デジアナ逆十字固め…[25]一眼レフにドアスコープを
── 上原ゼンジ ──

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携帯電話にドアスコープを付けた魚眼カメラというのは、ひじょうにお手軽ではあるけど、やっぱり解像力という点では物足りない。そこで一眼レフを使って工作してみることにした。

私が工作によく利用しているのは、黒い段ボールの波々になった紙だ。って、よく分からない説明だな。巻段ボールというのかな、ワインをラッピングしたりするのに使うもの。それの黒いものを使っている。私はホームセンターで買ったが、文房具屋のラッピングコーナーなんかにありそうだ。

この巻段ボールのいいところは筒状にするのが簡単なところ。まず一眼レフの交換レンズをクルッと巻いて黒いテープで留める。そこに蓋をして小さな穴を開け、ドアスコープを差し込めばオーケー。


ズームレンズで試してみたのだが、ファインダー上でピントが合うことが確認できた。一眼レフでも、交換レンズの先にドアスコープを付ければ魚眼になるというわけだ。

最初はレンズ径の大きな一眼レフの交換レンズに、レンズ径の小さなドアスコープを付けてもバランスが悪くなってしまうのでは? というイメージがあって、コンパクトカメラや携帯電話のカメラで実験をしてみたのだが、別に一眼レフでも何の問題もないことが分かった。

であれば元々大きなイメージセンサを持つデジタル一眼のほうが、解像度の高い画像が得られるということになる。

ズーミングをすると、ファインダー内の円形に見えている範囲が変化する。広角にすると円形に見える範囲が小さくなる。つまりトリミングが必要になるので、解像度も下がってしまうということだ。反対に望遠側に変えると見える範囲はどんどん大きくなり、最後には円形ではなくなり、黒い部分もなくなってしまう。

しかし、これだと画角が狭くなってなり、魚眼の魅力を損なってしまう。出来ればファインダー内で、円形部分がなるべく大きく広がり、しかし切れてはいない、という状態の画角が望ましいということだ。ズーミングをしながら最適な焦点距離を探ろうと思ったのだが、イマイチ使い勝手がよくなかったので、単焦点レンズにしてみる。

24mmのレンズだと円形部分は小さくなり、60mmだと少し切れてしまう、50mmでだいたいちょうどいい感じになった。つまり、APS-Cサイズのイメージセンサを持つD200にドアスコープを付けた場合には、50mmの交換レンズの先にドアスコープを付けた場合に一番相性が良かったということだ。

●フィルターを使えば工作が簡単に

巻段ボールでレンズをくるむ方式で試作品を作ったが、イマイチ調子が良くなかった。ピント合わせでレンズが繰り出してもオーケー、なるべく光が入らないように、ドアスコープがグラグラしないように、という条件で工作できないかと思いながら、ジッとレンズを観察する。

そして、フィルターのガラスがはまっている部分を厚紙に変えて、そこにドアスコープを嵌めたらどうかというアイディアが浮かんだ。ガラスを割ってしまうなどという野蛮なことをしなくとも、分解用に購入した工具を使えば、簡単にはずせるはずだ。

ただ、ちょっと不安なのは、金属製のドアスコープが直接レンズにぶつかって傷付けてしまうこと。さーて、どうしてくれようかとフィルターを眺めながら思案していると、どうやらガラスは付けたままでも、巻段ボールを嵌め込めそうだということが分かってきた。

フィルターのガラスの前の部分には2mmぐらいのゆとりがあるから、巻段ボールを円形に切れば、うまく嵌め込むことができる。あとは真ん中にドアスコープを差し込む小さな穴を開ければいい。サークルカッターを使い、工作は簡単にできた。

テスト撮影してみたが、なかなか調子がいい。なにしろ円盤を一つ作ればいいだけだから、手軽でスマートだ。魚眼レンズというのはかなり高価なものだが、それがドアスコープ一つで出来てしまうんだから素晴らしい。

◇フィルター式魚眼レンズ
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さて写りのほうはどうか? まず、このドアスコープが真鍮製なのだが、レンズ内部でも真鍮がそのまま露出しているので、思いっきり反射してしまっている。デジタルカメラのレンズ設計では、いかにレンズ内部での反射を抑えるのかということが重要だそうだが、反射が写りに及ぼす影響を学習するための、格好の教材となるだろう。

解像感も最低。携帯電話と比べれば画素数は相当に多いが、まあボケたような画像だ。有効画素数10.2メガピクセルが泣いている。しかし元より私は素晴らしい解像感なぞは求めてはいない。安っぽいレンズを使って、キッチュな味わいの写真が撮ってみたいというコンセプトなので、これは大成功だ。

今まで見たことがある、魚眼レンズで撮影した映像とはちょっと違った感じだ。何を撮っても世の中がドアスコープで覗いたような写真になるのだ(そのままやんけ)。ピーピングマニアには何か訴えるものがあるかもしれないな。

まあ、高価な魚眼レンズには相当負けるが、なにしろ安くて簡単に工作が出来るから、ちょこっと鼻デカ犬を撮ってみたいなんていう場合にも最適。これは遊びとしてやってみてもいいんじゃないかな。

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