2月の6日から8日にかけて、JAGAT主催の「PAGE2008」というイベントが行われたので、コンファレンスやセミナーに参加してきた。その中で「広色域印刷の品質を追求する─分光画像原稿で比較する」というコンファレンスが面白かったので、以下自分なりにまとめてみたい。
分光画像というのは、RGBの3バンドのセンサーではなく、多バンドのセンサーによって得られるスペクトルデータの画像のことだ。多バンドのセンサーというのは、正しくないのかな。普通のRGBのセンサーを持つデジタル一眼レフカメラを使い、フィルターによって波長を分けて記録を行う。
分光画像というのは、RGBの3バンドのセンサーではなく、多バンドのセンサーによって得られるスペクトルデータの画像のことだ。多バンドのセンサーというのは、正しくないのかな。普通のRGBのセンサーを持つデジタル一眼レフカメラを使い、フィルターによって波長を分けて記録を行う。
もともと光は7色という言い方があるけれど、本当はもっと細かい波長に分けることが可能だ。それをRとGとBという組み合わせで表すことも可能なので、この三原色による記録や再現というのが重宝されているけれど、細かい波長ごとに記録ができれば、より正確な色を捉えることが可能になる。
これは色の測定器の場合にも同じことが言える。たとえば、エックスライト社のEYE-ONEというカラーマネージメントツールには、精度が高く値段も高い分光光度計と、フィルタ方式(3チャネル比色分析センサ)の安価な測定器の2種類が用意されている。この分光方式の測定器を使って測ったデータを見てみると、ナノメートルという単位で、波長を細かく分けて計測した数値が記録されている。
一方のフィルタ式の場合は、3バンドのデータしか記録されていない。画像の記録もこの色の測定器と同様に、多バンドでを行えば、正確で、より広い範囲の色が記録できるということで、現在さまざまな研究が行われている。
はじめに話を聞いた時のマルチスペクトルカメラのバンド数は16バンドだった。これは、ナチュラルビジョンというプロジェクトで行われていた方法だ。どうやって撮影するのかというと、16枚のフィルターが付いた円盤が用意されていて、カメラのレンズの前で回転させながら、16回シャッターを切るという方式だった。
確かに広い色域の記録が可能だったけど、16回もシャッターを切って一つの画像を作り上げるというのは、ちょっと実用的じゃあないよなー、と思っていた。すると、その次に知ったマルチスペクトルカメラは6バンドになり、しかもフィルターをかけた画像とかけない画像の2枚だけ撮影しておけばオーケーというものになっていた。これならかなり実用に近づいたと言えるだろう。
特殊なフィルターを装着した場合、しない場合で2回シャッターを切るので、動きのある被写体の撮影には向かない。動きのない被写体の場合でも、フィルターを着けた時、着けない時で微妙にズレてしまうこともあるので、それはソフト的に修正を行うそうだ。それが、このコンファレンスで報告のあったNTTデータによる「6バンドカメラ静止画色再現システム」だ。
●記録から色再現へ
この「広色域印刷の品質を追求する─分光画像原稿で比較する」というコンファレンスでの報告は、6バンドの分光カメラで撮影を行い、それをサムスンで新しく開発された「超Adobe RGB」ディスプレイに表示させたり、広色域の印刷物に再現した場合にどうなるのか? という実験に基づいている。
まず、撮影データをPhotoshopでのLabモードに変換し、3Dのカラースペース上にプロットした結果で言えば、通常の撮影で得られるよりも、かなり広い範囲の色が記録できていたこと分かった。
今、sRGBだのAdobeRGBだの言っているけど、撮影時に記録できる色の範囲というのは、やはり広いほうがいい。きちんと記録できた色を出力先のメディアに合わせて変換することはできるけど、記録できていない色を作り出すのには、ちょっと無理があるからだ。
LEDのディスプレイへの表示と実際の被写体を見比べることもできたが、これはかなり近い色に見えた。つまり、元の色を忠実に記録し、再生することができたというわけだ。最近はディスプレイやプリンタの色再現域が広がっているが、入力側のデジタルカメラで記録できる色の範囲が広くならないと意味がないよな、と思っていたので、こういった分光カメラの技術が研究されれば面白いことになりそうだ。
さらに、印刷した結果はどうだったのか? 現在、広い色再現域を持つ印刷物には、6色とか7色のインキを使う多色刷りと4色のままCMYのインキの彩度を上げる方式がある。たとえば、普通の4色プロセス印刷であれば緑色の再現は、イエローインキとシアンインキの掛け合わせにより行う。それを始めから緑の鮮やかなインキを用意しておけば、緑色の再現性が良くなるというわけだ。つまり、特色をプラスするようなイメージだ。
いろんなパターンの印刷物を見ることができたが、結果的に通常の4色では再現できないような色が再現できているという意味では、これもけっこう可能性のある面白い分野だ。ただ、よく見てみれば、階調再現性や色味にちょっと違いがある。
たとえば、グリーンのインキを使えばグリーンの再現は良くなるが、シアンインキやイエローインキとの関係は複雑になり、プロファイルを作成するのも大変になってくるらしい。
つまり、Labで記録されている色をメディアに合わせて4色や6色や7色に変換する際のプロファイルの出来というのが、色や階調再現、品質に大きな影響をおよぼすということだ。
また今回のデータに関して言えば、もともと広い色再現域の色が記録できていたわけだから、そのままうまく印刷の再現域内にコンバートできればそれで良しのはずだった。ただ、通常こういった広色域の印刷物を作る場合には、元データに鮮やかな色が記録できていないケースが多い。
そこで、変換時に彩度が上がるようなプロファイルを使うことがあるそうだが、それを今回のようなもともと鮮やかな色を含むデータに適用すると、鮮やかになりすぎて色が飽和してしまうというわけだ。色をマッチさせつつも、階調再現性に問題が起きない、個々の印刷法にあったプロファイル作りというのがキモになるということだ。
今回の実験をプロデュースしたのは、MD研究会のマスター郡司だが、なかなか興味深い実験だったと思います。分光による撮影というのは、医療分野や文化財の記録など、さまざまな分野で利用できるため注目が集まっているが、もちろん写真表現という意味でも期待ができる楽しみな技術だ。
・広色域印刷の品質を追求する─分光画像原稿で比較する(Jagat)
< http://www.jagat.or.jp/PAGE/2008/session/session_detail.asp?sh=3&se=17
>
・ナチュラルビジョン
< http://www2.nict.go.jp/q/q262/3107/end102/NVHP(new)/index-j.html
>
・ColorDesiner(NTTデータ)
< http://www.colordesigner.jp/
>
・超AdobeRGBディスプレイ(サムスン)
< http://www.samsung.com/jp/presscenter/japan/japan_20080219_0000399128.asp
>
【うえはらぜんじ】zenstudio@maminka.com
◇上原ゼンジのWEBサイト
< http://www.zenji.info/
>
◇「カメラプラス トイカメラ風味の写真が簡単に」(雷鳥社刊)
< http://www.maminka.com/toycamera/plus.html
>
これは色の測定器の場合にも同じことが言える。たとえば、エックスライト社のEYE-ONEというカラーマネージメントツールには、精度が高く値段も高い分光光度計と、フィルタ方式(3チャネル比色分析センサ)の安価な測定器の2種類が用意されている。この分光方式の測定器を使って測ったデータを見てみると、ナノメートルという単位で、波長を細かく分けて計測した数値が記録されている。
一方のフィルタ式の場合は、3バンドのデータしか記録されていない。画像の記録もこの色の測定器と同様に、多バンドでを行えば、正確で、より広い範囲の色が記録できるということで、現在さまざまな研究が行われている。
はじめに話を聞いた時のマルチスペクトルカメラのバンド数は16バンドだった。これは、ナチュラルビジョンというプロジェクトで行われていた方法だ。どうやって撮影するのかというと、16枚のフィルターが付いた円盤が用意されていて、カメラのレンズの前で回転させながら、16回シャッターを切るという方式だった。
確かに広い色域の記録が可能だったけど、16回もシャッターを切って一つの画像を作り上げるというのは、ちょっと実用的じゃあないよなー、と思っていた。すると、その次に知ったマルチスペクトルカメラは6バンドになり、しかもフィルターをかけた画像とかけない画像の2枚だけ撮影しておけばオーケーというものになっていた。これならかなり実用に近づいたと言えるだろう。
特殊なフィルターを装着した場合、しない場合で2回シャッターを切るので、動きのある被写体の撮影には向かない。動きのない被写体の場合でも、フィルターを着けた時、着けない時で微妙にズレてしまうこともあるので、それはソフト的に修正を行うそうだ。それが、このコンファレンスで報告のあったNTTデータによる「6バンドカメラ静止画色再現システム」だ。
●記録から色再現へ
この「広色域印刷の品質を追求する─分光画像原稿で比較する」というコンファレンスでの報告は、6バンドの分光カメラで撮影を行い、それをサムスンで新しく開発された「超Adobe RGB」ディスプレイに表示させたり、広色域の印刷物に再現した場合にどうなるのか? という実験に基づいている。
まず、撮影データをPhotoshopでのLabモードに変換し、3Dのカラースペース上にプロットした結果で言えば、通常の撮影で得られるよりも、かなり広い範囲の色が記録できていたこと分かった。
今、sRGBだのAdobeRGBだの言っているけど、撮影時に記録できる色の範囲というのは、やはり広いほうがいい。きちんと記録できた色を出力先のメディアに合わせて変換することはできるけど、記録できていない色を作り出すのには、ちょっと無理があるからだ。
LEDのディスプレイへの表示と実際の被写体を見比べることもできたが、これはかなり近い色に見えた。つまり、元の色を忠実に記録し、再生することができたというわけだ。最近はディスプレイやプリンタの色再現域が広がっているが、入力側のデジタルカメラで記録できる色の範囲が広くならないと意味がないよな、と思っていたので、こういった分光カメラの技術が研究されれば面白いことになりそうだ。
さらに、印刷した結果はどうだったのか? 現在、広い色再現域を持つ印刷物には、6色とか7色のインキを使う多色刷りと4色のままCMYのインキの彩度を上げる方式がある。たとえば、普通の4色プロセス印刷であれば緑色の再現は、イエローインキとシアンインキの掛け合わせにより行う。それを始めから緑の鮮やかなインキを用意しておけば、緑色の再現性が良くなるというわけだ。つまり、特色をプラスするようなイメージだ。
いろんなパターンの印刷物を見ることができたが、結果的に通常の4色では再現できないような色が再現できているという意味では、これもけっこう可能性のある面白い分野だ。ただ、よく見てみれば、階調再現性や色味にちょっと違いがある。
たとえば、グリーンのインキを使えばグリーンの再現は良くなるが、シアンインキやイエローインキとの関係は複雑になり、プロファイルを作成するのも大変になってくるらしい。
つまり、Labで記録されている色をメディアに合わせて4色や6色や7色に変換する際のプロファイルの出来というのが、色や階調再現、品質に大きな影響をおよぼすということだ。
また今回のデータに関して言えば、もともと広い色再現域の色が記録できていたわけだから、そのままうまく印刷の再現域内にコンバートできればそれで良しのはずだった。ただ、通常こういった広色域の印刷物を作る場合には、元データに鮮やかな色が記録できていないケースが多い。
そこで、変換時に彩度が上がるようなプロファイルを使うことがあるそうだが、それを今回のようなもともと鮮やかな色を含むデータに適用すると、鮮やかになりすぎて色が飽和してしまうというわけだ。色をマッチさせつつも、階調再現性に問題が起きない、個々の印刷法にあったプロファイル作りというのがキモになるということだ。
今回の実験をプロデュースしたのは、MD研究会のマスター郡司だが、なかなか興味深い実験だったと思います。分光による撮影というのは、医療分野や文化財の記録など、さまざまな分野で利用できるため注目が集まっているが、もちろん写真表現という意味でも期待ができる楽しみな技術だ。
・広色域印刷の品質を追求する─分光画像原稿で比較する(Jagat)
< http://www.jagat.or.jp/PAGE/2008/session/session_detail.asp?sh=3&se=17
>
・ナチュラルビジョン
< http://www2.nict.go.jp/q/q262/3107/end102/NVHP(new)/index-j.html
>
・ColorDesiner(NTTデータ)
< http://www.colordesigner.jp/
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・超AdobeRGBディスプレイ(サムスン)
< http://www.samsung.com/jp/presscenter/japan/japan_20080219_0000399128.asp
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【うえはらぜんじ】zenstudio@maminka.com
◇上原ゼンジのWEBサイト
< http://www.zenji.info/
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◇「カメラプラス トイカメラ風味の写真が簡単に」(雷鳥社刊)
< http://www.maminka.com/toycamera/plus.html
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