3Dプリンター奮闘記[36]3Dプリンター銃製造に関する徒然/織田隆治

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さて、巷では3Dプリンターで製造された銃についての話題がもちきりです。テレビのニュースでは、3Dプリンター銃の事が毎日のように報道されています。だが、ちょっと待って。なんか、論点がかなりズレている気がしています。

どうしようかなぁ、なんて思ってみていたんですが、さすがに毎日3Dプリンター使っている僕にとって、「それ、ちゃうやろ?」って思う事が多々あるわけです。

まあ、ちょうど、この記事を書いているタイミングが良かったので、その事についてちょっと僕なりの意見を書いてみようと思います。『僕なり』なんで、それが合っているとか、間違っているとかは、分かりませんよ。

そもそも、3Dプリンター、しかも、コンシューマー向けのプリンターで銃を作ったところで、性能的にどんなものになるかって事を、公開していないですね。僕が見てない番組ではちゃんと報道されているのかもしれませんけど。

ネットで流れて来るニュースなんかも、あたかもそれが直ぐに誰にでも出来て、「直ぐにパンパン打てるし、本当あぶない! もう危険すぎるぅ!」って言い回しが多いように感じます。




まあ、日本ではまず弾丸自体が普通には手に入らないものですからねぇ。

コンシューマー向けの3Dプリンターは、以前にも書いた通り、熱でABSやPLAといった樹脂を熱で溶かし、0.3〜0.5mmのノズルからニュルニュルって出して形を作るものです。

精度や硬度もあまり良くないプリンターで、ガタガタで、しかもうまく積層が行われず、そういったプリンターで出力した銃なんて、その辺の強化ABSで出来たモデルガンやエアーガンより強度は落ちるものです。

そんなもので本物の弾丸を射った日にゃ、マグレで一発射てたとしても、二発目なんてかなりヤバイ状態になっているわけですよ。

PLAなら160度くらい、ABSでも280度くらいで溶けちゃう樹脂ですよ? そんな樹脂の本体で高温の火薬が炸裂し、バレル(弾丸が通る穴)を猛烈な摩擦をおこしながら弾頭が走って行くんです。

結果は直ぐに分かりますよね? そう、「溶ける積層面が炸裂」しちゃいます。

何らかの方法で、弾丸を入手出来たとして、それを撃つ、というのは、撃つ人にもかなりのリスクが伴うわけで、僕なら絶対にやりません。

じゃ、「金属をプリント出来る3Dプリンターで出力すればいいじゃな〜い!」

と思うでしょうけど、例えば、3Dプリンターの出力サービスで、「これ、金属で出力してくださ〜い」とか言って銃のデータを持って行ったり......な〜んて、よっぽど想像力のない人にしか出来ませんよね。

じゃ、「そのプリンターを買えばいいじゃな〜い!」

となるんですが、チタンや鉄等を出力できるプリンターってのは、今のところ5000万とか、それ以上のお値段になるわけですよ。

しかも、3Dプリンターで金属を出力した場合、レーザー照射で金属の粉を固めるわけで、やはりどうしても積層した跡が残ります。

それを磨くにはマシニングゼンタ等の工作機械で研磨するか、凄い職人さんが研磨するか、って事になるわけです。

それなら、始めからマシニングセンタで作った方がはるかに早いわけですよね。

そんな高額出して苦労するすくらいだったら、どうにかして本物を入手する方がかな〜り安価なのでは? ...って思いませんか?

弾ないと、銃なんてただの飾りかゴミにしかなりません。弾丸に関しても、旋盤等かなり高度に使って、しかも火薬も手に入れて...ってなるわけです。

この問題は、銃に限った話ではなく、「ナイフ等も出力出来るじゃん! 危ない!」な〜んて事になるんですが、それはホームセンターとかで包丁買う方が安いし、簡単なんですよね。

ABSやPLAなんかでできたナイフなんか、厚手の服来てたら服で受け止められちゃいますって。

では、そういった工作機械を使って仕事をしている人が危ない! って事にはならないでしょ?

要は、3Dプリンター自体に問題があるわけでも何でもなく、使う人に問題があるんですね。

最近のコピー機では、お札をスキャンとかコピー出来ない機能も付いていますが、昔のは付いてなかったでしょ? 硬貨にしても、型とってある程度低温で溶ける金属を流し込んで作るって事もできるわけです。

それでも、みんなコピーしましたか? そして、使いましたか?しませんよね。リスクとかモラルを考えたら。

しかしながら、残念ながら、それをやってしまう人がいます。興味本位なのか、本当にどないかしたろう、って事なのかは分かりませんが。

それと同じなんですよね。今回の3Dプリンター銃の問題も。

そうやって、3Dプリンターが悪だ! とか言い出して、それが浸透しちゃう事で、3Dプリンター登録法だ! 購入時に許可性に! とかハイパーナンセンスな事になりかねません。

そんな事をしていると、今でさえ他国に大幅に遅れをとっている、日本の3Dプリンター技術や3Dプリンターの普及なんかの速度に、急ブレーキをかけてしまう事になります。急ブレーキって言っても、まだ助走くらいなんですけどね。

今年から来年にかけて、また3Dプリンター技術の特許が切れて行きます。そこで、そろそろ日本も本腰を入れて開発を進めていくべき時期に、なんといううまいタイミングでこんな事件が起こるのかなぁ、なんて思いますよね。

では、「そういった事を野放しにしていいのか?」と言うと、やはり絶対にそんな事はいけないんです。

で、結局取り締まるのは3Dプリンターの方ではなく、3Dデータの方なんですよね。後は、モラルと法律の問題なんだろうな、と思います。

データの方ですが、これはかなりやり方は難しいでしょうね。ネットで拡散するわけですから。

音楽配信や、本なんかでも、かなり問題になってますよね。基本、同じようなものだと思っています。それを食い止めるの方法は、僕には難しすぎて分かりませんので、専門の方に期待するしかないでしょう。

硬貨、紙幣の偽造、ってのは相当に重い罪です。それと同じような罰則をちゃんと法律で決めるのもいいでしょう。今なら、ただの銃刀法違反くらいでしょ?

最近では、ネットを通じて未成年の○○の画像なんかも、DLして個人所有も罰則! なんて法律もあるようで、これと同じくらいの決まりを作るべきなんでしょうね。

まあ、これは僕の持論なんて、これが社会的に正しいかどうか分かりません。それなりの制御力にはなるんじゃないかな〜と思います。

僕なんかビビリなんで、例の銃のデータが拡散した時も、DLどころかそのDLサイトに行く事もできませんでした(笑)

さて、皆さんはどう思いますか? 先頃の報道?

【織田隆治】FULL DIMENSIONS STUDIO(フル ディメンションズ スタジオ)
< http://www.f-d-studio.jp >

はあ〜。もう今年も1/3終っちゃった。色々やらんとね......。