3Dプリンター奮闘記[104]3Dプリンターと「きっかけ」が作り出すもの/織田隆治

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年末から体調を崩して、久しぶりに風邪を引いてしまいました。思えば数年の間、風邪は引いたことがなかったんですけどねぇ……。

年末頃、少し仕事が落ち着いてきて、つい気が抜けてしまったんだと思うんですよね。

思えば年がら年中仕事に追われてしまっていて、それが通常モードになっていて、一瞬でも仕事が落ち着いたからでしょうねぇ……。止まると死ぬ回遊魚みたいなもんか……僕は……。

そして、なんとか風邪が治ったと思ったらストレスで顎関節症に……。ほんと、休めない体になってしまいました。

結局そうしているうちに、年度末に向けての仕事がどんどん入ってきて、結局ゆっくり出来ない日々に再突入しております。





さて、3Dプリンターの話題ですが、そんなこんなでバッタバタしていて、先日行われた「3D Printing 2018」も、招待状を頂いていたのに参加出来ず……。

そして、「ワンダーフェスティバル」にも参加できませんでした。

実は、2月17日〜18日と、筑波大学の実習講義がありまして、ワンフェスと日程がバッティングしてしまい、さすがに講師の方を優先することになったわけです。

4年前から、筑波大学で3Dプリンターに関する集中講義をやらせていただいております。今年で5年目。

夏休み中に座学で一日5時間の2日間、合計10時間あまり、3Dプリンターの基礎と応用、実例を交えながらの座学を隔年で。

そして、毎年10月ごろに課題を出しておいたものを学生さんにモデリングをしてもらい、2月の集中実習までに出力。2日間で研磨、仕上げ、塗装をする実習を行っています。

3年前、学生さん達に色々なモノ作りをしてもらうために、筑波大学内に「創房」という3Dプリンターやレーザー彫刻機を設置した工房の立ち上げに協力させて頂きまして、その「創房」にて実習を行っています。

今年で3回目でした。立ち上げ当時は、FDMのプリンターが5台でしたが、昨年「クホリア」を2台追加し、合計7台の3Dプリンターが設置してあります。

筑波の学生さん達は、そこで色々なモノ作りを行っており、学生インストラクターによって運営されています。

集中講義実習では、その学生さんにTA(補助)をしてもらいます。

今回は、ちょっと前に流行った「ハンドスピナー」という課題を、昨年の10月頃出しました。その時は流行ってたんですよね(笑)

今も流行っているの???

学生さん達には、データができた段階で出力前に提出してもらい、僕の方でレギュレーションをチェック。データがOKなら、そのまま「創房」の3Dプリンターで、2月の集中実習までに出力を終了しておいてもらいます。

そして、その2日間で研磨、仕上げ、塗装を指導しながら完成させる訳ですね。研磨や仕上げのコツや塗装の仕方等、いろいろな「まめ知識」を伝授します。

毎年感じることは、初日の前半は結構みんなすぐできると思って「なめて」かかっています(笑)

そして、初日の後半から「あれ、もしかして、これ結構大変かも……」と思い始めるみたいですね。

だいたいその日の終わり時刻には、皆結構焦り始めます。そして、「こんなややこしい形状にしまきゃよかった」とか、「思ったように綺麗にならない!」などと(笑)。

僕は、講義や授業の最初に、必ず質問します。

「みんなの中で(プラモデル)を作ったことがある人いる?」

だいたい、最近の学生さん達の中で、作ったことがあるのは全体の5%くらいです。芸術系の学生でも、あまりその割合は変わらない気がします。

そして、最近ではプラモデルの精度がかなり上がっていて、「パチ組み」しかしたことがない人がほとんどです。「パチ組み」っていうのは、ランナーからパチパチ切り出して、そのまま組み立てるだけ。

最近のプラモデル、特に『ガンプラ』は本当には良くできていて、ランナーから切り取って組み合わせるだけで、ほとんど段差も出ずに綺麗に仕上がります。

プラモデルと言うより、組み立てされていない玩具を「組み立てる」って感じでしょうかね。

接着剤も必要ないですし、段差を研磨等をして加工する必要もないものがほとんど。誰が作っても、説明書通りに作れば同じものができ上がるようになっています。

本当にこれは凄いことで、設計、金型、生産の素晴しい技術の進歩ですね。

それが間違っているとは全然思わないです。

しかしながら、「考えて、工夫をして工作する」ということからは離れてしまっているようにも思います。

モノ作りの原点っていうのは、

「どうすれば、もっと良いものが作り出せるか」
「どうすれば、もっと組立やすくなるか」
「どうすれば、もっと使い易くなるか」

ということを考えて実行するのが、重要なファクターになると思うんですよね。応用力というか、マニュアルから一度目をそらし、別の方法で工夫して、より良いものを作り出す。それが、新しいものを作る原点の一つにもなると感じています。

素晴しいお膳立ては、それはそれで素晴しいことなんですが、そういったことを削いでしまっている一面もあるんじゃないかなと。

そういうわけで、「プラモデルを作ったことがある」と答えた人も、実際に3Dプリンターで出力されたものを研磨して組立て、塗装する、ということの大変さに気がつかないんだと思います。

そして、その工程を進めることで、自分の考えたものが実際に目の前に出現し、研磨、加工、塗装し、製品に近いものが出来上がっていくと、学生さん達の目の輝きが違って来るわけです。

始めは「うわぁ……大変だ……」と尻込みしていた学生さんも、2日目の後半くらいには、「もっときれいに作りたい!」という感情が出て来るように思います。

付け焼き刃の2日間で、きれいなものが作れるとは僕も思っていません。

ただ、そういった「次はもっときれいに作りたい!」という感情を持つことと、今まで3Dプリンターで立体化するだけで満足していたが、もう一つ上の仕上がりを体験することで、「もっと良いものを作りたい」と感じ、次回の制作の時には、その実習で得た知識と経験を生かして欲しいんですね。

3年前にこの実習を受けた学生さんが、わざわざ大阪の工房まで遊びに来てくれました。就職が決まった報告に。

その時、僕の実習を受けて、仕上げの大切さを知り、今までの完成とはもっと上の完成品を作る事が出来た。その作品を就職活動の際に持参したところ、そのできの良さに面接官も驚いていた。

と、とても嬉しそうに語ってくれました。面接の際に持参したという作品も持ってきて、見せてくれました。

今年卒業なんですが、その学生さんが、卒業までにまた一度新しい作品を見てもらいたい! と連絡をくれました。

本当にやって良かったと思う瞬間です。

僕の授業を「きっかけ」とし、努力したのは「彼自身」の努力です。

それでも、そういう「きっかけ」を与えられたことがとても嬉しいんですよね。

これだから先生はやめられないです。


【織田隆治】
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