気になるデザイン[88]付録作戦ますますエスカレート!
── 津田淳子 ──

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この5年くらいだろうか。女性誌やムックなどについてくる付録が凄いことになってますね。いわゆる「ブランドムック」という呼称で、トートバッグなどがついているものが多く出版されている。

私はそうしたバッグに興味がないので、「そんなにたくさんの種類を出して、それが凄いものだと何十万部も売れてるって、いったい世の女性はどれだけバッグが欲しいのだ!?」と首を傾げて見ている毎日です。

でも、千円台でブランドに使用料支払って、バッグつくって、雑誌部分も一応あって、それをパッケージングして......というところには興味津々で、どんどんエスカレートしていくさまを、興味深く眺めている。

そうした中で、ブランドバッグ以外の付録がつく雑誌やムック、書籍もかなり増えている。シリコンスチーマー(レンジでチンして手軽に蒸し料理ができる容器)とか、パウンドケーキ型とか、シリコン製のマフィン型とか、もうどっちが主体かわからないほど充実した付録ばかりだ。




シリコンスチームなべつき 使いこなしレシピBOOK
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4072751685/dgcrcom-22/
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Paris発、パウンド型で50のケーク
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4418090142/dgcrcom-22/
>

Paris発、Bob's Muffins
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4418110003/dgcrcom-22/
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2012年も、その付録エスカレートっぷりは収まるどころか凄くなる一方で、書店店頭は「雑貨屋か!」と突っ込みたくなるような様相だった。と書くと、私は付録反対派なのかと思われる人もいるかもしれないが、書店が盛り上がるのはうれいしことだし、次にどんな手が!? ということも楽しみなので、私は割と付録肯定派です。

デジクリのコラム、今年は今回が最後なので、2012年に発売された雑誌や本で、付録について驚いたものをいくつかご紹介したいと思います。

まずは物量で驚いたのは、『魚焼きグリルでかんたん本格レシピ』(2,100円)。こちらには、柄の短いフライパンのような「グリルプレート」がついている。
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4418120025/dgcrcom-22/
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これは魚焼きグリルで、付属のグリフプレートを使うと、魚を焼く以外にいろいろな料理ができるというもの。これで「石焼風ピザも焼ける!」らしい。いやあ、以前にパンケーキを焼くフライパンがついている本や石焼ビビンバをつくる石鍋がついている本もあったが、それと肩を並べるすごさだ。

次はちょっと付録としては見たことがなかったものがついている『毎日らくらく離乳食レシピ 赤ちゃんがパクパク食べてくれる〈ののじ〉新初めてのカトラリー付き』(2,625円)。
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/430961521X/dgcrcom-22/
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グッドデザイン賞を受賞したという、赤ちゃん用のスプーンやフォークが3本ついた本。赤ちゃん用の付録というのもそうだし、グッドデザイン賞を受賞したようなものがついてるというのも、あまり見たことがない感じだ。

びっくりした付録といえば、もうこれが一番じゃなかろうか。結婚情報誌『ゼクシィ』の9月号に付録された「乙女すぎる ドライバーセット」、そして同じく『ゼクシィ』の10月号に付録された「そのまま使える婚姻届け」と「【妄想用】にんまり婚姻届」だ。

『ゼクシィ』9月号
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B008DHYEV8/dgcrcom-22/
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『ゼクシィ』10月号
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B008PUN15S/dgcrcom-22/
>

『ゼクシィ』は今年の3月号付録「素敵すぎる印鑑ケース」以降、「な、なんだそりゃ!?」という付録を毎号つけていて驚かされているのだが、上記ふたつがその中でもすごい。乙女すぎるドライバーセットって、もうその字面だけみてもわけがわからないですよね(笑)。結婚して引っ越ししたら、いろいろ組み立てたりするのに必要ってことのようだけど、いやいやいや、そんな連想ゲームっぽい付録なんですか(笑)。

あと、これは予算的には他の付録に比べてかなりリーズナブルだが、その発想に驚いたのが10月号の婚姻届。「婚姻届けって、役所でもらう以外に、私製のものでもいいんだ!」っていうのも驚きだった。

そして「役所に行けばただでもらえるものをどうして付録するんだろう?」とも思ったのですが、「その役所に行く時間がなかなかとれないんだよ」という声を聞いて、なるほどねぇと思ったものでした。

【妄想用】の方は、「相手の呼び名」とか「毎日のキスの有無と回数」などなど、ちょっと恥ずかしくなるような記入項目があって、まあ何を妄想するのやらという付録だが、ネットでもかなり話題になっていた。

最後の一冊は、『太白&太香ごま油でもっとおいしく』(1,155円)。
< https://www.takahashishoten.co.jp/shopping/978-4-471-40048-4.html
>

これ、ネットで検索すると、単なるレシピ集の書籍なのだが、先日、成城の三省堂書店で買ったものには、この本のテーマとなっている「マルホンのごま油」が3種類付録されていた。

「うわっ! とうとう食べ物がついたか。でも、食品衛生法とか賞味期限とかいろいろ大丈夫なのかな?」と思っていたのですが、このごま油、「サンプル差し上げます」とパッケージに書いてある。

うーむ、たぶんそうした法律とか賞味期限とか流通上のなにかとかをクリアするために、付録がついてるんじゃなくて、サンプルをさしあげます、という体裁で、付録してるんだなぁ、なんて考えた次第。版元のサイトにも付録については全然言及されてないものね。

とまあ、今年も本当にいろいろな付録がついたものだ。出版物は、流通網が非常にしっかりしていることもあって、こうして本に付録してものを売るというのは、けっこういいルートなんだろうなとも思う。

本好き、造本フェチとしては、来年もどんな付録がついた本や雑誌がでるのか、また楽しみである。

【つだ・じゅんこ】tsuda@graphicsha.co.jp  twitter: @tsudajunko

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