境界線の歩き方[11]夢/想像を映し出す装置/出渕亮一朗

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私が芸術・工学系の大学生になったとき、担任の先生がクラスの全生徒に尋ねた。「君たち、将来どんな研究をしてみたいんだ?」ある学生が答えた。「夢を映し出せる装置とかできないかなぁとか考えてます」後あと思いだしてみる、と何か若気の至りみたいな発想だったななど思っていたのだが、なんと、まさにその通りの研究が出てきたようだ。

まず、下の参考で挙げているYouTubeの動画を見ていただくのが早いと思う。左側の映像から右側のもやもやした不思議な映像を人工的に作っているのだが、「脳活動からの再構築」というタイトルの、この映像の英文説明を噛み砕くとこんなことだと思う。

はじめにソースとなるハリウッド動画を被験者に見せながら、fMRIを使って脳波を測定記録する。数千ポイントで測定された脳波と映像の形、エッジ、動きの関係を翻訳して「辞書」を作る。つまり、脳波は直接映像を形作る訳ではないが、見ている映像と脳波には相関関係があるので、映像とその翻訳である脳波の対応辞書を作るということだろう。

次のステップでは参照実験として、まず、翻訳元となる新しい映画とそれを見た被験者の脳波を調べておく。YouTubeから18,000,000秒(500時間)の映像をランダムにダウンロードする。その映像を「辞書」を使って翻訳した合成脳波が参照実験脳波に近いものを100クリップ選び、その映像を平均したものが最終的なもやもやとした映像になるという訳だ。確かになんとなく元の映画に近いものとなっている。




ところで、「夢を見る」というけど本当に夢は「見て」いるのだろうか。つまり、生理学的に見ている時と同じ脳活動をしているのだろうか? あまり聞かないので純粋な研究はそんなにされていないのかもしれない。この実験システムを使えば、夢を見ている時の脳波を調べて本当に「見ている」のかどうかわかるかもしれない。

また何かを想像しているときはどうなんだろう? 目をつむって何かを強く頭に思い浮かべたときは? これもこの装置で確かめられそうだ。もしも夢を見ていたり想像したりするときの脳波が、ものを見ている時の脳波と似ているのなら、「夢/想像を映し出す装置」ができるわけだ。

夢を映し出す装置で思い出すのは、私が小学生の頃に見ていたイギリスのテレビ番組、「プリズナーNo.6(The Prizoner)」である。デジクリに10年くらい前に、このロケ地であるイギリス、ウェールズにあるPortmeirion Hotelを訪れた旅日記を書いたことがある。あるスパイが目覚めてみると「村」に拉致されており、ここから抜けだそうとするがどうしても逃げられず、話はどんどんカフカ的にシュールになっていく内容だ。

その中に夢を映し出す装置が出てくるのだが、なかなか面白いストーリーだったのを覚えている。こんな内容だ。今日も「村」の科学者はNo.6の秘密を探ろうと夢を映し出す装置を彼に取り付ける。初めは苦しむNo.6だったが、ラストは夢を自由に操れるようになり、形勢は逆転していく。

夢は研究室のスクリーンに大きく映し出されている。夢の中のNo.6はその部屋にどんどん近づいてくる。そうして両開きのドアをバーンと空ける。「村」の科学者達は思わず目の前のドアを見るが、もちろんなにも起こらない。No.6はベッドでニヤリとする。

参考:
・Reconstruction from brain activity
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左が元映像、右が脳波を元とした再構築映像。

・Reconstructions from brain activity: 3 subjects
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左上が被験者に見せた映像。下の3列は3人の被験者のもの。一番左がそれぞれの再構築映像。

・The Prisoner Full Theme & Opening Titles
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「プリズナーNo.6」のオープニングタイトル。Patrik Macgoohan扮するNo.6が組織をResign(辞職)したあと、何者かに拉致される。目覚めると不可思議な村にいた。

・きゃりーぱみゅぱみゅ - つけまつける
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関係ないけど、この夏、Pon Pon Ponで世界的にヒットした、きゃりーぱみゅぱみゅの新曲のPVが公開された。このクリップの「夢分析」してみた。「虎の威を借る狐」を英語で言うと、「Ass in a lion's skin(ライオンの皮を被ったロバ)」となる。左右で踊っているライオンは彼女の付け睫毛を付けた目なのだろう。

【出渕亮一朗】ryoichiro.debuchi(a)gmail.com
コンピュータ・グラフィックス、インタラクティブアート分野のアーティスト
グラフィックス分野のプログラマー
< http://www.debuchi.com >