デジアナ逆十字固め...[125]Japan Color 2011のICCプロファイル/上原ゼンジ

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現在、日本印刷産業機械工業会のJapan Color認証制度のサイトでJapan Color 2011のICCプロファイルが無料でダウンロードできるようになっているので、今回はそのJapan Colorのお話。

Japan Colorというのは日本の印刷の標準だ。1995年に始まり今まで何度かの改訂が行われているが、Photoshop等アドビ製品にCMYK変換用のプロファイルとしてバンドルされているので、その名称に見覚えのある人も多いと思う。

このJapan Colorというのは、始まった当時はあまり評判は良くなかったと思う。元々標準がなかった時代、各印刷会社は顧客の望む通りの色で印刷をするというのが当たり前で、そこに勝手な標準を持ちだされても「うちにはうちのやり方があるんだ」という話になってしまう。それに最初の頃の標準は印刷会社にとって納得のできるようなものでもなかった。

ただ、標準化されることによるメリットというのはたくさんある。同じデータを使って違う印刷会社で刷った場合に、標準に準拠していれば同じように印刷されるということだ。たとえばあるチェーン店のチラシで、テキスト部分だけを差し替え各地方で印刷をしたいなんていう場合に色を揃えやすい。一箇所で刷って全国に配送するなんていうシステムよりは、はるかに効率がいい。

それから、制作段階で色のシミュレーションをすることも可能だ。とりあえず刷ってみてから色校正をしようというやり方ではなく、ディスプレイやプリンタを使って仕上がりの確認をするわけだ。どのように印刷するのかが、標準によりフィックスしていればシミュレーションのしようもあるが、刷ってみないと分からないというような状況では、データ段階でのシミュレートも不可能だ。




このシステムがうまく機能すれば、何度も色校正のやりとりをする必要もない。手元のプリンタでプルーフが出力できるのであれば、海外でデータを作成したり、海外で印刷したりすることもできる。

海外にもこういった印刷の標準がある。欧州のFOGRAや北米のGRACoLがそれにあたる。たとえばドイツのどこかの印刷会社向けのデータを、日本のどこかの印刷会社向けのデータに直すのは大変だが、FOGRAからJapan Colorへの変換であれば計算もしやすい。もちろんCMYKからCMYKに変換するのではなく、元のRGBから変換したほうがクオリティーは高くなるわけだが......。

現在はただ印刷の標準を作るだけでなく、実際にJapan Colorに準拠した印刷ができるかというテストをし、合格した印刷会社を認証するという制度も生まれている。勝手にJapan Colorのシミュレーションをしても、実際にJapan Colorで刷ってもらえなければ意味はないので、これは発注側として歓迎すべき動きだろう。

●「Japan Color 2001 Coated」との違いは?

今回無料配布されるようになったJapan Colorのプロファイルは、ジャパンカラーの2011年版に準拠したもの。一方ユーザーに馴染み深いプロファイルであるアドビ製品にバンドルされている「Japan Color 2001 Coated」は、10年前に策定された「ジャパンカラー色再現印刷2001」に基づいたものだ。

Japan Color 2001 CoatedとJapan Color 2011の違いとしては、前者がアドビシステムズ製のプロファイルであるのに対し、後者は日本印刷機械工業会(JPMA)のプロファイルであるということ。

また前者がフィルム/PS版からの印刷を基準としていたのに対し、後者はCTPによる印刷向けになっていることが上げられる。どちらも枚葉機でコート紙に刷った場合用のプロファイルなので、大きな違いがあるわけではないが、10年間の技術の進歩が反映された修正が加えられており、変換結果にも違いが出る。

印刷機のプロファイルというのは、印刷機でカラーチャートを刷り、そのパッチ一つ一つの測定値を元に作成するのだが、エディットの仕方により変換結果も異なる。まずRGBは3次元データだが、CMYKは4次元データだというのが大きな問題。このことにより変換結果を一義的に定義することはできない。

それからCMYKの色再現域はかなり狭くなるので、そのまま表現できない色は近い色に置き換えなくてはいけない。この場合に色相が変わらないようにするのか、彩度が落ちないようにするのか、といったことの方針を決めてエディットする必要がある。つまりそこに人間の感覚的なものが入り込む余地があるということ。同じ測定値を元にしても違うプロファイルが出来上がるというわけだ。

基本はチャートの測定値を元にして色が近似するということが重要なのだが、色は合っても階調再現に問題が出てしまう場合がある。その階調をなだらかにする作業はスムージングと呼ばれるが、このスムージングをかけると今度は色差が大きくなる。そこでいい落とし所を見つけてバランスをとらなくてはならないが、これもまた人間の感覚に依存する。

今回Japan Colorのプロファイルを作成するにあたっては、プロファイルを作る技術者や学識経験者だけではなく、印刷機メーカー、インキメーカー、用紙メーカー、印刷会社、広告代理店など、多くの人達が検証に関わったそうだ。そういった様々な意見が一つのプロファイルに集約されているということだ。

アドビのプロファイルが普及したのは、アドビ製品に無料でバンドルされているということが大きい。今回のプロファイルがどういった形で普及していくのかはまだ分からないが、10年間の技術の蓄積でいろいろと改良が加えられたものなので、興味のある方はぜひ検証してみてください。

結果が良ければそのまま利用が可能。ただしこのプロファイルはあくまでの枚葉機でコート紙に刷った場合のものなので、用紙や印刷方法が違えば、色も変わってしまうので注意が必要。

印刷物を作る場合の用紙の選定には、値段や風合いなどさまざまな要素が絡んでくるが、このジャパンカラーに準拠したワークフローを導入すれば、かなりイメージに近い色再現を得ることができる。

ディスプレイでオーケーであれば、プルーフを出力してもほとんど修正の必要のないデータを作ることもできる。色校正の回数が減ることはコストや時間の削減にもつながる。「Japan Color認証制度」のサイトにもいろいろと情報があるので、興味がある方はご覧ください。

・Japan Color認証制度
< http://japancolor.jp/ >

・Japan Color 2011のICCプロファイルダウンロード
< http://japancolor.jp/icc.html >

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