ビー玉に映った世界を撮影すると、けっこう面白い感じになるので、もう少しビー玉方面を掘り下げてみたいと思っていた。そして、気泡の多いレトロビー玉や水晶玉にもちょっかいを出してみたが、今度は同じ透明な玉つながりということで、ちゃんとした光学レンズである球レンズを試してみることにした。
球レンズは、「何か透明な玉はないか?」とネットを徘徊するうちに発見した。光ファイバ同士の接続に使ったり、さらに加工してカメラ付き携帯電話などに使われているらしい。値段は2000〜3000円程度のようだが、小売りをしているようなものではないらしい。
とりあえず、あるメーカーに「一個譲っていただけないか」とメールをしてみたが、返事は来なかった。メールチェックもしないようなメーカーだったのか、無視されたのかは不明だ。ちょっぴり気が萎える……。
球レンズは、「何か透明な玉はないか?」とネットを徘徊するうちに発見した。光ファイバ同士の接続に使ったり、さらに加工してカメラ付き携帯電話などに使われているらしい。値段は2000〜3000円程度のようだが、小売りをしているようなものではないらしい。
とりあえず、あるメーカーに「一個譲っていただけないか」とメールをしてみたが、返事は来なかった。メールチェックもしないようなメーカーだったのか、無視されたのかは不明だ。ちょっぴり気が萎える……。
しかし、どうしても欲しゅうてたまらん状態になってしまったので、再度別のメーカーに問い合わせをしてみた。すると今度は返事があった。しかし、商社を紹介するので、そちらと交渉してみて欲しいという返事だった。
うーむメンドクサイ。「商社と交渉してみたが、一個だと売ってくれなかった」とウソをつき、「直接売ってくれないか」と言ってみた。するとオーケーだが、取り引きを開始するにあたり、会社同士で書面を交わす必要があるという。私は有限会社マミンカの代表取締役として、そのメーカーと取り引きをする決断をした。
一週間ほどしてブツが届いた。買ったのは直径10ミリのガラス玉のはずだが、でかい段ボールに入って届けられた。なかにはそのメーカーが製造しているさまざまな製品のカタログも入っていた。営業のお兄ちゃんは球レンズを1000個ぐらい発注してくれるんじゃないかと期待してるのかな。でも、もういらないよ……。
今回買った球レンズは、ビー玉なんかとは違って氏素性がはっきりしている。材質、屈折率、設計波長、表面品質なんていうデータも揃っている。材質はBK7。BK7というのはボロシリケートクラウンガラスのことで、組成の分類は硼珪酸ガラス。光学ガラスとしては一般的な材料のようだ。
光学ガラスというのは、レンズやプリズムなどに使われるガラスのことで、内部の屈折率が均等で光の吸収が少ないのが特徴。逆に言えば、今まで使っていたビー玉や天然水晶というのは、気泡や不純物、クラックなども入っており、内部で変な風に屈折したり、透明度が低かったりするということ。こういった違いが実際の撮影でどのような違いになって現れるのかということが、今回の実験の眼目だ。
●丸いレンズの工作法
丸いレンズの工作もだんだん慣れてきた。しかし、今回は直径が10ミリと、少し小さいのが難。今まではドーナッツ状の板を二つ作り、玉をその二枚で挟むという工作をしてきた。外側の丸も内側の丸もサークルカッターで簡単に切ることができたのだが、10ミリだと小さすぎてサークルカッターでは無理だ。そこでとりあえずはフリーハンドでカットすることにする。
いろいろ素材を試してみたが、バリが気になったりするので、最終的には白いスチレンボードを使うことにした。これは5ミリ厚だったので、サンドイッチにするとちょうど球レンズが隠れるサイズだ。スチレンボードには弾力があるので、穴を小さめに作って押し込んでしまえば、安定もする。
そして小さな穴を開けるのには、リーマーという工具を買ってきた。これは円錐(三角帽子)状で刃がついている工具だ。先端部分を小さく開けた穴に突っ込み、ぐりぐりと回転させていくと、だんだん穴が広がっていく。球レンズをはめて大きさを確認し、少しずつ穴のサイズを広げていくという方式は、なかなかこの工作にはいいようだ。
今まではノギスで玉の大きさを測り、サークルカッターを使って、玉よりも少し小さめの穴を開けるという方式をとっていた。しかし、この穴のサイズというのはけっこう微妙なので、合わなければ微調整して、カットし直さなければならない。しかし、リーマーを使って少しずつ調整できれば、何枚もドーナッツ板を切り直す必要はないし、弾力のある素材なら、ぴったりに作る必要もない。これは、今後球状レンズの工作をする上で、けっこういいやり方かもしれない
鏡筒の部分は、四角くカットしたポリプロピレンシートを丸めてテープで留める。そしてレンズのはまった円盤をやはりテープで留め、試作は完成。今回の工作の問題点は球レンズが、直径10ミリとひじょうに小さいこと。なるべくトリミングをせずに撮影するためには、この10ミリの円が画面いっぱいに広がることが望ましい。つまりかなりの近接撮影になるということだ。
今までは、タムロンの90ミリマクロを使って等倍までの撮影をしてきたが、さらに寄る必要がある。方法としては、レンズとボディの間に接写リングを入れる、それから、アダプターを使ってレンズを逆向きに取り付ける、というやり方がある。
いろんな組み合わせで試してみたが、今回の場合はニコンの60ミリマクロと純正オート接写リングPK-11Aという組み合わせで撮影することにした。撮影結果はブログのほうをご覧下さい。
◇キッチュレンズ工房
< http://kitschlens.cocolog-nifty.com/
>
今まで、普通のビー玉、天然水晶、光学球レンズと試してきたわけだが、それぞれに描写の違いがあった。まず今回の光学球レンズは、さすがに筋の良さというのを感じさせられた。レンズの中心部ではきちんとピントも合う。それが中心から離れるに従い拡散するような感じでボケていくのだが、それがひじょうに滑らかで、自然で美しい。
天然水晶の場合は、そんなにはっきりとしたピントの山はない。全体的に柔らかな描写になっている。周縁部のボケはいままで見たことのないようなボケ方で、なかなか面白いし、きれい。
ビー玉の場合も、光学レンズと比較すれば全体にボケた感じだ。水晶と比べた場合もB級感が漂う。ただし、そんなに安っぽいという感じでもない。ボケた部分での色の滲みは、ちょっと絵画的でもある。
けっきょく、どれも悪くないなあ、という感じだ。嫌みのないボケで気品すら感じさせる。この「玉シリーズ」の実験は大成功だ。あとはこれらのレンズを駆使して、もっといっぱい写真を撮ってみることにしよう。
【うえはらぜんじ】zenstudio@maminka.com
◇上原ゼンジ写真研究所
< http://www.maminka.com/zenlab/top.html
>
◇「デジカメでトイカメ!! キッチュレンズ工房 〜ピンホールに蛇腹、魚眼でレトロでアナログなデジタル写真を撮ろう!〜」上原ゼンジ著
→アマゾンで購入するなら
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/483992421X/dgcrcom-22/
>
うーむメンドクサイ。「商社と交渉してみたが、一個だと売ってくれなかった」とウソをつき、「直接売ってくれないか」と言ってみた。するとオーケーだが、取り引きを開始するにあたり、会社同士で書面を交わす必要があるという。私は有限会社マミンカの代表取締役として、そのメーカーと取り引きをする決断をした。
一週間ほどしてブツが届いた。買ったのは直径10ミリのガラス玉のはずだが、でかい段ボールに入って届けられた。なかにはそのメーカーが製造しているさまざまな製品のカタログも入っていた。営業のお兄ちゃんは球レンズを1000個ぐらい発注してくれるんじゃないかと期待してるのかな。でも、もういらないよ……。
今回買った球レンズは、ビー玉なんかとは違って氏素性がはっきりしている。材質、屈折率、設計波長、表面品質なんていうデータも揃っている。材質はBK7。BK7というのはボロシリケートクラウンガラスのことで、組成の分類は硼珪酸ガラス。光学ガラスとしては一般的な材料のようだ。
光学ガラスというのは、レンズやプリズムなどに使われるガラスのことで、内部の屈折率が均等で光の吸収が少ないのが特徴。逆に言えば、今まで使っていたビー玉や天然水晶というのは、気泡や不純物、クラックなども入っており、内部で変な風に屈折したり、透明度が低かったりするということ。こういった違いが実際の撮影でどのような違いになって現れるのかということが、今回の実験の眼目だ。
●丸いレンズの工作法
丸いレンズの工作もだんだん慣れてきた。しかし、今回は直径が10ミリと、少し小さいのが難。今まではドーナッツ状の板を二つ作り、玉をその二枚で挟むという工作をしてきた。外側の丸も内側の丸もサークルカッターで簡単に切ることができたのだが、10ミリだと小さすぎてサークルカッターでは無理だ。そこでとりあえずはフリーハンドでカットすることにする。
いろいろ素材を試してみたが、バリが気になったりするので、最終的には白いスチレンボードを使うことにした。これは5ミリ厚だったので、サンドイッチにするとちょうど球レンズが隠れるサイズだ。スチレンボードには弾力があるので、穴を小さめに作って押し込んでしまえば、安定もする。
そして小さな穴を開けるのには、リーマーという工具を買ってきた。これは円錐(三角帽子)状で刃がついている工具だ。先端部分を小さく開けた穴に突っ込み、ぐりぐりと回転させていくと、だんだん穴が広がっていく。球レンズをはめて大きさを確認し、少しずつ穴のサイズを広げていくという方式は、なかなかこの工作にはいいようだ。
今まではノギスで玉の大きさを測り、サークルカッターを使って、玉よりも少し小さめの穴を開けるという方式をとっていた。しかし、この穴のサイズというのはけっこう微妙なので、合わなければ微調整して、カットし直さなければならない。しかし、リーマーを使って少しずつ調整できれば、何枚もドーナッツ板を切り直す必要はないし、弾力のある素材なら、ぴったりに作る必要もない。これは、今後球状レンズの工作をする上で、けっこういいやり方かもしれない
鏡筒の部分は、四角くカットしたポリプロピレンシートを丸めてテープで留める。そしてレンズのはまった円盤をやはりテープで留め、試作は完成。今回の工作の問題点は球レンズが、直径10ミリとひじょうに小さいこと。なるべくトリミングをせずに撮影するためには、この10ミリの円が画面いっぱいに広がることが望ましい。つまりかなりの近接撮影になるということだ。
今までは、タムロンの90ミリマクロを使って等倍までの撮影をしてきたが、さらに寄る必要がある。方法としては、レンズとボディの間に接写リングを入れる、それから、アダプターを使ってレンズを逆向きに取り付ける、というやり方がある。
いろんな組み合わせで試してみたが、今回の場合はニコンの60ミリマクロと純正オート接写リングPK-11Aという組み合わせで撮影することにした。撮影結果はブログのほうをご覧下さい。
◇キッチュレンズ工房
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今まで、普通のビー玉、天然水晶、光学球レンズと試してきたわけだが、それぞれに描写の違いがあった。まず今回の光学球レンズは、さすがに筋の良さというのを感じさせられた。レンズの中心部ではきちんとピントも合う。それが中心から離れるに従い拡散するような感じでボケていくのだが、それがひじょうに滑らかで、自然で美しい。
天然水晶の場合は、そんなにはっきりとしたピントの山はない。全体的に柔らかな描写になっている。周縁部のボケはいままで見たことのないようなボケ方で、なかなか面白いし、きれい。
ビー玉の場合も、光学レンズと比較すれば全体にボケた感じだ。水晶と比べた場合もB級感が漂う。ただし、そんなに安っぽいという感じでもない。ボケた部分での色の滲みは、ちょっと絵画的でもある。
けっきょく、どれも悪くないなあ、という感じだ。嫌みのないボケで気品すら感じさせる。この「玉シリーズ」の実験は大成功だ。あとはこれらのレンズを駆使して、もっといっぱい写真を撮ってみることにしよう。
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◇上原ゼンジ写真研究所
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by G-Tools , 2007/07/19