
掃除機のホースのような鏡筒を曲げて撮影すれば、ピントのおかしな写真になるし、単玉独特の軟焦点の味わいもある。ただ、レンズ自体は色収差を抑えた設計になっているので、筋の良さが感じられる。これはこれで、かなり気に入ったのだが、破綻のなさが、少し不満。
トイレンズを名乗るのであれば、もう少し破綻した、ヤサグレ感のようなものが欲しい。ここはひとつ破綻したレンズを自分で探し出すしかないだろう。そして私は再び、はてしない冒険の旅に出たのだった。
旅の第一の目的地である百円ショップで、今まで見たことのなかったレンズを発見した。「子ども実験シリーズ 望遠鏡を作ってみよう!」という手作りのキットだ。これに凸レンズが3枚と凹レンズが2枚付属している。百円ショップだから、もちろん百円だ。ビバ百円ショップ! 幸せはいつも百円ショップで待っていてくれる。随分と短い旅であった。
しかし、こうやって買い求めたレンズがすでに家には沢山溜まっている。結局今までまともに使ったのは、一番最初に買った百円の双眼鏡からとったレンズだけなので、私の宝箱というかガラクタ箱の中には、安い虫眼鏡やら、ルーペやらが、ごちゃごちゃと詰まっている。こいつらを一度整理してみたほうがいいだろう。
●蛇腹レンズを作る
私の次なる野望としては広角系のレンズを作ること。先に作ったフニャフニャシフトレンズは35mm換算で150mmぐらいなので、ちょっとスナップには向かない。単玉では広角というのは無理にしても、もう少し画角を広げたいところだ。
画角を広げるというのは、焦点距離を短くするということ。しかし、レンズからCCDの距離を短くするためには限界がある。カメラボディの中にまでレンズを入れてCCDに近寄らせれば、ミラーがアップした時にぶつかってしまう。素人が工作するとしたら、ボディの中までレンズを入れず、せいぜいマウントの辺りで留めておいたほうがいいだろう。
私が使っているニコンカメラの場合は、マウントから撮像素子までの距離であるフランジバックが46.5mmとのことなので、単玉で遊ぶのであれば、この辺りが基準になってくる。まあ、ちょうどいい焦点距離のレンズがあるかどうかが問題なのだが……。
天気のいい日に買い求めたレンズを外に出して、それぞれの焦点距離を測ってみることにした。まず、フニャフニャシフトレンズを陽にかざし、紙の上にピントを合わせてみる。レンズと紙との間を物差しで測ると、100mmぐらいだった。実験に使っているニコンのD200は撮像素子のサイズがAPS-Cなので、35mmフルサイズの1.5倍換算となる。つまり35mmで言えば150mm程度になるということで、実際に撮った感じとも合う。
他のレンズも色々測ってみたが、「子ども実験シリーズ」のレンズの場合は、ピントが合ったのが40mmぐらいだった。つまりフニャフニャシフトレンズと比べれば、大分画角を広げることはできる。しかし、バックフォーカス(レンズから撮像素子までの距離)のことを考えると、けっこうギリギリという感じだ。
実際に「子どもレンズ」をレンズを外したカメラのボディにかざしてみると、ちょうどマウントの辺りでピントが合った。つまりこのレンズを使う場合には、マウントの辺りにレンズがくるように工作をしなければいけないということだ。
まあ、他に適当なレンズもなかったので、今回は「子どもレンズ」を使って工作をすることにする。各界から嘲笑を浴びた生ゴム製のフニャフニャの鏡筒は封印し、紙製の蛇腹を作ってみる。
蛇腹の折り方というのはネットでいくつか検索できた。ラッパのように口径が少しずつ広がるように工作するのは、ちょっと複雑だが、同じ太さで良ければ、仕組みは割と単純だ。Illustratorで作図をし、インクジェットプリンタを使って黒い色上質紙に印刷。山折り、谷折りを繰り返すことにより、うまく工作することができた。
正面のレンズを取り付ける面はバルサ材を使うことにした。カッターで工作が出来るので、レンズ用の丸い穴を開けるのも簡単。一応ヤスリがけをし、焦げ茶のニスを塗って仕上げた。古い木製の暗箱のイメージだ。
カメラボディへはボディキャップを使って取り付けることにした。蛇腹と穴を開けたボディキャップを接着し、カメラへはボディキャップを使ってはめ込む。接着は何でも強力にくっつけてしまう接着剤と黒いパーマセルテープを使った。
今度はフニャフニャシフトレンズとは全く違う、レトロで素敵な蛇腹レンズが出来上がった。これならトイカメ娘どもも「カワイイー!」と言うこと間違いなし。しかし、カメラに取り付けようとして、このレンズに大きな欠陥があることが発覚した。
一眼レフカメラにレンズを取り付ける際には、マウントをボディに突っ込み、30度ぐらい回転させて固定するわけだが、その回転ができない。普通のレンズは円形、しかし私が作った蛇腹レンズは四角。角の所が引っかかってしまって回転することが出来ないのだ。
このままでは固定できないから簡単に外れてしまう。ボディに強力接着剤で留めてしまうなんてことは出来ない。テープで仮止めしても隙間から埃が入ってCCDにたっぷり付きそうだ。これじゃあ使えないよ。せっかくニスまで塗ったのに……
ふと戦艦大和が思い浮かんだが、そんなたいそうなもんではないか。ただ、使えないとはいうものの、ぶっ潰してしまうのも忍びない。名誉レンズとして殿堂入りして貰うことにしよう。 (旅はまだ続く)
【うえはらぜんじ】zenstudio@maminka.com
「すぐにわかる! 使える!! カラーマネージメントの本〜仕事で役立つ色あわせの理論と実践マニュアル」(毎日コミュニケーションズ)が発売中。
< http://book.mycom.co.jp/book/4-8399-1937-2/4-8399-1937-2.shtml
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私の次なる野望としては広角系のレンズを作ること。先に作ったフニャフニャシフトレンズは35mm換算で150mmぐらいなので、ちょっとスナップには向かない。単玉では広角というのは無理にしても、もう少し画角を広げたいところだ。
画角を広げるというのは、焦点距離を短くするということ。しかし、レンズからCCDの距離を短くするためには限界がある。カメラボディの中にまでレンズを入れてCCDに近寄らせれば、ミラーがアップした時にぶつかってしまう。素人が工作するとしたら、ボディの中までレンズを入れず、せいぜいマウントの辺りで留めておいたほうがいいだろう。
私が使っているニコンカメラの場合は、マウントから撮像素子までの距離であるフランジバックが46.5mmとのことなので、単玉で遊ぶのであれば、この辺りが基準になってくる。まあ、ちょうどいい焦点距離のレンズがあるかどうかが問題なのだが……。
天気のいい日に買い求めたレンズを外に出して、それぞれの焦点距離を測ってみることにした。まず、フニャフニャシフトレンズを陽にかざし、紙の上にピントを合わせてみる。レンズと紙との間を物差しで測ると、100mmぐらいだった。実験に使っているニコンのD200は撮像素子のサイズがAPS-Cなので、35mmフルサイズの1.5倍換算となる。つまり35mmで言えば150mm程度になるということで、実際に撮った感じとも合う。
他のレンズも色々測ってみたが、「子ども実験シリーズ」のレンズの場合は、ピントが合ったのが40mmぐらいだった。つまりフニャフニャシフトレンズと比べれば、大分画角を広げることはできる。しかし、バックフォーカス(レンズから撮像素子までの距離)のことを考えると、けっこうギリギリという感じだ。
実際に「子どもレンズ」をレンズを外したカメラのボディにかざしてみると、ちょうどマウントの辺りでピントが合った。つまりこのレンズを使う場合には、マウントの辺りにレンズがくるように工作をしなければいけないということだ。
まあ、他に適当なレンズもなかったので、今回は「子どもレンズ」を使って工作をすることにする。各界から嘲笑を浴びた生ゴム製のフニャフニャの鏡筒は封印し、紙製の蛇腹を作ってみる。
蛇腹の折り方というのはネットでいくつか検索できた。ラッパのように口径が少しずつ広がるように工作するのは、ちょっと複雑だが、同じ太さで良ければ、仕組みは割と単純だ。Illustratorで作図をし、インクジェットプリンタを使って黒い色上質紙に印刷。山折り、谷折りを繰り返すことにより、うまく工作することができた。
正面のレンズを取り付ける面はバルサ材を使うことにした。カッターで工作が出来るので、レンズ用の丸い穴を開けるのも簡単。一応ヤスリがけをし、焦げ茶のニスを塗って仕上げた。古い木製の暗箱のイメージだ。
カメラボディへはボディキャップを使って取り付けることにした。蛇腹と穴を開けたボディキャップを接着し、カメラへはボディキャップを使ってはめ込む。接着は何でも強力にくっつけてしまう接着剤と黒いパーマセルテープを使った。
今度はフニャフニャシフトレンズとは全く違う、レトロで素敵な蛇腹レンズが出来上がった。これならトイカメ娘どもも「カワイイー!」と言うこと間違いなし。しかし、カメラに取り付けようとして、このレンズに大きな欠陥があることが発覚した。
一眼レフカメラにレンズを取り付ける際には、マウントをボディに突っ込み、30度ぐらい回転させて固定するわけだが、その回転ができない。普通のレンズは円形、しかし私が作った蛇腹レンズは四角。角の所が引っかかってしまって回転することが出来ないのだ。
このままでは固定できないから簡単に外れてしまう。ボディに強力接着剤で留めてしまうなんてことは出来ない。テープで仮止めしても隙間から埃が入ってCCDにたっぷり付きそうだ。これじゃあ使えないよ。せっかくニスまで塗ったのに……
ふと戦艦大和が思い浮かんだが、そんなたいそうなもんではないか。ただ、使えないとはいうものの、ぶっ潰してしまうのも忍びない。名誉レンズとして殿堂入りして貰うことにしよう。 (旅はまだ続く)
【うえはらぜんじ】zenstudio@maminka.com
「すぐにわかる! 使える!! カラーマネージメントの本〜仕事で役立つ色あわせの理論と実践マニュアル」(毎日コミュニケーションズ)が発売中。
< http://book.mycom.co.jp/book/4-8399-1937-2/4-8399-1937-2.shtml
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- すぐにわかる!使える!!カラーマネージメントの本―仕事で役立つ色あわせの理論と実践マニュアル
- 上原 ゼンジ
- 毎日コミュニケーションズ 2006-04
- おすすめ平均
理論と実践の程良いバランス
by G-Tools , 2006/07/27