デジアナ逆十字固め…[32]今度はフィルターで遊ぶ
── 上原ゼンジ ──

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レンズと比べるとフィルターというのはなんか狡いというかあざといイメージがある。たとえばソフトフィルターを使った花やポートレイトの写真というのは、ちょっと気色悪い。まあ、中にはいい感じの描写のものもあるが、「男だったらストレートに行けよな」というところはある。

私がかつて使ったことがあるフィルターは、たとえば偏光フィルター。モノクロフィルムを使い、25mmのレンズに付けてスナップをしていた。偏光フィルターをつけると、コントラストがつきドラマチックなイメージになるが、25mmのレンズにつけると四隅がケラレて、ちょっと古めかしい写真になった。

あとはコダクロームを詰めて、アンバー系のフィルターで撮影していた時期もあった。ちょっとアンダー目に撮ると濁ったような色になって、それが気に入っていた。


仕事で使うのはLBフィルターやCCフィルターだけど、モノクロで本の書影を撮影する仕事があって、その時はいろんな色のフィルターを用意していた。たとえば黒バックでタイトルに赤い文字が入っていると、モノクロ化した時に文字も黒くなって目立たなくなってしまう。そこで、赤やオレンジのフィルターを使って、文字の色を抜くのだ。

今だったら、デジカメで撮影してフォトショップのチャンネルミキサーなんかを使えば簡単に出来る作業だが、昔はこれを撮影時にやっていた。ホワイトバランスもデジカメなら簡単にとれるから、LBフィルターやCCフィルターの出番もなくなってしまった。

この連載ではいろんな安っぽいレンズに注目してきたので、フィルター方面に頭は行ってなかったのだが、今度はフィルターにちょっかいを出してみたい。

●ムラムラフィルターを作る

まず、一番簡単なフィルターは塩ビなどの透明なものをレンズ前にかけてしまうこと。レンズ保護のための素通しフィルターでもコートがかかっていて、けっこうな値段がするが、ただの塩ビをかけてしまうことにより描写は劣化する。この劣化の具合を楽しむというわけだ。透明なものならなんでもいい。ビニール袋でもファイルを入れるクリアケースでも……。傷ついて曇っていればそれも味になる。

次に考えたのは木工用ボンドをその透明フィルタに塗るということだ。昔、カメラ雑誌で、フィルターにジェルをムラムラに塗るという方法を読んだ覚えがある。ただ、ジェルではベトベトしてしまうし、一回一回塗るというのも面倒だ。そこで、乾いた時に透明になる木工用ボンドというのを思いついたというわけだ。

結果どうなったか? 木工用ボンドではちょっと透明性が悪くなった。特に厚く塗った部分では白っぽさが残ってしまう。何かもっと透明になるものはないかと思って家人に訊ねたらトップコートがいいんじゃないかと言われた。ネイルデザインの最後に施す樹脂のコーティング剤だ。

これはなかなか調子がいい。透明度が高く乾きも早い。100円ショップやコンビニで簡単に入手できるところもいい。このムラムラフィルターの作り方としては、

◇まず塩ビ等、透明なものを用意する。いろんな商品のパッケージに使われているので、買わなくとも身の回りに何かあるはずだ。

◇その透明なシートをハサミで適当なサイズに切る。どんな形でも構わないが、PDFで型紙を作ったので、良かったらお使い下さい。

◇あとは、トップコートをムラムラに塗ればいい。ポイントとしては、真ん中あたりにあまり塗っていない部分を残しておくこと。全部ムラムラにしてしまうと本当にわけのわからない写真になってしまう。まあそれもいいですが……

撮影をする際はフィルターを手に持って歪み具合を確認しながら、シャッターを切ればいい。

◇作例と型紙
< http://kitschlens.cocolog-nifty.com/blog/
>

その他作ってみたのはクロスフィルター。これはクリスマスのイルミネーションなんかを撮ると光源が十字にキラリンを光るやつだ。どんな仕組みなのかと思ってフィルターメーカーのホームページで調べたら、格子の筋が入っているのだと分かった。では、カッターで切り込みを入れればいいのかと思い実験してみた。

これもキッチュレンズ工房の方に写真を載せておくが、一応クロスにはなった。まだまだ改良の余地はあるが、こんな風に自分でできるとは思っていなかった。さらに6本線の光条が入るスノークロスというのも作ってみた。一応これも成功かな(?)

フィルターはフィルターでいろいろと遊べそうだな。

【うえはらぜんじ】zenstudio@maminka.com
◇キッチュレンズ工房
< http://kitschlens.cocolog-nifty.com/blog/
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