[5199] ガッシュ・アクリリック プラス/エッセイ漫画について思うこと

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《「完全不変色」なのはすごい!》

■グラフィック薄氷大魔王[694]
 強靭なアクリル絵具「ガッシュ・アクリリック プラス」
 吉井 宏

■万年思春期[009] 
 9話目「エッセイ漫画について思うこと」
 木村きこり




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■グラフィック薄氷大魔王[694]
強靭なアクリル絵具「ガッシュ・アクリリック プラス」

吉井 宏
https://bn.dgcr.com/archives/20210331110200.html

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リキテックスの新製品「ガッシュ・アクリリック プラス」というのを買ってみた(新製品っても発売は2018年。知らんかった)。
http://www.yoshii.com/dgcr/3dp-IMG_3134

従来のガッシュ・アクリリックは廃止になり、ガッシュ系のリニューアルということらしい。
http://liquitex.jp/products/gouache_plus/


僕的に「おお〜!」と思った特長は、「ひび割れにくく強靭」「濡れ色と乾いた後の色の差が少ない」「耐光性が高い」という点。

従来のガッシュ系アクリル絵具の弱点をなくした感じか。触れ込み通りなら、僕がフィギュアを塗装する用に開発してくれたみたいなもん。夢の絵具かも。

さっそく購入してテストしてみた。
http://www.yoshii.com/dgcr/3dp-IMG_3143

・練りが柔らかい。筆で触ると軽くて頼りない感触。粒子が泳いでる感。リキテックスソフトタイプと比べても、粘り気がなく腰が弱い感じの描き味。

・ガッシュ系とはいえ、従来の「いかにもポスターカラー的な不透明感」じゃなく、リキテックスに近い濃度。似たような色で塗り比べてみると、確かに不透明度は高い。リキテックスだと不透明色でも5〜6回かかるところを、アクリリック プラスは3回重ね塗りすればほぼベタ色になる。

・24色セットの全色がガッシュ的不透明色ではなく、色によって不透明度がかなり違う。「三原色」的に入ってる「プライマリー」や「蛍光」色など、ほとんど透明色なものもあるし、紺や茶など普通の色でも透明度が高い色がいくつか。

黒はマースブラックではなく、なぜか透明度が高いランプブラック。ガッシュっぽく使いたければ、ずいぶん買い足す必要がある。

・グリーンの一部に、どう見ても危険っぽい染料が入ってそうな気がした。危険とは、上に白とか塗ると染料が泣いて(染み出して)くるやつ。

試しに白を塗ってみたけど、今のところ染み出してこないっぽい。白はチタニウムホワイトで、不透明度が高くて良い。

・「リキテックスの絵具の中でも、最も顔料濃度の高い絵具」だそうで、発色が非常に良い。仕上がりはガッシュ感は薄く、リキテックスのツヤツヤじゃない色な感じ。

・完全乾燥すると確かに強靭。マット感が強い色は爪で引っ掻くと白く跡がつくけど、他はそこそこ強い感じ。従来のリキテックスの「ビニールっぽさ」は薄く、カチカチ。どっちにせよトップコートで固めちゃうけどね。

・「従来のリキテックスとは組成が違うので注意」と書かれてるが、たぶん顔料の種類のこと。いちおうアクリル絵具の範疇なのは同じっぽい。混ぜて塗ってみても特に不都合なさそう。

リキテックスをアクリジョンと混ぜて使ってたのに比べれば、特に冒険ではないと思うw

・カラーチャート。全50色中、蛍光色やゴールドや三原色的なものを除けば38色。大半が屋外でも退色しない「完全不変色」なのはすごい! 「ひび割れやすい色」は蛍光色のみとのこと。
http://liquitex.jp/products/gouache_plus/chart.pdf


……試し塗りした感じだと、リキテックスソフトタイプの全面置き換えではなく、アクリリックプラスをメインに、ソフトタイプで補強するのが良さそう。フィギュア塗装の本番と同じ状態でテスト塗装する予定。

普通にいろいろあるプラモ用の水性塗料を使えばいいんだけど、リキテックスは性質もよく知ってて使い慣れてるし、チューブと絵具皿の使いやすさ、それに、長年アーティストたちが使ってきてる、信頼できそうな耐光性も。

「耐光性=リキテックス ガッシュ・アクリリック プラスに耐光性試験機による400時間の照射テストを実施したところ(ギャラリー展示での100年間相当)、ほとんど退色が見られませんでした」だそう。

ところで、「耐光性のテストって、めちゃくちゃ眩しい強力なライトを当てるんだろうな」でイメージするのはやはりこれw
https://srdk.rakuten.jp/entry/2015/06/25/110000



【吉井 宏/イラストレーター】
http://www.yoshii.com

http://yoshii-blog.blogspot.com/


「クリスティーズでデジタルアートが75億円で落札」にはピンと来なかったけど、先週の「史上初のツイートが2億円で落札」のニュースで、NFTとかクリプトアートがどういうものなのか、ようやく実感できたかも。

NFTアートのマーケットプレイスに溢れてる「変なイラスト」に惑わされてたわ。アート市場を変えるとか言われつつ、明らかにバブルな「NFTアート」に関して、まだ態度を決めかねてるのだが……。

○吉井宏デザインのスワロフスキー

・十二支(丑年)OX
https://bit.ly/37gbNEN



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■万年思春期[009] 
9話目「エッセイ漫画について思うこと」

木村きこり
https://bn.dgcr.com/archives/20210331110100.html

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先日、ある月刊誌の新人賞に向けて描いた漫画が仕上がった。その雑誌には担当さんがいて、前々からネーム(漫画の設計図的なもの)を見てもらっていたのだが、「今回の新人賞の結果がダメだったら、雑誌のカラーと合わないと思って、もう持ってこないでください」と言われているので、プレッシャーが強くのしかかっていた。

賞を取らないとその雑誌との関係が次に進まないので、そこもつらいところだ。

どんなものを送ったかというと、ある体験を描いた、いわゆる「レポート漫画」なのだが、体験に行くまでの過程でのっぴきならない事を描いているので、ここでは割愛する。とにかく仕上がり、担当さんが受け取ってくれて今、安堵している。

さて、タイトルでも書いた通り「エッセイ漫画」について思うところがある。今回の「レポート漫画」でもそうなのだが、私は基本的に「エッセイ」の漫画や文章を書いて生活している。

しかし、とある人達からは「エッセイって自分の事を切り売りしてるから、失うものが多いですよね」なんて言う意見があり、そこに私は引っかかりを感じているのだ。自分の事を切り売りしているのは確かだが、一体何を「失う」と言うのだろう。そう思うと、なんだか気分が落ち込んでしまう。

私が初めて出したエッセイ漫画は、持病である「統合失調症」についての本だった。病気についての認知が広がればいいなと思い、担当さんと一生懸命に作った本だ。

私の周りには大人びた口調で、上から目線で暴言を吐く人間が多いため、あまり良い意見は言われなかったが、それでも店頭に本が並んだ時は嬉しかったものだ。

最近ではツイッターやインスタグラムで、エッセイ漫画を投稿する人も少なくない。私はたまにしか読まないが、面白い作品がたくさんあると思う。

そんな中で出た「失う」である。「馬鹿にされる」とその人は言ったのだが、フィクションだろうがエッセイだろうが、暴言を吐く連中は何を描いても言う。同じ漫画の業界の人間だろうがだ。

とても悲しいことだが、創り上げた作者の苦労や、言われた時の気持ちまで考えが及ばないのだろう。最近の私は、そういう人たちとはもう距離を取ろうと思っている。

そんな人たちの気持ちに届くぐらい、描き続けていかなければとも思っている。そして、色んな人のエッセイ漫画を読んでいきたいし、知っていきたい。

今回も自戒を込めて、この文章を書いています。新人賞が良い結果になるならないにかかわらず、エッセイというジャンルを応援するモノを創っていきたいです。


【木村きこり】
漫画家/美術家
ツイッター:chara_334466
インスタグラム:kikori_k_1112

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編集後記(03/31)

●偏屈BOOK案内:小嶋勝利「もはや老人はいらない! 長生きが喜ばれない介護社会の大問題」ビジネス社 2020
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「実は、コロナウイルス感染症は、世界中から生産性の低い高齢者を一掃しよう、という悪巧みがあるのではないか」というトンデモ話も聞こえてきた。

という筆者は、老人ホーム運営コンサルティングの専門家。今回の新型コロナ騒動の高齢者に関することは、特段のトピックスではない、という。

一定の年齢、これを筆者は平均寿命を超えた高齢者と捉えているが、この領域に入っている人は、いつ何が起きてもおかしくない。ヒトの死亡率は100%である。このあたり前を自分の日常として、簡単に受け入れられる人は多くない。

現在、電車の中吊り広告の風景から「介護」のキーワードがずいぶん少なくなったようだ。筆者の予感では、今後、「安楽死」「尊厳死」「看取り」といったキーワードが大量に出てくるはずである。

医療は病気や怪我を治すためにある。介護は人の生活を支えるために存在する。曖昧だから、割り切れないことばかりである。そこをどうやって折り合いをつけていくのか、ここが一番重要なことなのだと筆者は力を込める。

いまの介護現場は、机上の空論である介護保険制度に振り回されている。医療現場と同じで、エビデンスと証拠記録が重要であり、それ以外の仕事は余計なことであるとし、報酬の対象にはならない。

いくら懸命に取り組んでも、単に介護職員が忙しくなるだけで、積極的にやろうという会社はない。筆者は断言する。「これからの高齢者は『自分で口から栄養を摂れなくなった時点で人生は終了』となっていくはずである、と。

筆者の主張はシンプルだ。「要は、介護保険制度開始前の状況に戻せばよいだけなのだ」。

2000年以前は、介護保険制度はなかった。高齢者の大部分は、家族、そして病院が担っていた。自宅で生活がままならなくなった、要介護状態の高齢者に対し、治療の目的で病院に入院させ、死ぬまで病院で面倒を見る、ということが一般的だった。当時は「老人病院」と呼ばれていたような記憶もある。

さらに、社会的入院というキーワードがあったそうだ。わたしはまったく知らないが。つまり、病院が要介護高齢者の終の棲家だったのだ。だから、人は病院で生まれて病院で死ぬといわれたのだろう。

特別養護老人ホームというのもあって、どちらかというと福祉的な観点、つまり貧乏人やワケありで入所が必要な要介護高齢者に対し、行政指導で入所させる施設だったようだ。

それが、2000年の介護保険制度の導入を機に、医療と介護は別であるとされた。常時医師の管理下にいなければならない重篤な高齢者以外は、介護施設に移動するように、あるいは自宅に戻されるようになった。

要は「病院からいなくなってくれればよい」ということだ。病院や医師を増やすことなく、医療処置の必要な患者を効率的に治療していくには、医療依存度の低い高齢者、医療を施しても長く生きられない高齢者を病院から追い出すことが、一番の早道であった。

医療費の削減、医療費の有効利用のため、でもあった。そんな事情の下で介護保険制度が生まれたのだから、そこには「治す」というキーワードはなかった。筆者も「あるがままを受け入れて対応しなさい」「要介護高齢者に寄り添いなさい」というキーワードの教育を受けた。

介護と医療はまったく違う。だから、介護制度と医療制度を包括的に考えることには、慎重であるべきだというのが筆者の持論である。

もはや老人はいらない! 感嘆符付きでいわれてしまった老人のわたしだが、ああなったらこうしようなんて、先のことをなーんにも考えていない。♪ケ セラ セラ なるようになるさ。(柴田)


●「強力なライト」のリンクを見て、声を出して笑ってしまった。/きこりさん凄いですって! 私は自分のこと、あんまり書けませんもん。後記書いてますが、プライベートなことは、なるべく避けてしまいますもん。

エッセイマンガで離婚や浮気の話を描いている人も凄いなぁ。インスタやTwitterで匿名で吐き出した文章を、出版社が見つけてマンガになったりもしてる。

最近途中まで読んだのが(無料で読めるのが途中までなの)、『夫が娘の名前で不倫していました』。なぜかオススメに入っていたのだ。家のことも娘さんのことも顧みないネットゲーム好きの男性が、ゲームチームの女性と浮気する話。

「こんな人、世の中にいるの?!」「架空の話じゃないの?!」と疑ってしまうぐらいのダメ人間な男性だった。

検索すると、ネタ元がインスタだと知った。マンガの続きらしき内容もあったが、離婚の文字を見、結果がわかったので読まなくてもいいやと思ったものの、離婚後のマンション売却の話が気になりふと読んでみた。実印忘れて、その対応はないわ。本当にこんな人いるんだ……。(hammer.mule)

夫が娘の名前で不倫していました
https://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_CW01202135010000_68/

娘さんが高熱なのにゲームしてるなんて

こっちの方が長く読めるけど、一日一話なの
https://piccoma.com/web/product/57484/episodes?etype=E


satsuki__.mayさんのインスタ。「引き渡し当日」のところ
https://www.instagram.com/satsuki__.may/