ところのほんとのところ[144]モンダイの教え子たち
── 所 幸則 Tokoro Yukinori ──

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人と人の繋がりってなんだろう。

家族ってなんだろう。助け合ったり見守ったり遠くに離れていても気にかけたりするもんだよなあと思うんだけど、いろんな家族がいるよね。

大学へ通うためいったん実家を出てからは、ほとんど連絡を取らなくなる人もいれば、離れて住んでいる親に毎日電話で10分はコミュニケーションを取る人もいる。

大学も実家から通える圏内に入って、親とのコミュニケーションをとり続けて、仕事も同じく実家の近く、もしくは実家が仕事をやっていればそれを手伝い、後を継いで行こうという場合もあるし、それこそ家族の数だけいろんなかかわり方があるんだろうな。

友人関係にしても、学校時代からの付き合いが死ぬまで適度な距離感で続いていくということもあるんだろうし、社会人になってから知り合って、友人になっていくケースもあるだろうし。

周りからは一見友人っぽく見えても、実は自分が付き合っておくといいことありそうな人に、ただくっついてるだけなんて人もいるしね。同じ趣味で仲良くなっていく場合もあるし、これも人の数だけ考え方があるだろう。




仕事の繋がりになったりすると、もっとややこしい話がいっぱいで、その人が調子がいい時は友人ぶった人がやたらと増えて、調子が悪くなったなと見るとさっと引いていく、そんな例を山のように見てきた。

だけど、これは家族、親族、友人みんなに当てはまることのかもしれない。そして、今の[ところ]の場合、教え子もいる。

教える側に回る気もなかったが、ある程度年齢を重ねてくると、周りにこういうときどうしたらいいんですか? などと聞いてくる人もいて、気がつくとそれがグループ化していたり、気がつくと利用されていたりもして、そんな時は自分からさっさと離れていったものだ。

その頃から学校で講義をしてくれないかと、いろんな地方の専門学校や大学から話が来た。知ってる事や体験談がちょっと特殊だったので、そういう話をしている頃に、私塾的に写真を教えて欲しいと言ってくる人が出てきた。

[ところ]は、今までの大学ではできないタイプの教え方を試してみたかった。最初はリアルに教えるのは6〜8人、スカイプや宅ファイル便など、ネットでやり取りをしながら教えるのに最大5人ぐらいで実験的に始めてみた。

これが思ったより効果的で、[ところ]の母校の4年生より上のレベルまで到達する者も出てきたり、大掛かりなプロジェクトの審査に通る者もいたり、非常に厳しい写真集編集者に気に入られる者も出てきたりと、なかなか調子が良かった。

やがて、老いてきた両親を見守るため、実家近くに住居を構えることになった。東京半分、香川半分の生活が始まった。香川で何かできないかと考えた結果、私塾の簡易版的な教えかたで「フォトラボK(香川をアートとして写真で表現する)」という講座を作った。

「フォトラボK」活動は、香川の写真におけるアートレベルを上げたように思う。今では京都、岡山、高知、広島、兵庫からも来る人もいる。1講座半年で、今8期生を指導しているところだ。

ただ撮って上手くなりましょう、上手く見える技術は教えます、というのがほぼメーカー系のフォトスクールのやり方だが、「フォトラボK」はそれらとはまったく違う。しかし、必ず上手くなる。

学びだけでは、内面まで表現できるようにといくら言っても、表面的なところしか写せない。実際[ところ]のやり方で教えようとしても、いわゆる自称写真家に教わった人はなまじっか上手く撮れるので、[ところ]の言うことを理解しようとしないので、意外と苦戦する場合もある。

「フォトラボk」を続けるにあたって、修了生のために作ったグループが「kラバーズフォトグラファーズ」だ。

最初の頃こそずいぶん盛り上がっていたが、今では上手くなったからフォトコンに出したりして、多くの人がお手軽に賞や商品をもらって喜んでいる。

カメラメーカーにとってはありがたい客になっているだろう。コンテストの主催者にとっても応募者が少ないと困るので、助かっているのではないかな。

しかし、アートとしての道を追求しようという人は激減している。多くの人は、ある程度上手くなったらもう充分なんです。もともと半年間で数千円の受講費なんだから、充分モトは取れたって考え方なんだよね。

そして「フォトラボk」設立の直後に、大学に請われて客員教授になったのだが、[ところ]が後輩でもある学生にしてやりたいことは、ほぼできていない。というのが今の[ところ]の立場である。

少子化もあり、学生はお客様扱い。もともと真剣に写真でやっていこうと思っている学生はせいぜい15〜20%。これが美大・芸大の実情である。残りは社会に出るのを4年後回しにしたい学生だ。

[ところ]の私塾に来る生徒とは真逆なのだ。ちょっと情けないのが本音だが、本気でやりたい人もいるのがかわいそうで残念だ。大学にも、特別クラスとか何か考えてくれることを望んでいる。

ところで、親と子の繋がりを大事にしたいと思って散歩などを始めたことがきっかけで生まれたのが、新作のシリーズ「お散歩ジャンプ」である。このことに関してはまた写真集計画の前にでも語ろうと思う。


【ところ・ゆきのり】写真家
CHIAROSCUARO所幸則  http://tokoroyukinori.seesaa.net/

所幸則公式サイト   http://tokoroyukinori.com/