デジアナ逆十字固め…[39]コンデジで真四角な写真を
── 上原ゼンジ ──

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Holgascape―THE WORK BOOK OF HOLGAミクシィの「キッチュレンズ工房」コミュには、なかなかの強者達が集ってきた。たとえば最近ビックリしたのは、EOS-1 Dsにホルガのレンズを着けてしまった人。初めにレンズだけを見た時には「ふ〜ん」という感じだったのだが、EOSのボディにちょこんとホルガレンズがくっついた状態の写真を見た時には「むむっ!」という感じになった。

さらに、それがシフトした状態の写真を見た時には「おおお!」に変わった。EOSを正面から写したもので、上下に11ミリずつ可動するのだそうだ。それが3枚の写真で示されている。もう、完全に私の工作能力やレンズに対する知識を上回ってますね。まあ、そんな人はいくらでもいると思うけど(笑)

で、さらに凄いところは、同じカットをシフトさせながら三枚撮影して、後で貼り合わせてるんだって……、そうすると2000万画素ぐらいになるそうな。ううむ、何を考えてるんでしょう……じゃなくて、本当に素晴らしい。ホルガレンズの味を生かしながら、デジタルで大伸ばしもできるような写真を撮るためにわざわざ工作をしたというわけだ。


私はホルガやロモといったトイカメラは、横目で見ながらちょっと距離を置いてきた。だから、それぞれがどんな描写をするのかということに関しては良く分からなかった。今回あらためてホルガで撮った写真を見てみたが、一番の特徴は、画面の中心部と周縁部での解像感の違いだろう。ちゃんとピントが合っている写真でも、周縁部はデローンとした描写になっている。

普通はこんなカメラは売ってはいけないと思うのだが、現役で販売され多くのファンがいるというのはすごいことだと思う。私はいままで色々とレンズの工作をしてきたが、蛇腹式にしてレンズをぐにゃっと曲げてしまうことによって、妙な感じの描写を得ようとしてきたので、あまり周縁部の描写の悪さのみを味わおうというような態度ではなかった。

しかし、ホルガの描写をじっくり見てみると、もう少し周縁部のダメダメ感を追求してみてもいいのかなという気になってきた。私がテストに使ってきたニコンD200というのは、撮像素子がAPS-Cだから、焦点距離は1.5倍になる。たとえば50mmのレンズを着けると75mm相当になる。つまり、トリミングするような感じになりレンズの周縁部は使っていないということだ。

これは自作レンズの場合も同様で、1.5倍になるので、周縁部の描写の悪い部分は切り捨ててしまうことになる。つまり、撮像素子が小さなデジカメでは、周縁部は使いにくくなってしまうということを意味する。

では、デジカメであえて、その周縁部を使うためにはどうすればいいのだろうか? ひとつは撮像素子からレンズを離すこと、そして直径の短いレンズを使えば良さそうだ。そこで私は、今までに集めたレンズをひっくり返してみた。しかし、せいぜい直径20ミリ程度であまり小さなものはなかった。

だいたい私が集めたものというのは、100円ショップなどで買ってきた、オモチャの双眼鏡やルーペの類なので、あまり小さいと役に立たない。ネットでも調べてみたのだが、10〜15ミリぐらいのレンズというのは探し出すことができなかった。何かないものかと考えて思いついたのが、ジャンク品のコンパクトカメラを買って、分解してレンズを取り出すことだった。

●久しぶりに分解に挑戦

レンズの分解は以前に経験済みだ。この連載でも紹介したが、結局半端なところで作業は中断したままだ。まあ、でもあのレンズはちょっと大きかったから、たとえ分解できたとしてもうまく使えなかったかもしれないけどね。

で、ジャンクカメラがありそうな所ということで、新宿のマップカメラに行って探してきた。そして買ってきたのが、オリンパス「OZ80」とペンタックス「ESPIO115」。それぞれ1,050円と840円だった。

家に持ち帰ると早速オリンパス「OZ80」の分解を始める。前回、レンズをバラした時には精密ドライバーの使い方がよく分からずに、どんどんネジ山を潰してしまい、哀しい思いをした。しかし今回はなんとなくコツが掴めてきたようだ。手のひらでドライバのお尻を押しながら、指先で回転させる。一番初めの力のいれ加減が重要なようだ。

しかし、見える範囲のネジをはずしても、いっこうにバラバラになってくれる気配はない。私は癇癪を起こし、ハンマーで思い切り叩きつぶしてしまった……というのはウソでペンチを使って少しずつ、プラスチックのボディーを引きむしって行った。まあ、格好良くないけど欲しいのはレンズだけなので、この方法が一番手っ取り早いのではないだろうか。

結局カメラをバラし終え、ファインダー等も含め10個のレンズと2つのプリズムを取り出すことに成功。しかもレンズ径も15ミリ前後だったので、ちょうど良さそうだ。

初めは一眼レフを使って、レンズをいろいろ組み合わせてみたのだがうまくいかず、コンパクトデジカメで試してみた。そしてあるレンズ一枚をカメラの前5ミリ程度のところにかざしてシャッターを切ると、イメージしていたような感じの写真が撮れることがわかった。つまり、レンズの端っこが画面に入ってしまい、画面中央の描写はいいのだが、周縁部が流れてしまうような写真……。

この写真をうまく真四角にトリミングすれば、四隅がちょっと暗くなり、周縁部はモチャッしつつも、画面中央の描写はそんなにもひどくない、ホルガっぽい写真になるということだ。シフトやアオリの仕組みを作らず、菓子箱で工作をすればかなりシンプルなレンズができあがる。

コンパクトデジカメでホルガっぽい描写が得られれば、こんなに楽なことはない。まあ、ホルガファンにこの写真がホルガっぽいと認めて貰えるのかはわからないけど、なかなか面白いんじゃないだろうか。

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真四角な写真のフレーミングを決めるために、カメラの裏側の液晶画面には、黒くて真四角なマスクを作って貼ってみた。これでフレーミングもきっちりと決められる。これは画期的だなあと思っていたのだが、自分で過去に同じようなことをしていたことを思い出した。

それはまだフィルムを使っていた頃の話で、フレームは真四角で粗粒子表現をしてみたいと思った私は、普通の一眼レフで撮影し、後からトリミングすることを思いついた。ただ、画面を覗いた時に真四角には見えないので、ファインダースクリーンを取り出し、両サイドを油性マジックで黒く塗りつぶしてしまった。

これで、ファインダーを覗けば真四角な世界が見えるのだが、撮影したフィルムには見えていなかった部分も写ってしまっている。そこで、ベタ焼きから写真を選ぶ時には、フィルムサイズに作った真四角なマスクを当てて見るようにした。考えてみれば、私は昔っからこんなことばかりしてきたんだなあと思う。

コンデジで真四角な写真を撮るというのは、なかなかに面白いということが分かった。これでまたしばらくは遊べそうだ。

【うえはらぜんじ】zenstudio@maminka.com
◇キッチュレンズ工房
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●展覧会案内
超芸術探査本部トマソン観測センター報告発表会2007
< http://www.st.rim.or.jp/%7Etokyo/thomason/
>

会期:3月15日(木)〜25日(日)11:00〜19:00
会場:香染美術(東京都杉並区阿佐ヶ谷北1-10-1 1F)
1.未発表〜新規報告書の展示公開
2.特別企画/墨田区集中探査報告「新東京タワーのできるあたり」
・3月24日(土)17時〜19時トマソン物件スライド発表会
報告したい物件のある方は当日スライド、データー、写真をお持ちください。


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by G-Tools , 2007/03/22