デジアナ逆十字固め...[129]そして、ちょっかいを出しまくる
── 上原ゼンジ ──

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私が実験的な写真を撮り始めたのは、このデジクリの連載からだ。2006年の4月の「レトロなレンズを求めて」というのがその始まりだから、もう7年になるわけだ。暗室をやっていたころから実験的なことはやっていたけれど、毎週やってくる締め切りに合わせてネタを絞り出すことにより、どんどんその世界が広がっていった。

次々といろんなことにちょっかいを出してないで、少しやることを絞ってみよう、などとたまに思ったりもするのだが、私は一生こんなことをやり続けてゆくのでしょう。たぶんそういう性分だからもう直らない。ただ興味のある方向には粘着的な力を発揮できるから、自分を放置して、好きにやらせておくのがいいのかなと思っている。




●タイムラプスをやってみた

本当に次から次へとやりたいことが出て来てしまうのだが、昨日はタイムラプスをしてきた。タイムラプスというのは、微速度撮影のことで、5秒に一回とかで撮影した写真をつなぎ合わせることにより、時間を圧縮させて見せるムービーの技術。雲がすごい勢いで流れたり、蝶がサナギから羽化する様子を早回しで見せたりするアレのことです。

アレがiPhoneやデジカメで簡単にできるようになってきた。iPhoneであれば、「TimeLapse」などのアプリケーションをインストールすればいいし、これから発売されるデジカメには、あたりまえのように搭載されるようになるのでしょう。

基本は何秒毎に撮影し、どれくらいの時間撮影をするのか設定をするのだが、単にJPEGで大量に撮影するのではなく、ムービーファイルとして記録できるというのがポイント。雲の動きがもうちょっと速い方がいい、とかの確認がすぐにできるし、ファイルが重くならない。そしてパソコンに取り込んでの編集作業が不要だというのがありがたい。

ムービーをやるということに対し、写真を裏切るような後ろめたさがあるのだが、「これは写真をつなげたものだから、ただの動く写真だよな」と自分を納得させやすいところがいい。

まあムービーって元々そうなんだけど、このタイムラプスは、より写真を撮るという行為に近い感じがする。6秒分のムービーを撮るのに14分も待っていなければならないので、「そんなヒマなことは、オレには無理!」と最初は思ってたんだけど、なかなか面白くてハマってしまった。宙玉レンズと合わせるとなかなかいい感じになる。

●ちょこっと動くシネマグラフ

さらにシネマグラフというのにもちょっかいを出し始めた。これは一見すると写真に見えるのだが、画面の一部だけが微妙に動いている映像だ。たとえば画面内にあるロウソクの炎だけが、チラチラと動いているとか、ポートレイト写真で片目だけが瞬きで動いているとか。その動きがGIFアニメになって、何度も繰り返される。

これを最初に見た時は面白いとは思ったけど、自分でやってみようとは思わなかった。しかし知人がセミナーで披露したデモンストレーションを見て、すぐに真似をしてみたのだが、これも面白かった。

とりあえず撮ってみたのは宙玉レンズを使ったロウソクの写真だが、一つの技術を知ると別の技法との組み合わせでいろんなアイディアが広がってくるのが楽しい。

今回は使い慣れたPhotoshopでシネマグラフに仕立て上げたのだが、これもまたiPhoneを使ってシネマグラフを作成するためのアプリがいろいろと出ている(Cinemagram、Flixel、Kinotopicなど)。

Photoshopだって、以前は動画をサポートしてなかったから出来なかったようなことが、今ではスマホで簡単にできてしまう。動きを出したい部分だけをタッチパネル上でこするという操作性の良さもいい。

◇シネマグラフの第一人者/Jamie Beck & Kevin Burg
< http://cinemagraphs.com
>

◇映画のワンシーンをシネマグラフに
< http://iwdrm.tumblr.com/
>

●3D宙玉の可能性

先日は「ステレオクラブ東京」の例会に参加させていただいた。ステレオ写真とは言っても最近はムービーも含まれるので、例会では二台のプロジェクターを使って映像を投影し、みんなで専用の眼鏡を使って鑑賞するという本格的なスタイルだ。

なぜ私が参加したのかと言うと、宙玉でのステレオ写真に挑戦し始めたからだ。facebookにアップされた宙玉写真を見た「ステレオクラブ東京」の関谷隆司さんが「宙玉2つ付けてステレオで・・・w」というコメントを付けてくれ、それに私がすぐに反応したというわけだ。

だって、脳内に透明球が浮かんでるイメージって面白そうでしょ? なんか宙玉写真と3Dの親和性というのは非常に高いのではないか。そう考えたらすぐに玉が二つ並んだ宙玉レンズを作っていた。

結果から言えば、この玉二つタイプはイマイチだったんだけど、現在もこの3D宙玉にはチャレンジ中。まあ、近い将来その結果をお見せすることができるでしょう。

ステレオ写真もiPhoneを使って撮影することができる。たとえばアプリとしては「i3DCamera」や「i3DSteroid」があるが、どちらも「ステレオクラブ東京」のメンバーが開発したそうだ。私はステレオ写真を始めたばかりなのに、いきなりディープな人達と出会うことができたようだ。

私の身近なところで言うと、超芸術トマソンの煙突男こと飯村昭彦さんがステレオ写真をやっているが、飯村さんは4×5のポジでステレオ写真を撮ってましたよ。それがiPhoneで撮れちゃうんだからねえ。世の中変わったもんだ。いや、当時でも4×5で撮ってたのは珍しかったかもしれないけどw

カメラは写真だけ写ればいいと思ってたけど、そんなことないから、どんどん進化して欲しい。パソコン化してカメラ自体にいろんなアプリがダウンロードできたり、編集ができたり。モジュール化して撮像部と再生部が分離出来たり。

フィルムや印画紙がなくなってしまう悲しい時代ではなく、いろんな可能性が広がる面白い状況に立ち合っていると思いたい。そしていろんなことにちょっかいを出しまくって、見た事がないような面白い写真を撮ってみたい。

◇「網フィルター」を作ってみよう! アナログモザイクの微妙な味わい
(デジカメWatch)
< http://dc.watch.impress.co.jp/docs/review/omoshiro/20130207_586454.html
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