●「写真時代倶楽部」というものがあった
「写真時代」には読者参加型のイベントがあったが、「写真時代倶楽部」もその一つだ。連載を持っている写真家を軸とした撮影会などがあり、私も読者として参加した。
ある時は森山大道さんと立川を撮り歩く会があった。街歩きを終えると撮影した写真のスライドを見ながら、森山さんから講評を伺った。モノクロのポジフィルムを簡単な器具を使って、その場で現像してしまうという製品を使ったのが印象に残っている。
荒木経惟さんの撮影会では、白夜書房の編集者とともに会社のオレンジ色のバンを名古屋まで運転していった。SM設備のあるラブホテルに、「写真時代」誌上でも馴染みのあるモデルを呼んで撮影会は行われた。
「写真時代」には読者参加型のイベントがあったが、「写真時代倶楽部」もその一つだ。連載を持っている写真家を軸とした撮影会などがあり、私も読者として参加した。
ある時は森山大道さんと立川を撮り歩く会があった。街歩きを終えると撮影した写真のスライドを見ながら、森山さんから講評を伺った。モノクロのポジフィルムを簡単な器具を使って、その場で現像してしまうという製品を使ったのが印象に残っている。
荒木経惟さんの撮影会では、白夜書房の編集者とともに会社のオレンジ色のバンを名古屋まで運転していった。SM設備のあるラブホテルに、「写真時代」誌上でも馴染みのあるモデルを呼んで撮影会は行われた。
みんなモデルの同じ部分にばかりレンズを向けているのが異様だったが、ヌードの撮影会というのは、みんな同じようなものなのだろうか。アラーキーファンよりも、ただのエロ親父の比率の方が高そうだったが、もしかしたらアラーキーファンかつエロ親父であったのかもしれない。
撮影が終わったあとは、荒木さんの作品のスライドショーが行われた。モデルの女の子に白いTシャツを着せ、それをスクリーン代わりにして電通時代の作品などが投影される。「写真時代」編集長のスエイさんが、テナーサックスで即興の演奏を付けると、ラブホテルの一室はアートな空間となった。
森山さん、荒木さんとともに高田馬場を撮り歩くという豪華な回もあった。この日の私のテーマは、森山さんがどう撮っているのかを目撃すること。みんなで高田馬場に集合し、会がスタートすると、それぞれが被写体を求めて街へ散っていったのだが、私だけは森山さんの10メートルぐらい後方をジーッと付いていった。
そして森山さんが撮ったであろう辺りで自分も撮影する、ということを繰り返した。何でみんなはさっさといなくなってしまったのだろうか? おかげで私だけすごく得をしたのだが……。
●「FOTO SESSION '86」への参加
その後、写真時代倶楽部に集まっていたメンバーが中心となって「FOTO SESSION '86」という会が生まれた。中野坂上にアジトと呼ばれるアパートを借り、月に一度、それぞれが撮影した写真を持ち寄り例会を開いた。毎回、森山さんに写真を見ていただき、また、互いの写真を論評し合うという集まりだった。
私の写真はトマソンから始まり、カラーポジで撮影をしていたのだが、どんどん写真の方に吸い寄せられて行くと、モノクロの現像もしたくなっていた。アジトには暗室設備も作るということだったので、私も月に一度の寄り合いに参加することにした。
毎回、兄貴分として顔を出していたのが、「CAMP」の残党の山内道雄、尾仲浩二だった。「CAMP」というのは「WORK SHOP 写真学校」の森山大道教室の流れを次いで生まれた活動拠点で、活動期間は1976〜84年。北島敬三、倉田精二を擁し、スタイリッシュでトンガったイメージがある。
一方我々「フォトセッション」の方は同好会の延長線上と言ってもいい。月に一度集まり、アパートの畳の上に写真を敷き詰めて論評し合うという会なので、別に格好のいいものではない。
メンバーは年齢、職業、多岐にわたり、いろんな人種が集まっていた。それぞれが一カ月間で撮り溜めた写真を畳の上に公開するのだが、寡作の人間もいれば、毎回毎回異常な枚数のプリントを持ってきてブイブイ言っているやつもいた。
それを正座した森山さんが一枚一枚見て、セレクトしたり、コメントを加える。森山さんの方向に引きつけるのではなく、それぞれの持ち分を考えて、方向性を示してくれるというような感じだった。
それぞれのいい所を伸ばしてくれようとしているのに、みんなはどんどん森山さんの目に見えるマネをし始めた。かく言う私も、いつのまにかコントラストの強いモノクロプリントをするようになっていた。
昼過ぎから始めた例会は夕方に終わり、その後は買い出しをして飲み会へと移行する。飲めば写真に対する熱い想いが語られ、論争になりケンカになってしまうのだが、凄くディープでヘビーな場だったので、私的には写真を語り合うのは、もう沢山という感じだ。
私には私の考えがあるので、人様の意見なぞ聞きたくはない。飲めば写真論を語りたがる人がいるが、私は聞き流すようにしている。私にも隠しスイッチがあるので、ヘタにそんなもんに触られると、理性的ではいられなくなってしまうからだ。
昼間の素面の状態の時には紳士的に褒めてくれた森山さんも、アルコールが廻ると、「さっき言ったことは、ぜーんぶウソ! お前らの写真は全然ダメ!」とのたまう。そんな頃にはみんなもうズブズブで、一人倒れ、二人倒れして、雑魚寝をして収束というのが毎度のパターンだった。
私は「フォトセッション」に参加して、一年で会社を辞めてしまった。辞めて何をしたのかと言えば、頭を丸め、眉毛を剃り落としセルフポートレイトの撮影をした。こうして私は道を踏み外して行った……。
【うえはらぜんじ】zenstudio@maminka.com
「すぐにわかる! 使える!! カラーマネージメントの本〜仕事で役立つ色あわせの理論と実践マニュアル」(毎日コミュニケーションズ)が発売中。
< http://book.mycom.co.jp/book/4-8399-1937-2/4-8399-1937-2.shtml
>


撮影が終わったあとは、荒木さんの作品のスライドショーが行われた。モデルの女の子に白いTシャツを着せ、それをスクリーン代わりにして電通時代の作品などが投影される。「写真時代」編集長のスエイさんが、テナーサックスで即興の演奏を付けると、ラブホテルの一室はアートな空間となった。
森山さん、荒木さんとともに高田馬場を撮り歩くという豪華な回もあった。この日の私のテーマは、森山さんがどう撮っているのかを目撃すること。みんなで高田馬場に集合し、会がスタートすると、それぞれが被写体を求めて街へ散っていったのだが、私だけは森山さんの10メートルぐらい後方をジーッと付いていった。
そして森山さんが撮ったであろう辺りで自分も撮影する、ということを繰り返した。何でみんなはさっさといなくなってしまったのだろうか? おかげで私だけすごく得をしたのだが……。
●「FOTO SESSION '86」への参加
その後、写真時代倶楽部に集まっていたメンバーが中心となって「FOTO SESSION '86」という会が生まれた。中野坂上にアジトと呼ばれるアパートを借り、月に一度、それぞれが撮影した写真を持ち寄り例会を開いた。毎回、森山さんに写真を見ていただき、また、互いの写真を論評し合うという集まりだった。
私の写真はトマソンから始まり、カラーポジで撮影をしていたのだが、どんどん写真の方に吸い寄せられて行くと、モノクロの現像もしたくなっていた。アジトには暗室設備も作るということだったので、私も月に一度の寄り合いに参加することにした。
毎回、兄貴分として顔を出していたのが、「CAMP」の残党の山内道雄、尾仲浩二だった。「CAMP」というのは「WORK SHOP 写真学校」の森山大道教室の流れを次いで生まれた活動拠点で、活動期間は1976〜84年。北島敬三、倉田精二を擁し、スタイリッシュでトンガったイメージがある。
一方我々「フォトセッション」の方は同好会の延長線上と言ってもいい。月に一度集まり、アパートの畳の上に写真を敷き詰めて論評し合うという会なので、別に格好のいいものではない。
メンバーは年齢、職業、多岐にわたり、いろんな人種が集まっていた。それぞれが一カ月間で撮り溜めた写真を畳の上に公開するのだが、寡作の人間もいれば、毎回毎回異常な枚数のプリントを持ってきてブイブイ言っているやつもいた。
それを正座した森山さんが一枚一枚見て、セレクトしたり、コメントを加える。森山さんの方向に引きつけるのではなく、それぞれの持ち分を考えて、方向性を示してくれるというような感じだった。
それぞれのいい所を伸ばしてくれようとしているのに、みんなはどんどん森山さんの目に見えるマネをし始めた。かく言う私も、いつのまにかコントラストの強いモノクロプリントをするようになっていた。
昼過ぎから始めた例会は夕方に終わり、その後は買い出しをして飲み会へと移行する。飲めば写真に対する熱い想いが語られ、論争になりケンカになってしまうのだが、凄くディープでヘビーな場だったので、私的には写真を語り合うのは、もう沢山という感じだ。
私には私の考えがあるので、人様の意見なぞ聞きたくはない。飲めば写真論を語りたがる人がいるが、私は聞き流すようにしている。私にも隠しスイッチがあるので、ヘタにそんなもんに触られると、理性的ではいられなくなってしまうからだ。
昼間の素面の状態の時には紳士的に褒めてくれた森山さんも、アルコールが廻ると、「さっき言ったことは、ぜーんぶウソ! お前らの写真は全然ダメ!」とのたまう。そんな頃にはみんなもうズブズブで、一人倒れ、二人倒れして、雑魚寝をして収束というのが毎度のパターンだった。
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by G-Tools , 2006/07/20