気になるデザイン[90]カバー3種付! 横尾忠則さんの本
── 津田淳子 ──

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今年最初の担当本『デザインのひきだし18』が発売となり、ホッと一安心しているところです。でも、各所にお手数をかけさせてしまって申し訳ない気持ちでいっぱいでもあるのですが......。

特に製本で膨大な時間がかかってしまい、その現場に伺ったレポートをブログにアップしていますので、「いったいどんな手間が?」と思われた方がいらしたらご覧ください。

ひきだし制作日記
< http://dhikidashi.exblog.jp/
>

さて久々に(すみません)、ブックデザインが気になって購入した本をご紹介します。『ggg Books別冊 横尾劇場 演劇・映画・コンサート ポスター』(横尾忠則・著/南蔦宏・文/DNPアートコミュニケーションズ・発行)ブックデザインは白井敬尚さん。
< http://p.tl/vDTq
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まずこの本を見て驚いたのが、帯の下に見えるタイトル部分がどうなってるの? ということだった。実際には、カバーに蛍光レッドのシール(タイトルが印刷されたもの)が斜めに貼られ、その上に蛍光グリーンの帯が巻かれているという仕様なのだが、横尾忠則さんの描いたカバービジュアルや、その中に配された(元のポスターに入っている)文字、それと本書のタイトルや惹句などとが渾然一体となって、横尾忠則さんの作品から感じる熱量のようなものが、本の外装から早くも伝わってきた。
< https://bn.dgcr.com/archives/2013/02/12/images/01 >

これが帯をとった状態。タイトルが入った蛍光レッドの部分はシールになっていて、カバーに貼られている。手に取って、カバーをとって表紙を見てみようとして、また驚かされた。カバーが三重にかかっている。
< https://bn.dgcr.com/archives/2013/02/12/images/02 >

一枚カバーを剥がすと、別のカバーが出現。そしてこちらもタイトルが刷られた蛍光ピンクの部分はシールになっていて、カバーに貼られている。
< https://bn.dgcr.com/archives/2013/02/12/images/03 >

さらにもう一枚めくると、三枚目のカバーが表れる。蛍光オレンジのタイトル部分はやはりシール。
< https://bn.dgcr.com/archives/2013/02/12/images/04 >

どれも横尾忠則さんが手掛けられたポスターの一部が印刷されたカバーに、タイトル部分は蛍光色のシールになっていて、カバーの上に貼られている。このランダムな貼り方といい、どう考えても手作業で貼っているのだろう。

カバーにちょっと呆然とし、改めて本を見回してみると、帯に「カバー3種付き。お好きな絵柄に付け替えられます。」と書いてありました。うーむ、気がつかなかった。でもこれ楽しい。

本文は、テキスト部分は薄いピンク色の本文用紙の紺色一色で印刷。これがちょっと官能的な感じまでして、本全体に効いている。南蔦氏の書くエピソードもおもしろく、一気読みしてしまった。

そして最後に気付いたのですが、本書のバーコード、すごいところに刷られてました。最初のカバーの蛍光レッドタイトル部分、これはシールが背から裏表紙まで繋がって貼られているんですが、その裏表紙部分に刷り込まれていました。蛍光レッドに白も引かずにそのまま墨でバーコード。

うちの会社だったら確実に「白を敷きなさい」と言われるだろうし、この印刷位置も「ダメ」と言われそう......。

とまあ、いろいろなところに驚かされた一冊。刺激を受けました。私ももっともっと精進せねば。

そうそう、ようやく発売となった『デザインのひきだし18』もベッカベカな蛍光色で書店店頭で目立ってる(はず)ですので、ぜひ見かけたら立ち読みでもしてくださいませ。

【つだ・じゅんこ】tsuda@graphicsha.co.jp  twitter: @tsudajunko
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