ところのほんとのところ[34]神様は[ところ]を散々翻弄する/所幸則 Tokoro Yukinori

投稿:  著者:  読了時間:7分(本文:約3,100文字)


ここ数年、[ところ]は作家としてピンチの連続だったと思うが、2008年になんとかそれを乗り切る手法を見つけた。時間軸を取り入れた新シリーズをスタートさせる事に成功した。そのあと、様々な人に作品を見せて少し自信をつけたけれど、世界的な評価を得るまではアートの世界じゃ通用しない。

そんな思いから、イタリアのZOOMの編集部にメールで新作を送りつつも、2008パリフォトで、EYEMAZING(オランダ発世界最高のフォトアートマガジン)の編集長に会い、その場で特集を依頼され、アニエスbのキュレターには早く個展をしたいわねと言われ、ZOOMの編集長からはイタリアで2009年の9月には個展しましょうよというメールももらった。だけど、その前後に起きたリーマンショックがアニエスbのみならず、世界を襲って、個展の話は頓挫した。

そして2009年の2月の末には、ミラーリングで完璧にしたはずのHDが4台入ったストレージボックスが読み取れなくなり、EYEMAZINGでの掲載すら危うくなった。その危機は回りの人達の献身的な努力で回避でき、EYEMAZINGの2009年6月号には無事載ったが、これまで6年間仲良くしていたZOOM社からは、ライバル誌で先に特集を決めた事が不快だったのだろうか、約束されていた特集も個展もなにも言ってこなくなった。



そんなものなのだとは、この1〜2年の日本の雑誌社の態度を見て気がついてはいたけれど、やっぱりがっかりした[ところ]だった。それでもその後見せに行ったギャラリー21では、一目惚れされたような状態で、個展をしましょうと言われた。「東京フォト2009」にも、ギャラリー21から出品していい感じであった。その直後に「世界1セコンド」の話が来た。世界のいろいろな都市を、[ところ]が「渋谷1sec」でやっている技法で撮ってきてくれという依頼だった。もちろんいずれはそうするつもりだったので、喜んで引き受けた。

問題は、そのころ政権が交代したという事で、[ところ]が依頼されたプロジェクトも国と無関係なものではなかった。役人や役所の仕事の仕方も見直しが入り、実施まで結局4ヶ月ぐらい延びてしまい、その間費用の立て替えを余儀なくされたり、官僚的で面倒な経費の処理などにストレスが溜まり続けた。

入金はしょっちゅう遅れ、やっていけるのかどうかピンチの連続。凄いストレスだった。加えて、[ところ]を凄く尊敬してくれて手伝ってくれていた弟子(?)みたいな存在の人が、突然豹変したかのように明け方とんでもない内容の携帯メールを送ってくるようになった。そんな時間なのに、返事がないとドンドン過激な内容にエスカレートして行く...。

そこに、前回でも書いたデータの消去事件が重なる。ホノルルに1secの撮影に行く直前だった。ちょっと頭がおかしくなりそうだった。それでも頑張って撮っていた。なんとか大丈夫だという朗報も届いた。[ところ]らしくもなく、毎朝きちんと朝食をとり、ワイキキを中心に撮影を始めた。すごく順調に4日間が過ぎて、いい写真がたくさん撮れている。

あと2日でハワイとはお別れで、また寒い日本に帰るんだなと思っていた。ホテルで寝ていたら、早朝(ハワイ時間朝6時)に英語と日本語で津波警報が流れた。その時[ところ]はタカをくくっていた。警報ってよくあるよなあってレベルで。朝ご飯を食べに、いつものレストランに6時半には降りて行った。食器がみあたらない。そこには透明なプラスチックのお皿が置いてあった。ああ、津波対策ってことなのかと思いながらも、しっかりパイナップルとパパイヤとベーコンとスクランブルエッグを食べた。

外は晴れていたので、海際ではない方向に撮影にでかけてみた。2時間程撮影をしてシャワーを浴びていたら、館内放送が流れた。避難勧告が出たそうで、もうじきエレベーターをストップするという。おいおい、冗談だろうと思ってたら、今度はもうじきホテルとしての機能をストップさせますとか言ってやがる。フロントから人が消えたようだ。エレベーターも動かない。

えーっと、神様は[ところ]を散々翻弄して、最後は津波に飲み込ませるというシナリオを用意してたのかな? とか不安になって、mixiで日記を書いて情報収集。角度的にハワイ島の裏に位置するオアフ島のワイキキは、そんな被害を受けないのでは? 海沿いの一階にいなければ大丈夫では? という書き込みをしてくれるマイミク達。ありがとう。少し安心しました。

最後には、津波が来たとき用に11階のベランダにカメラを用意して待っていたけど、たいした事は何もなかった。ホテル機能も午後2時(ハワイ時間)には戻って来てエレベーターも使えるようになっていた。なにも問題ない。ただ、帰りの空港のチェックインカウンターがもの凄い行列で、ハワイ発日曜朝の飛行機で帰るのはもうやめようと心に誓った。到着は時差の関係で月曜の夕方。

自宅に帰ってからの時差ぼけが凄かった。2日間はもとに戻らなかった。一番酷い時差ぼけはハワイと聞いていたが、これほどとは! 多分20才前後なら関係ないんだろうな。徹夜とか平気でする世代なら、と自分の年を痛感した[ところ]でした。

HDのデータはほぼ無事である事がわかり、データサルベージの会社に感謝。そして、なにより[ところ]の新作達を見たいと思ってくれて助けてくれたマイミク、リアル友、50人にとても大きな感謝を! 本当にありがとう。相変わらず、みんなの助けで生かされてると思う今日この頃。

時差ぼけが治ったころ、ニコニコ動画「写真家の異常な愛情」所幸則 1secが始まった。シグマの名物広報の桑山さんが出演で、しかもカメラショーの直前ということもあるんだろう。本当に最大の盛り上がりを見せた。シグマファンが半端なく見ていたようで、新製品(発売日未定)のDP−Xのβ版のボディが持ち込まれていたことも、みんなのテンションを上げた。ありがとうございました。桑山さん、シグマ関係者のみなさん。

そして、今週末(明日)は変則ですがゲストの都合上20時スタートになります。ゲストはロッキンオンジャパンのアートディレクター田中力弥さん。彼は半端ない写真の目利きなので、写真好きにはたまらない話になると思います。ぜひお楽しみに。最近は視聴者も130人近くなり、普通会員の方ではじき出される人もたまにいるので、よかったらプレミア会員で視聴された方が安全かと。
< http://com.nicovideo.jp/community/co60744 >

[ところ]今世紀最大(!?)の個展所幸則写真展「PARADOX」の開催がいよいよ近づいてきました。
< http://www.gallery21-tokyo.com/jp/exhibitions/2010/yukinoritokoro/ >
ここから詳細が見られますが、この個展のための大掛かりな撮影、特殊な展示は実物を見ないととわからないので、ぜひ足を運んでください。オープニングパーティは4月7日で、ギャラリートークもあります。詳しくはまたお知らせします。

【ところ・ゆきのり】写真家
CHIAROSCUARO所幸則 < http://tokoroyukinori.seesaa.net/ >
所幸則公式サイト  < http://tokoroyukinori.com/ >

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by G-Tools , 2010/03/12