ところのほんとのところ[57]頭の上が軽くなった故郷での日々/所幸則 Tokoro Yukinori

投稿:  著者:  読了時間:6分(本文:約2,500文字)


[ところ]は久しぶりに高松に帰ってきた。高松は生まれてから18才になるまでの間過ごした場所であり、両親が住んでいる場所でもある。気がつくと両親がずいぶん年老いていたことに衝撃を受けた。大人になってからは、両親とおだやかな日々を過ごしたこともあまりなかったからということもあった。

人生はいつの間にか終わりが近いことを突然認識させられる。10代20代の頃は時間を長く感じていた。一桁の年齢の頃は、一日が無限に感じた夏の日もあったことを思い出す。

87歳と85歳という完全な老人になっている両親と、数日間水入らずで過ごした。[ところ]はいままで随分好き勝手な人生を送ってきた。それもこれも両親のおかげだということも、ここ10年ぐらいで素直に認識できるようになった。

だが、女優や音楽家有名人達、都会の風景をモチーフにしてきた[ところ]にとって、都会を離れることができなくなっていたし、地方がどんどん過疎化して、街に元気がなくなっていく姿を見るのもなにか嫌だったという感情もあって、故郷を避けていたのだと思う。

しかし、3.11以降[ところ]もなにか変化が起きたように感じる。今起きていることを正しく認識することは困難だ。なにやら、頭の上に重いもやもやが載り続けているような気がして仕方がない。



定期的にかけている親への電話のなかで、何日か帰ろうか? と言ったときに両親がとても喜んだので、親孝行は生きてるうちしかできないと思い帰ってきたのだ。

帰ってみて、いきなりの印象は[ところ]の頭の上が軽くなったということだった。両親とのゆったりとした時間、お互いの話。初めて味わうようなくつろぎと開放感だった。

実はあまり好きではなかった地元。だからこそ、東京に28年も住み続けているのであるし、たぶん一生、地元には寄ることはあっても住むことはないと思っていたが、少し考え方が変わるかもしれないと思った出来事だった。地元もいいなと思った。

そして、東京に帰ってきて、スカイプを使って写真を志す学生達とのポートフォリオビューイングを行った。こちら側は、[ところ]と、ギャラリー21のギャラリスト太田菜穂子さん、キュレーターの岡山修平さんの3人だ。

ポートフォリオは事前に送ってもらっていて、その作品をみながらスカイプを使って作者たちと対話するという試みで、その回りには30人ぐらいの観客がいるのだ。

この試みは、今後のみんなのためになると思ってオープンにした。[ところ]は写真家だから、写真に対してある程度厳しくなってしまうこともあるけれど、大田さん、岡山さんからは写真を志す人への愛に満ちた言葉がたくさん発せられ、参加したみんなはますますやる気がわいたのではないだろうか。

これは今年で2回目で、離れたところにいる人にも、東京在住の東京もしくは世界のアート事情を知る人との対話は貴重に違いないと思ってやり始めたのだ。

[ところ]は個人的にも同じようなことを所塾でやっている。働きながら写真を学ぶ人でも、お互い時間を調整してできるので好評を得ている方法でもある。
< http://ichikojin.sakura.ne.jp/tokorojyuku/ >

今後、東京にいるからとか、地方にいるからとかいうハンデはどんどんなくなっていくのではないだろうか。そして、3.11被災地の人達の中で写真を志す人が出て来るような状況になったときにも、役立てるのではないかと思っている。

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[ところ]のできる支援は、こういったことと、チャリティプリントぐらいかもしれません。
< http://www.tokoroyukinori.com/information/charity/ >

チャリティプリントですが、これは寄付をした人には少しは役に立ったという満足感もありますが、オリジナルプリントが何であるかを知らず、手に取った第一印象が、パソコン画面を通して予想していたものとは全く違ったことにうれしい驚きがある、とのメールが多く寄せられています。

 画面で見たときには、
 都会の無機的な印象を受けていたのですが、
 実際作品を見てみると
 奥行き感と、なにか温かさというか、熱と力を感じて
 そのギャップにびっくりしました。

写真が好きな人にとって、オリジナルプリントの世界を知る扉にもなったということがわかったのが、意外な副産物でした。

3.11はまだおわっていません。これから救済も支援も始まるといってもいいのです。みんなの力をあわせましょう。

さて、今日は「日本の問題」という舞台のチラシポスター用の撮影をしてきました。といっても、[ところ]の庭とも言える渋谷でですが、今回は東急東横線の渋谷駅で、女子高生が下りてくる車両を中心に撮ってみました。

これからの日本を担うのは当然若い人であり、若い人の記号・アイコンとして女子高生や女子中学生がわかりやすいだろうということでもあります。今、原発事故の放射性物質による汚染問題があります。一番被害を受けるのは若い世代、とくに18歳以下ということも重要な要素です。幼児乳児はもっと危ないのですが、街の中では小さく埋もれてしまうということもあっての判断です。

駅は様々な職業年齢の坩堝とも言える場所なので、自然といろいろな人も入ってきて都合がいいということもありました。かなり粘って撮影していたので、駅員に注意されるかもしれないと思いましたが、危ない人には見えなかったのでしょうか、何も起らなかったのは少し拍子抜けした[ところ]でした。

この撮影は、Twitterを始めた頃にフォローしてきた、劇団の主宰者であり映画のシナリオなどもやっている松枝くんに頼まれたものです。松枝くんはツィートの内容が面白くて仲良くなった友人です。11月の公演が楽しみです。

「日本の問題」は、小劇場の劇団が8劇団、学生劇団が6劇団、計14劇団集まって行なう企画公演です。それぞれの劇団がそれぞれの日本の問題と思うことを演劇にし披露するという、国家「的」演劇プロジェクトです。

【ところ・ゆきのり】写真家
CHIAROSCUARO所幸則 < http://tokoroyukinori.seesaa.net/ >
所幸則公式サイト  < http://tokoroyukinori.com/ >