなく、なぜそういうことをしたのか、なぜそうなったのかを考えてみます。

「なぜ」がイメージできたら、「なぜ」を背景にして自分ならどうしただろうか? を考えてみると、ものごとの本質が見えてくることが多々あります。

「〇〇氏が失言!」→ けしからーーん!

ではなく

「〇〇氏が失言!」→ なぜそんな発言をしたのだろう? どういう背景がその人にその発言をさせたのだろう?

を考え、「なぜ」が見えてきたら

その状況において、自分ならどうしただろうか?

を考えてみると、見え方が変わってくることもあります。

とはいえ、これも難しいですよね。一度、悪者に見えてしまうと、なぜの部分も悪く考えているようにしか思えない。そうなると、得られる結論はそんなに変わらないかもしれない。

■人は基本的に善で動いている

そこでもうひとつ考えていただきたいのは、人は誰も悪意だけで生きているわけではない、ということです。

人はそれぞれ自分なりの「善」を持っています。それに基づいて生き、行動している。

ところがそれらの「善」は人によって評価軸が異なるため、ある人にとっての善は、別の人から見て「悪」に見えるだけ。

自分には理解できないけど、その人にはその人なりの「善」があり、それに基づいて行動しているはず。

その人にとっての「善」の源泉はなにか、なぜそれを善とするのか? そうやって考えていけば、世の中の見方はもっと変わるはずです。

ただでさえ閉塞的な世の中、ちょっと視点を変えていきたいものです。


【若林健一 / kwaka1208】
https://crssrds.jp/aboutme/


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編集後記(03/25)

●偏屈BOOK案内:宇田川勝司「謎解き日本列島」ペレ出版 2020
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4860646142/dgcrcom-22/


タイトル下に「全国各地の地理・歴史文化のナゾに迫る!」とある。ヘタなイラストと書き文字でごちゃごちゃな表紙カバー、手に取るのさえためらうヘタヘタデザイン。

ところがページを開くと、内容はすごくまともで、写真や図版をきちんと整えて、86件もの謎が要領よく解明されていて、なかなか面白かった。

「言われてみると気になって仕方がない。そんな日本各地の些細な謎を解き明かす! 聞いて納得、知って人に話したくなる知識が満載です」とカバー袖にある。

全国各地の地図にまつわる謎、全国各地の風景・光景にまつわる謎、全国各地のモノにまつわる謎、国各地の人々にまつわる謎、という構成。

全国にひらがなの市名が増えたのはなぜ? 古い順に並べると、青森県むつ市、福島県いわき市、宮崎県えびの市、茨城県つくば市、これが昭和以前。「平成の大合併」が進行すると、ひらがな表記の新市が全国に一気に誕生する。

たつの市、かすみがうら市、さいたま市、つくばみらい市などはどこにあるのか見当がつくが、みどり市、さくら市ときたら、何県にあるのかさえわからない。これらの市の住民は、この市名にアイデンティティが持てるのだろうか。誇りや愛着を感じられるだろうか。

広島の小中学生は学校の授業で「広島カープ」について学ぶというのはホントだろうか。ホントなのだ。

「ひろしま型義務教育創造特区」として国から認定を受けた広島市では「わたしたちの広島東洋カープ」というテキストを作成し、市内204の小中学校で、年間35時間のカープについて学ぶ授業が行われている。

この授業は生徒の言語運用能力を定着させ、思考力・判断力・表現力の向上を図ることを狙いとしている。

長野県民が長寿日本一の要因は? 野菜をよく食べることだ。成人はひとり一日当たりの野菜摂取量は344gで全国平均277gの1.4倍第一位である。また長野県は味噌の消費も日本一で、納豆や麹など発酵食品を食べる習慣が根付いている。

運動や生き甲斐も健康長寿には欠かせない。長野県の高齢者は男性が41.6%女性が21.6%でともに全国一。ボランティア参加率や旅行・行楽に行く人の割合も全国上位、「日々何かすることがある」という高齢者が多い。

標高が高い長野県は酸素が薄いため、住民の心肺機能が発達し、これが健康長寿の要因の一つになっているという説も興味深い。豊かな自然が広がり、新鮮な果物や野菜が豊富な長野県は12年連続で「移住したい県」の1位だって。いいな、塩尻の古籏さん。

東日本は赤、西日本は青、ポリタンクの色が東西で違うのはなぜ。知らなかった。JIS規格では灯油の劣化を防ぐため、高密度ポリエチレンなど紫外線に強い素材を使用することは決められているが、不透明であれば色に関する規定はない。

関東を中心とする東日本では、灯油を危険物であることを認識させる赤のポリタンク、関西では赤より青の顔料が安いということから、青のポリタンクが広まったそうである。

自転車の一世帯当たりの普及率、全国1位は埼玉県(1.3人に1台)、最下位は長崎県。埼玉県は平地率日本一だから自転車を使う機会が多い。わたしが乗り回すドッペルゲンガーは、わたしの足だ。健康の素だ。長崎は坂だらけで、自転車が交通手段とならない。代わりに軽自動車やバイクの普及率が高い。つづく。(柴田)


●こむら返り。たまーーーに、就寝中になって、寝ぼけたままテンパってしまい、どっちだっけ? と迷い、大抵逆方向に曲げて苦しむ。

いや、頭ではわかってるんですよ。伸ばすんですよ、ええ。でもつい、伸ばすということだけが頭に残っていて、バレエでいうところのポワント(ポイント・ポアント)みたいに、足の甲を伸ばしてしまう。

伸ばすとか考えるからややこしくなるのね。足の指を持って手前に引く! 引くのよ引く! さぁ私の頭は次になった時に覚えているでしょうか。また忘れた頃になるのでしょうか……。

『こむら返りの意外な原因』という記事を読むと、「スポーツなどで汗をたくさんかいたときの水分不足、電解質バランスの崩れ、血流障害」「足の機能が原因でふくらはぎに負担がかかりすぎているという場合が多い」

「足のアーチ構造がつぶれている」「お尻の筋肉が弱い」というのも原因なのだそう。

他の記事を読むと、「血液不足・血流の滞り・それらに伴う栄養不足」「冷え」「パソコンやスマホを長時間使うことも血を消耗し、巡りを悪くする」から要注意だって。(hammer.mule)

ポイントとフレックスについて
https://ameblo.jp/sanami111/entry-10690379561.html


カラダの代謝を上げる足首エクササイズ!
https://erecipe.woman.excite.co.jp/article/Hanakotokyo_184767/?page=2


こむら返りの意外な原因
https://medical.jiji.com/topics/2017


こむら返りの対処法。急な激痛をどうかわす?
https://www.cocokarafine.co.jp/oyakudachi/health/201904341.html


足がつったときの対処法って? 知っておきたい原因と治療方法
https://eonet.jp/health/article/_4102041.html

「硬直しているふくらはぎをそっと触ったりさすったり」