気になるデザイン[12]「DTPデザイナー」って何?
── 津田淳子 ──

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以前から気になっている言葉がある。それは、

DTPデザイナー

という言葉。ここ何年かは、もう市民権を得ているのでしょうか。

今、googleで検索してみても、なんと501,000件もひっかかる。ひょえー。DTPオペレーターは指定紙からデータを作り上げる仕事、対してDTPデザイナーはDTPソフトでデザインするのが仕事、という区分のようですな。

お仕事カタログ[DTPデザイナー・DTPオペレーター]
< http://www.keikotomanabu.net/job/s/c20-015_00030001.html
>



では、DTPデザイナーとグラフィックデザイナー、エディトリアルデザイナー、デザイナーとの違いはなんぞや。今、後者のデザイナーだって、多くはDTPソフトを使ってデザインしているではないか。

WebデザイナーはWebサイトをデザインする人。エディトリアルデザイナーは出版物をデザインする人。ブックデザイナーは本をデザインする人。パッケージデザイナーはパッケージをデザインする人。ということからすると、DTPデザイナーという名前の付け方はなんだかおかしい。

DTPデザイナーは、フライヤーやリーフレット、パンフレット、DM、ポスター、また雑誌や書籍などをデザインするのが仕事のようだが(ググってみたらそういうことらしい)、それならグラフィックデザイナーだったり、エディトリアルデザイナーだったり、両者ともなんか違うな、ということならただ単にデザイナーでいいのではないか、と思うのだが、そうはなっていない。私はそこになんだかちょっと嫌な感じを受ける。

私は4年くらい前まで、DTP専門誌の編集を6年ほどしていたが、そのときDTPデザイナーという言葉を誌面で使わない、と決めていた。私がそのDTP専門誌に携わり始めた頃にはDTPデザイナーという言葉自体、耳にしたことがなかったような気がする。それがいつの頃からか、Webや求人誌、お稽古雑誌などでそういう言葉を目にするようになってきた。

DTPデザイナーという言葉がこれほど多く登場する前は、各種デザイナーか、もしくはDTPオペレーターという言葉だけだった。たしかに、DTPオペレーターとして会社に入っても、オペレーション業務だけでなく、自分でデザインしなければならなくなる仕事も往々にして出てくる。そうなると、DTPオペレーターという仕事の範囲からは確かに出ていることになる。そうなると、DTPデザイナーと呼ぶようになるのだろうか。

でもDTPデザイナーという言葉には何か、グラフィックデザイナーとかエディトリアルデザイナーとか、ただ単にデザイナー、とかいうのは、ちょっと敷居が高い、そこでもう少し手軽な感じのするDTPデザイナーという言葉を使ってみよう、DTPソフトを学べばなれるんですよ、そんな感じが入っているんではないか。そんな邪推をしてしまう。

しかし、デザインをする人ならば胸を張って「デザイナーです」と言えばいいと思うし、オペレーションをする人ならば胸を張って「オペレーターです」と言えばいいのだと思う。DTPデザイナーはそのどちらでもなく、デザイナーですと言うほどデザインができるわけではないし、オペレーターです、というのでは物足りない、といった感じがしてならないのだ。ケッ。(妄想し過ぎでしょうか……)

そうそう、今回検索していて新たに気になったのが「DTPオペレーターからグラフィックデザイナーへステップアップ」というような記載。けっこうたくさん目にしたのだが、これもなんだかなぁ、という気がした。オペレーターからデザイナーへって、ステップアップなんでしょうか。違うと思うんですが。

そういえば、私は、いままでお目にかかった方の中で、自分の職業を「DTPデザイナーです」と言った人はひとりもいない。名刺の肩書きにそう書いてある人もひとりもいないなぁ。これはいったいどういうことだ。うーむ。

【つだ・じゅんこ】tsuda@graphicsha.co.jp
目に飛び込んでくる、銅色箔押ししたでっこぼこな表紙が目印の『デザインのひきだし vol.5』は、来月初旬に書店にならびます。凸凹な印刷や加工っておもしろいですな!
最近作った本は『デザイン・配色のセオリー』『デザイン事務所の封筒・名刺・ビジネス文具コレクション』『しかけのあるブックデザイン』など。
< http://www.graphicsha.co.jp/
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