デジアナ逆十字固め…[34]コンパクトシフトトイレンズ
── 上原ゼンジ ──

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工作が面倒くさそうなので避けていたことがある。コンパクトデジタルカメラにトイレンズを付け、しかもシフトさせてしまうという工作だ。一眼レフの場合は100円ショップで買ったレンズを取り付けることにすでに成功している。

最初にやったのは、表彰状を入れるような紙筒を使い、フタの部分をスライドさせることによりピント合わせを行なう方法だ。次にやったのは、ウェットスーツの素材にもなる薄いゴム生地を使いシフトさせる方法。そして最終的にはカッコイイ手作り蛇腹の開発にも成功した。

この蛇腹レンズの完成写真はブログにも載せてあるのだが、最近「どちらで手に入れることが出来ますでしょうか。入手先、価格などお教えいただければ幸いです」というメールをプロカメラマンからいただいてしまった。もちろんこんなものは売ってないですねえ。ぜひ作ってみていただきたいと思います。


なぜコンパクトカメラで試さなかったのかと言えば、レンズをはずすことができなかったからだ。カメラのレンズの前に別の凸レンズを付けるとどうなるかというと、クローズアップ撮影ができるようになる。だから、虫眼鏡を使ってクローズアップ撮影をしてみましょう、というような実験は昔からある。

しかし、問題は近くのものにはピントが合うのだが、遠景にピントが合わなくなってしまうということ。これではちょっとつまらない。たぶん凹レンズをどこかにつければいいんだろーなー、と思いつつ放っておいた。

ところが最近工作に使い始めた粘着ゲル(PLUSのリピタック)が、かなり使い勝手がいいので、これを使えばなんとかなりそうな気がしていた。試しに100円オペラグラスを分解して取り出した凹レンズをリピタックでカメラのレンズ前に取り付けてみる。もちろんレンズに直接貼るのではなくリピタックをドーナッツ型に切ってレンズの周囲に貼るのだ。

何度も貼ったり剥がしたりが簡単にできるので、仮止めにはちょうどいい。そしてその先には手に持った凸レンズをかざしてみる。すると遠景にもピントが合うことが確認できた。

「なんだ、簡単にできるじゃん」。「レンズ設計のすべて」とか「写真レンズの基礎と発展」とかレンズ関係の本をいろいろ買ってみたけど、そんなの必要なかった。カメラを支えておく手と凹レンズを支えておく手、そして凸レンズを支えておく手の三本があれば、もう少し早く気づいてのだが……

●まず蛇腹を試す

どう工作をするのかは決めていた。蛇腹でレンズを取り付けるのだ。コンパクトカメラに蛇腹が付いていたらカワイイんじゃないだろうか。カワイイ物大好きオジサンとしては、ぜひともチャレンジしてみたい工作だ。で、蛇腹を取り付けるIXYのレンズの辺りのサイズを測ってみる。レンズの先に付けるとなると24mm角になることが分かった。随分と小さい蛇腹だ。

まず、Illustratorで図面を作る。これができるだけでもIllustratorを習得しておいた価値があった。若い頃はロットリングを使って版下を作ったもんじゃがのう。

プリントしようと思ったら黒い紙がなかったので、とりあえず白い普通紙に出力してみる。そして5mm間隔で山折り谷折りを繰り返して蛇腹を作り上げるのだが、これはけっこう手先の器用さが要求される。ブレードランナーにちっちゃい折り紙を折る男が登場するが、まああれぐらいですよ。

以前一眼レフ用に蛇腹を折った時にはそんなに大変とは思わなかったが、この小さな折り紙ではけっこう時間がかかってしまった。折りが完成すると、蛇腹の前後に凸レンズと凹レンズを付ける。そして最後に粘着ゲルを使ってカメラに取り付ければいい。

うーむ、イマイチ(笑)。白い紙じゃなくて、黒にすれば良かった……。黒ければカメラの蛇腹っぽいが、白じゃあねえ……。試作品といえどもあまりにいい加減だと愛情が湧かない。しかもピントが合わないんですけど(苦笑い)

時間をかけてオレは何をやっていたんだ。ぢつと手を見る……。いや、手を見たってしょうがないね。なんか改造する気もおきない。ものすごいダメージ。グッタリ……。それにこんな面倒臭い工作は人にもすすめられないな。さてどうしよう。

もっと簡単な工作はないだろうか。小さい蛇腹を折るのはナシだ。もうちょっと柔らかい素材を使えば、シフトさせることもできそうだ。何かフニャフニャしたような素材はないだろうか? たとえばウェットスーツに使うような薄いゴムの生地……。

私はおもむろに工作材料箱をたぐり寄せ、中からゴム生地をむんずと掴みだすと工作を始めた。まず、2センチ幅の帯を作る。そしてレンズの鏡筒にくるりと巻いてテープで留める。そして先の方に凸レンズをテープで留める。レンズ側には凹レンズが粘着ゲルで付けてある。これで完成。所用時間は5分。

では、テスト撮影開始。今度はピントも合って、ちゃんと写った。あんまりカッコよくはないんだけど。念願であったコンパクトデジタルカメラのシフトトイレンズが出来上がった。方向性は間違っていない。あとはもう少しカッコよく工作できれば、大きな広がりを持つこととなるだろう。

【うえはらぜんじ】zenstudio@maminka.com
◇キッチュレンズ工房
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