空飛ぶ写真工房…[3]ヒドラの彼方へ
── 上原ゼンジ ──

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ミジンコは全然生まれないねえ。さて、どうしてくれよう……。最近寒くなってきたから水温が20度以上に上がることはない。水温が低いから春になるのを待っているのか、私が採取してきた田んぼの土の中にはミジンコの卵自体が入っていなかったかのどちらかだろう。毎週締め切りはやってくるが、春までドロドロ水槽観察日記を続けることはできない。

そこで私は閃いた。前々から飼いたいと思っていたカブトエビを育てるというのはどうだろうか? ミジンコってなんだかノミに似てるよね。それよりもカブトエビの方がすごくカッコイイ。どうせ写真を撮るのならカブトエビのほうがいいかもしれないな。そうしよう、そうしよう。決定!


カブトエビのすべて―生きている化石“トリオップス”というわけで、私はネットで「エビ伝説」の注文をした。カブトエビというのは皆さん御存知のように、あの天然記念物のカブトガニに似ていながらも、体長2〜3センチで愛らしく格好いいミジンコ亜綱カブトエビ下綱カブトエビ目カブトエビ科に属する甲殻類の総称だ。

カブトエビは二億年もの昔、古生代ベルム紀と呼ばれる時代から地球上に生息していたんだ。そのころから姿形がほとんど進化していないため、シーラカンスのように「生きた化石」と呼ばれている。

田んぼに大量に発生したりするそうだが、残念ながら私は今までに見たことがない。猿には全然見えないシーモンキーなら飼ったことはあるのだが、カブトエビが飼えるなんて愉しみだね。でも体長2〜3センチというのは顕微鏡で観察するようなもんじゃねえなあ。

◇日本動物薬品株式会社
< http://www.jpd-nd.com/n_jpd/product/shiiku.html
>

●温めてブクブク

National  ミニミニマット DC-PM1-Cしかし、ドロドロ水槽の方も春まで放置しておけば、そのまま本当に腐ってしまいそうだ。なんとかならないものかと思案していた時、愛妻の部屋で素晴らしい物を発見した。皆さんご存知の松下電工の「ミニミニマット」だ。電気の力でお尻をあたたかくしてくれる親切な座布団と言い換えてもいい。

ラッキーと思って無断で持ってきてしまった。後で発覚して怒鳴り込んでくるかもしれないが、科学の発展のためには仕方がない。しばらくは冷たい尻のまま我慢して貰おう。そしてさらに近代的な機械を導入することにした。ジェックス株式会社の「イーエアー」だ。

これは要するに水槽の中に入れてブクブク空気を発生させる装置と言い換えてもいい。子供が縁日で掬ってきた金魚のために買ったものだが、金魚は一週間ばかりで死んでしまった。それが満を持して、今ここに蘇らんとしているというわけだ。

ドロドロ水槽に入れたらせっかく落ち着いてきた泥を巻き上げてしまうんじゃないかとか、せっかく誕生したミジンコを吸い寄せてしまうんじゃないかと思って使っていなかったのだが、ここで大幅なテコ入れを行なうことを決意した。時にはドラスティックな改革も必要だ。

さて、まさに改革に着手せんとしていたその時のことであった、水槽の中に何やら蠢くものを発見した。小さな小さな白いミミズのようなものから何本かの触手を伸ばした生物だ。これはヒドラではないか? 急いでネットで検索してみるとビンゴだった。ヒドロ虫綱ヒドロ虫目ヒドラ亜目ヒドラ科のヒドラさんそのものだった。

これはちょっとフォトジェニックかもしれないな。ひょっとするとミジンコよりもいいかもしれない。だってミジンコってちょっとノミみたいなところあるしね。これは不幸中の幸いというか、棚からボタモチというか、ドラスティックな改革により、ついに時代が動いたというかんじで感無量だ。

●顕微鏡の到着

さらにはそこへ今度は顕微鏡が届いた。時代はどんどん動いている。顕微鏡というのは少年時代の私がクジ引きで当てたものにそっくりの税抜き1980円の顕微鏡だ。あの顕微鏡に再び逢えるのかと、気をはやらせながら私はビリベリと包装を引き破った。

しかし、現れた顕微鏡に私は愕然とした。
「こんなんじゃない……」
根本的は違いはその素材だ。1970年に出会った顕微鏡はチープな代物だったが、一応金属製だった。ところが、箱の中から現れた顕微鏡はほとんどプラスティックで出来ていた。まあ、1980円なんだから文句は言えないが、勝手にあの時の顕微鏡だと思いこみ、金属製のものを想像していたので、ショックは大きかった。

だって黒や銀色の部分がすべてプラスティックで出来ているなんて反則でしょ。これで本当に使い物になるのだろうか。ミジンコは全然生まれてこないし……。この企画は失敗だったかな……。

しかし、いつまでも失敗談で引っ張るわけにはいかない。来週はいよいよ顕微鏡を使って撮影するぞ。刮目して待たれよ!

【うえはらぜんじ】zenstudio@maminka.com
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オモチャレンズの連載を読み、リコーのGR DIGITALにドアスコープをくっつけてみた人という人に会った。これがけっこうカッコイイ。情報交換の場を作ろうということでmixiの中に「キッチュレンズ工房」のコミュニティーを作ってみた。まだ3人しかメンバーがいないので、興味ある方はぜひご参加下さい。
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