気になるデザイン[48]トムソンの謎/津田淳子

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あと数日で、『デザインのひきだし11』と、同時につくっている『印刷・加工DIYブック』が締切とあり、今年一番の忙しい週間を迎えています。というか、あと数日で終われるのか、正直なところかなり微妙です......。

とりあえず一瞬そのことは忘れることにして、実は先日、ずっと疑問に思ってた謎がすんなりわかった、ということがあったので、そのお話を。

2年ほど前に『デザインのひきだし4』で、紙の型抜きについて特集をした(「折り、抜き、紙の加工でこんなことできる!」現在完売)。それまでもなんとなく疑問に思っていたのだが、このとき強く「どうして、そんな名前なんだろ?」と思ったのが、「トムソン刃」とか「トムソンで抜く」とか、型抜き加工の現場で頻繁に使われる「トムソン」という言葉。

板に刃を埋めて作る抜き型をトムソン刃と言ったり、その抜き加工自体をトムソンとか、トムソン抜きとよんでいて、本のように分厚いものを型抜く場合をのぞいて、かなりの割合でこのトムソン抜きによって、紙の型抜きがなされている。

その取材の際には、何人もの紙工会社のひとに聞いたものの、なぜそんな呼び方なのかはわからず仕舞い。



赤瀬川原平さん方が提唱された「超芸術トマソン」に語感が似ているのも気になるが、もちろんそれとは全く関係なく......。
・トマソン
< http://ja.wikipedia.org/w/index.php?oldid=33322656 >

ちなみにもうひとつ「ビク抜き」という言葉もよく耳にした。しかしこちらは、「ビク」の由来を知ってる人が多く、理由はすぐに判明。「ビク抜き」というのは、トムソン刃をセットした打ち抜き機に手で一枚ずつ(場合によっては数枚ずつ)紙を手送りして打ち抜くのだが、その機械がビクトリア印刷機という活版印刷機を元にした機械だったので、その名がついたのだ。

閑話休題。トムソンの話に戻る。

8月下旬ごろ、大日本印刷が運営する「ドリームページ」というフォトブック作成サービスのページに、『秀英体今昔』という、活字からデジタルフォントまで使われている書体「秀英体」が生まれた印刷現場(秀英舎=現在の大日本印刷)の今昔をまとめた写真集がアップされたのをtwitterで知り、興味津々でさっそく見てみた。

・秀英体今昔
< http://dreampages.jp/gallery_search.html >

貴重な写真がたくさんで、ぜひ大判書籍として印刷してほしい! と思ったほどだったが、この中にひとつ気になる言葉を見つけた。「トムソン型自動活字鋳造機」というもの。ん? トムソン??

twitterでこのドリームページのことを知ったので、すかさず「11ページに出てくる「トムソン型自動活字鋳造機」の「トムソン」って会社名でしょうか?」と書いたところ、何人もの方からお返事が! そしてここ2年くらい謎に思ってきたことが、すんなり解決したのだ。

なんと、その名もズバリ「トムソン社」という会社があり、先程の活字鋳造機はもちろん、打ち抜き機も製造しており、現在も絶賛発売中の機械なのだった。
< http://www.thethomsongroup.com/ >

うーむ、やはりというか、当然か。社名か人名から来てるんじゃないかなぁと薄々は感じていたが、トムソン社に辿り着かなかった。

現在、日本ではこのトムソン社製ではない打ち抜き機を使っていることが多いが、打ち抜きの代名詞としてトムソンという言葉が残っているんですね。

そして、トムソン型の活字鋳造機を発明したジョン・S・トムソン氏についての記述があるページも、twitter上で教えてもらえたので、こちらにもURLを。
< http://www.apa-letterpress.com/T%20&%20P%20ARTICLES/Typecasting/Thompson%20casster.html >

いやぁ、なんか頭の中がすっきりした! よし、この調子で仕事に励むぞ(と、自分を鼓舞する)。無事に2冊の本の編集作業が終われてれば次号(2週間後の火曜日配信のデジクリ)でお目にかかりましょう!

【つだ・じゅんこ】tsuda@graphicsha.co.jp

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