気になるデザイン[45]グリーンランド航空の飛行機はなぜ赤い?/津田淳子

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なんだか毎日、ジメジメムシムシ。不快な天候が続きますね。通勤や外出時の不快さをちょっとでも軽減しようと、「今、熱帯雨林に旅行に来てるんだ」とか「西表島を縦断しているんだ」とか、熱帯や亜熱帯地域へ旅している想像をしながら歩いているんですが、いやぁ、そんなことしても、不快なものは不快ですね(苦笑)。

さて、先月上旬、そんなジメジメムシムシとは無縁の地、グリーンランドに行ってきました。

グリーンランドというと、みんな「それどこ? 何しにいくの?」と怪訝な顔をされました。グリーンランドにすごい印刷工場があるわけでもなく、紙をつくっているわけでもなし。というわけで、仕事ではありません。まったくの道楽旅行です。

私はデザイン、印刷、紙、加工などにめっぽう興味があり、そんなことに関連する書籍をつくる仕事をしているわけですが、それと同じくらい好きなことに「島を旅する」ということがあります。日本国内の島に行くことが多いのですが、年に一度は海外の島へ行くことにしています。

そんな島好きの私にとって、いつか行ってみたいと思っていたのが、世界最大の島「グリーンランド」。グリーンランドより小さい陸地は、全部「島」なんですよ。知ってました?



グリーンランドへは、日本からの直行便はなく、まずヨーロッパのどこかの都市へ飛び、そこからデンマークのコペンハーゲンへ。そしてそこからグリーンランドのカンガルサックという、以前米軍基地があった、グリーンランドのちょっとだけ内陸部に降り立ちます。私はオランダのアムステルダム経由で行きました。

グリーンランドへは、グリーンランド航空という航空会社しか就航していないので、必ずこの飛行機に乗ります。コペンハーゲンからもそうだし、グリーンランド国内も必ずこの飛行機。

グリーンランド航空の飛行機、コペンハーゲンとの行き来は100人超の中型機で、グリーンランド国内は、国内空港の滑走路の長さから小型のプロペラ機が就航しているんですが、そのどれも、機体は真っ赤。飛行機はわりと白が主体になった機体が多い中、この赤い飛行機は見た目にもすごくかわいくてステキなんですが、そんな華飾の意味だけで赤にしてるわけじゃないそうなんです。
では、どうしてかわかりますか?
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答えの前に、グリーンランドのことをちょっとご説明します。グリーンランドは日本列島の6倍くらい大きな面積を持った島で、その8割以上が万年雪とスノーキャップ(氷床)と呼ばれる氷河の塊で覆われています。今は夏なので、島の沿岸部は雪が解け、岩や砂地、湿地などの陸部が見えていますが、短い夏を終えると、そこもすべて雪で覆われてしまいます。

・スノーキャップ
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・スノーキャップが崩れてフィヨルドを通じて海に流れ出た氷山。これで高さ100mくらい
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ちなみに、そんな雪や氷山だらけのこの島がなぜ「グリーンランド」なんていう、緑豊かな大地みたいな名前かというと、西暦982年ごろ、ヨーロッパ人として初めてグリーンランドに入植した、通称「赤毛のエイリーク」という人物がいて、エイリークはそれ以前に「アイスランド」にも上陸し、その際「アイスランド」と命名したが、その「氷の島」という名前から、入植希望者が現れなかったそう。

そこで、グリーンランドに上陸した際、今度はたくさんの入植希望者が現れることを願って、「緑の島 グリーンランド」と名付けたとか。うーん、その名前にだまされてこの地に来たら、ショックだろうなぁ......。だって木はほとんどなく、緑といっても、こけとか小さな植物が短い夏の期間にちょっとあるだけだもんなぁ......。

閑話休題。なぜ飛行機が赤いのかということに戻ると、この雪と氷の覆われた白い大地に、万一、飛行機が墜落した場合でも、飛行機を見つけやすいように赤にしているのだとか。確かに白ベースの機体だと、空から探しても見つけづらいですな。見た目のステキさも大事だけど、こうした切実な理由も、色を決めるときの理由として重要な要素ですよね。

そんなグリーンランド航空の「安全のしおり」には、寒いところならではのことが載っていました。もし不時着などした場合、多くの飛行機の安全のしおりには、エアジャケットの使い方や、安全姿勢の説明、機外への脱出方法などが説明されていますが、グリーンランド航空では、それ以外に、寒さ対策の方法が説明されていました。
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座席シートカバーをとって足に巻いて、凍傷を防げってことでしょうかね。確かに少しでも温かくしないと、救助を待てそうにありません。でもこの安全のしおりのイラスト、顔がかなり簡単だなぁ(笑)。

まあ、機体の色は「万一」のときの備えですが、冬は雪に覆われ、夏になっても陸地は岩や砂など、土地自体にあまりカラフルさがないグリーンランド。そのせいなのか、家や車がめちゃくちゃカラフルです。
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どうしてこんな色なのかと、現地の人に聞いてみたのですが、「昔は家は赤ばっかりだったんだけど、最近は、他の色に塗るのが流行ってる。その方がきれいじゃな?」と、おっしゃっていました。雪の中にピンクや黄色、水色の家が建っている風景、なんか絵本に出てくる景色のよう。

こんな、日本とは全然違う風景に出会えたグリーンランド、いやぁ、めちゃくちゃ面白かったです。もちろん涼しいし。日本人は年間600人くらいが訪れるそうです。確かにちょっと遠いけど、白夜や氷山を見たりと、日本にいたら絶対体験できないことばかりだったので、機会があればぜひ行ってみて下さい。

最後におまけ。乗り継ぎのコペンハーゲンの空港で目にした、トイレのアイコン。なんかモジモジしてて微笑ましかったです。
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【つだ・じゅんこ】tsuda@graphicsha.co.jp
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