デジアナ逆十字固め…[84]世界初? ドリルドライバ・カメラ
── 上原ゼンジ ──

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今回は久しぶりにくだらない工作の話。もしかしたら「世界初」なんじゃないかなーと思っている画期的な発明。でも世界は広いから、同じようなことを試した人はいるかもしれないけど……。

発想のきっかけは、長時間露光で何かできないかと考えていたこと。長時間露光というのは、瞬間で被写体を写し止めるのではなく、時間をかけて撮影をする方法。暗ければ写真は写らないから、仕方なくシャッタースピードが遅くなる場合もあるし、ブレなどの効果を狙う場合もある。

たとえば天体写真なんかで、時間をかければ星の動きを記録することができるし、川や滝でシャッターを開けっぱなしにしておけば、風景がブレていないのに対し、水だけが動いて雲のように白くなって写る。

同じようなことを街中でやれば、動いている人物が半透明になったり、いなくなったりする。夜中にそれをやれば、暗い中に車のヘッドライトの軌跡が浮かび上がるようになる。ライトを使った方法では、手に懐中電灯を持って字を書くなんていう方法もある。

面白いのは、以前この連載でも紹介したことのある「カメラトス」という方法だ。カメラを放り投げ、空中で撮影するのだが、昼間にやれば風景が歪んで写るし、夜間に撮影すれば、ライトの軌跡が面白いという、画期的な撮影法だ。

なんでこんな方法が生まれたのかと言えば、携帯電話にカメラがついたからだろうな。電話を買い替えれば不要になるし、軽くて衝撃にも強い。誰かが試しにやったことが、ネットのおかげで広まったということだろう。「Camera Toss」で検索をすれば、いろんな写真を見ることができる。

実際にやってみると、投げるモーションの途中でシャッターを押すとタイムラグのせいで空中でシャッターが切れるということが分かった。投げる時にひねりを加えるとか、いろいろ技があるみたいだが、まだそこまでは試していない。

ただ、放り投げなくても携帯を振り回しながら撮影してみれば、歪んで写るからちょっと試してみてください。まあ、放り投げて壊れてしまっても責任はとれないので、そちらの方は自己責任でお願いします(笑)



●カメラをぐるぐる回転させる

長時間露光でブレを表現する場合には、三脚を使ってカメラを固定し、被写体の方のブレを記録する方法と、カメラの方を動かして撮影する方法があるということになる。そして今回試してみたのは、後者の方法だ。

カメラを回転させながら撮影するには、どうしたらいいだろう? ということを考えていた時に目についたのが電動のドリルドライバだ。先端にドライバーをセットすれば、ネジを回すことができるし、ドリルをセットすれば穴を開けることができるという便利な工具。この先にカメラを取り付けたらどうなるだろう?

何がやりたいかというと、カメラのレンズを中心に回転させることだ。コマのように回転させることによって同心円状の模様ができるはず。ドリルの先っちょに何か金具を取り付け、うまく固定できれば、画期的なカメラが生まれるはずだ。そう思いつくと私は、忙しいにもかかわらず、ホームセンターへとカッ飛んでいた。

金物を扱うコーナーで物色して見つけたのが、「補助金具ステイ」(税込み210円)というL字の金具。これにカメラを取り付けるのだが、こういった買い物をする時には必ず現物を持っていくようにしている。ステイに実際にカメラを当ててみて大きさを確認するのだ。大きさを測っていくよりも手っ取り早いし確実だ。

ステイとともにボルトやナット類を購入して帰る。まず三脚穴を使ってネジでステイをカメラを取り付ける。そしてもう一方は長めのボルトをナットで固定し、ボルトの余った部分をドライバドリルの先端に突っ込んで締めれば完成。今回は切ったり貼ったりがなかったので、工作は簡単だった。

まず去年の暮れにビンゴの景品で貰ったカメラをくっつけてみることにする。科学と芸術の発展のための犠牲だな。ゴメンよ。しかしセッティングを考えていたら使えないことが発覚した。

一応この写真はシャッタースピードをコントロールして、ブレ具合の調整をするということがキモになる。つまりマニュアルでコントロールするか、シャッタースピード優先の露出オート機能がないとダメなのだ。そこで普段使っているリコーのGX100を使うことにする。これが壊れたりすると嫌なんだけど、ここまできて後戻りはできない。

カメラにはNDフィルターを着けた。NDフィルターというのはニュートラルデンシティーフィルターのことで、カラーバランスを変えずに光量を落とすことができる。つまり、シャッタースピードを遅くするためにつけるわけだが、昼間に長時間露光をしたい場合なんかに利用できる。GX100はこういったフィルタ類が使えるところもいい。

さて撮影。まず、カメラがすっぽ抜けて、ドンガラガッシャーンとなることを想定して、絨毯の上で回転させてみる。ワーッ、すごい音。しかも重心が合っていないので、ブルブルと震えてしまう。嫌だ、こんな撮影はしたくない!しかし、ここまで来て後へは退けない。

セルフタイマーを2秒に設定してシャッターを押す。そしてすぐにドリルドライバのスイッチも入れる。液晶を見ながら撮影できたことを確認し、スイッチを切る。はい、なんかよく分からないけど、グルグル回ったものが撮影できました。でもちょっとグルグルし過ぎだなあ。もう少しシャッタースピードを速くしてみるか。

何度か撮影を繰り返すが、本当に嫌になってきた。私が悪うございました。でも、これ以上はできねえです。だって音がすごいんだもん。まあ、普通に使う場合と比べて音がでかくなってるなんていうことはないと思うけど、なんかすごく心臓に悪い、暴力的な音がするカメラだ。

それにこの回転がカメラにおよぼす影響というのが、ちょっと分からない。まあ、多少の衝撃には耐えられるように設計されていると思うけど、耐回転テストなんていうのは、やってないだろうからなあ……。中で基盤やCCDが絡みあったりしたら困るし、溶けてちびくろサンボのトラみたいにバターにでもなったら目も当てられない。ここは勇気ある撤退をしよう!

ということで、人様にお見せできるような写真は撮れなかったんだけど、回転している姿を動画にしてみたので、その勇姿を見てやってください。

◇ドライバードリル・カメラの勇姿
< http://www.zenji.info/kitsch/doricame/doricame.html
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◇万華鏡写真の撮り方のページも作ってみた
< http://www.zenji.info/kitsch/Kaleidoscope.html
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◇万華鏡の動画も作った
< http://www.zenji.info/kitsch/Kaleidoscope/mirrorsystem.html
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◇上原ゼンジの新刊
「うずらの惑星 身近に見つけた小さな宇宙」(雷鳥社刊)
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