万年思春期[009]9話目「エッセイ漫画について思うこと」
── 木村きこり ──

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先日、ある月刊誌の新人賞に向けて描いた漫画が仕上がった。その雑誌には担当さんがいて、前々からネーム(漫画の設計図的なもの)を見てもらっていたのだが、「今回の新人賞の結果がダメだったら、雑誌のカラーと合わないと思って、もう持ってこないでください」と言われているので、プレッシャーが強くのしかかっていた。

賞を取らないとその雑誌との関係が次に進まないので、そこもつらいところだ。

どんなものを送ったかというと、ある体験を描いた、いわゆる「レポート漫画」なのだが、体験に行くまでの過程でのっぴきならない事を描いているので、ここでは割愛する。とにかく仕上がり、担当さんが受け取ってくれて今、安堵している。





さて、タイトルでも書いた通り「エッセイ漫画」について思うところがある。今回の「レポート漫画」でもそうなのだが、私は基本的に「エッセイ」の漫画や文章を書いて生活している。

しかし、とある人達からは「エッセイって自分の事を切り売りしてるから、失うものが多いですよね」なんて言う意見があり、そこに私は引っかかりを感じているのだ。自分の事を切り売りしているのは確かだが、一体何を「失う」と言うのだろう。そう思うと、なんだか気分が落ち込んでしまう。

私が初めて出したエッセイ漫画は、持病である「統合失調症」についての本だった。病気についての認知が広がればいいなと思い、担当さんと一生懸命に作った本だ。

私の周りには大人びた口調で、上から目線で暴言を吐く人間が多いため、あまり良い意見は言われなかったが、それでも店頭に本が並んだ時は嬉しかったものだ。

最近ではツイッターやインスタグラムで、エッセイ漫画を投稿する人も少なくない。私はたまにしか読まないが、面白い作品がたくさんあると思う。

そんな中で出た「失う」である。「馬鹿にされる」とその人は言ったのだが、フィクションだろうがエッセイだろうが、暴言を吐く連中は何を描いても言う。同じ漫画の業界の人間だろうがだ。

とても悲しいことだが、創り上げた作者の苦労や、言われた時の気持ちまで考えが及ばないのだろう。最近の私は、そういう人たちとはもう距離を取ろうと思っている。

そんな人たちの気持ちに届くぐらい、描き続けていかなければとも思っている。そして、色んな人のエッセイ漫画を読んでいきたいし、知っていきたい。

今回も自戒を込めて、この文章を書いています。新人賞が良い結果になるならないにかかわらず、エッセイというジャンルを応援するモノを創っていきたいです。


【木村きこり】
漫画家/美術家
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