私はデザイン関連の書籍をつくるのが仕事だが、その中でさまざまな印刷用語に出会う。今まで聞いたこともないような言葉も多いので、その度に「なんですか? それは」とうるさがられても聞いている。
例えば「トムソン」と「ブッシュ」。なんだかどちらも人の名前のようなこの用語、ご存知でしょうか? 使い方としては「トムソンで抜いてください」とか「あのカードは仕上げにブッシュで角丸に抜きます」とかこんな感じかしら。
例文から推測できるように、「トムソン」も「ブッシュ」も、紙(またはフィルムなども)を型抜きする時に出てくる用語で、「トムソン」の方は一枚もしくは薄いものを数枚重ねたものを、型抜きする作業のことをさす場合が多い。これはその作業で使う「刃型」が「トムソン刃」と呼ばれることから由来していて、他には「ビク」とか、場合によっては「オートン」などとも呼ばれている。「ビク」は「ビクトリア打ち抜き機」という機械名の省略形で、「オートン」はそのまま機械名だ。どれも仕上がりや作業内容としては、ほぼ同じモノをさしている。
例えば「トムソン」と「ブッシュ」。なんだかどちらも人の名前のようなこの用語、ご存知でしょうか? 使い方としては「トムソンで抜いてください」とか「あのカードは仕上げにブッシュで角丸に抜きます」とかこんな感じかしら。
例文から推測できるように、「トムソン」も「ブッシュ」も、紙(またはフィルムなども)を型抜きする時に出てくる用語で、「トムソン」の方は一枚もしくは薄いものを数枚重ねたものを、型抜きする作業のことをさす場合が多い。これはその作業で使う「刃型」が「トムソン刃」と呼ばれることから由来していて、他には「ビク」とか、場合によっては「オートン」などとも呼ばれている。「ビク」は「ビクトリア打ち抜き機」という機械名の省略形で、「オートン」はそのまま機械名だ。どれも仕上がりや作業内容としては、ほぼ同じモノをさしている。
「ブッシュ」はトムソンとは違って、大量に重ねた紙を、鋼の刃型を使って一気に型抜きする方法のこと。トレーディングカードとかトランプとか、あとは厚い本を型抜きするときとかに使う。これも機械の名前から由来した呼び方だ。
どちらも知ってしまえばなんてことないが、最初は「ト、トムソンってなんだ?」と、頭の中は「超芸術トマソン」でいっぱいになったりしてしまった。いや、ホントに。
超芸術トマソン
< http://ja.wikipedia.org/w/index.php?oldid=24178387
>
このあたり、もしご興味あれば『デザインのひきだし4』で詳しく解説しましたので、立ち読みでもしてください。
デザインのひきだし4
< http://www.amazon.co.jp/dp/4766118693/
>
このように新しい用語に出会うのは面白いのだが、その使い方が間違われていることを気にすることもある。まあ、小さいことだし、お互いに通じていればそれでいいのですが、かなりの頻度で誤用されているなぁと思うのが「裏抜け」と「裏移り」だ。
この前も、色校を見て「これ、けっこう裏移りしますねぇ」とあるデザイナーに言われたのだが、いや裏移りはしていない。すぐに「裏抜けのことだなぁ」とはわかるものの、なんだかむずむずする。
「裏抜け」と「裏移り」、言葉も似ていて現象自体もさほど遠くないことではあるが、「裏抜け」とは、紙に印刷したときに、インキが紙の裏側にまで染み込んで、裏側からも表側の絵柄が見えてしまう現象。インキで刷った絵柄や文字が裏側から見ても見えてしまう状態のことで、薄い紙に刷ったときに起こりやすいですね。っていうか、かなり厚い紙だったりしない限り、多少は裏抜けしている印刷物が大半ではないでしょうか。
対して「裏移り」は、印刷した後、インキが乾ききらない状態で次の紙を重ねてしまって、重ねた紙にインキが転写されてしまった現象のこと。たまに書籍でもありますよね、前のページのインキが付いてしまって、ちょっときたなくなっているものが。私も以前、ちょっと特殊な本文用紙を使って本をつくったら、本文のかなりのページが裏移りしてしまったことがあった。でも、これは見本誌を先に50部だけつくる際に出たもので、本番はちゃんと乾いてから製本/断裁したので、ことなきを得ましたが。
「裏抜け」のことを「裏移り」と言う人はけっこう多いので、印刷会社さんも「これは裏抜けのことを言っているんだろうなぁ」と推測してくれますが、万一のことを考えると、やはり用語はちゃんと知っておきたいものですね。
「色校を見て『裏移りを改善してくれ』とデザイナーから言われたから、本番は印刷後の乾燥時間を長く取るように」と印刷会社の営業マンが現場に指示を出して仕上がったものの、デザイナーはそれを見て「裏移りがぜんぜん改善されてないじゃないか!」なんてことにもなりかねない。
こんなことを書いていて、ふと思い出したのが、デザインとは全然関係ないけれど「貯金」と「預金」という二つの言葉。どちらも同じモノの用に感じるけれど、ちゃんと意味に違いがあるんですな。さてみなさん、この二つの違い、ご存知ですか? 答えは次号を待て!
【つだ・じゅんこ】tsuda@graphicsha.co.jp
箔押しのことを完全網羅した『デザインのひきだし6』発売中! 「箔押しのA to Z」「板紙の魅力」の2大特集はどちらも必見です。他に最近作った本は『ハニカムペーパー・クラフト』『標準 印刷見本帳1 蛍光色×CMYK×マット/グロスニス編』『デザイン事務所の封筒・名刺・ビジネス文具コレクション』『しかけのあるブックデザイン』など。
< http://www.graphicsha.co.jp/
>
どちらも知ってしまえばなんてことないが、最初は「ト、トムソンってなんだ?」と、頭の中は「超芸術トマソン」でいっぱいになったりしてしまった。いや、ホントに。
超芸術トマソン
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このあたり、もしご興味あれば『デザインのひきだし4』で詳しく解説しましたので、立ち読みでもしてください。
デザインのひきだし4
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このように新しい用語に出会うのは面白いのだが、その使い方が間違われていることを気にすることもある。まあ、小さいことだし、お互いに通じていればそれでいいのですが、かなりの頻度で誤用されているなぁと思うのが「裏抜け」と「裏移り」だ。
この前も、色校を見て「これ、けっこう裏移りしますねぇ」とあるデザイナーに言われたのだが、いや裏移りはしていない。すぐに「裏抜けのことだなぁ」とはわかるものの、なんだかむずむずする。
「裏抜け」と「裏移り」、言葉も似ていて現象自体もさほど遠くないことではあるが、「裏抜け」とは、紙に印刷したときに、インキが紙の裏側にまで染み込んで、裏側からも表側の絵柄が見えてしまう現象。インキで刷った絵柄や文字が裏側から見ても見えてしまう状態のことで、薄い紙に刷ったときに起こりやすいですね。っていうか、かなり厚い紙だったりしない限り、多少は裏抜けしている印刷物が大半ではないでしょうか。
対して「裏移り」は、印刷した後、インキが乾ききらない状態で次の紙を重ねてしまって、重ねた紙にインキが転写されてしまった現象のこと。たまに書籍でもありますよね、前のページのインキが付いてしまって、ちょっときたなくなっているものが。私も以前、ちょっと特殊な本文用紙を使って本をつくったら、本文のかなりのページが裏移りしてしまったことがあった。でも、これは見本誌を先に50部だけつくる際に出たもので、本番はちゃんと乾いてから製本/断裁したので、ことなきを得ましたが。
「裏抜け」のことを「裏移り」と言う人はけっこう多いので、印刷会社さんも「これは裏抜けのことを言っているんだろうなぁ」と推測してくれますが、万一のことを考えると、やはり用語はちゃんと知っておきたいものですね。
「色校を見て『裏移りを改善してくれ』とデザイナーから言われたから、本番は印刷後の乾燥時間を長く取るように」と印刷会社の営業マンが現場に指示を出して仕上がったものの、デザイナーはそれを見て「裏移りがぜんぜん改善されてないじゃないか!」なんてことにもなりかねない。
こんなことを書いていて、ふと思い出したのが、デザインとは全然関係ないけれど「貯金」と「預金」という二つの言葉。どちらも同じモノの用に感じるけれど、ちゃんと意味に違いがあるんですな。さてみなさん、この二つの違い、ご存知ですか? 答えは次号を待て!
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箔押しのことを完全網羅した『デザインのひきだし6』発売中! 「箔押しのA to Z」「板紙の魅力」の2大特集はどちらも必見です。他に最近作った本は『ハニカムペーパー・クラフト』『標準 印刷見本帳1 蛍光色×CMYK×マット/グロスニス編』『デザイン事務所の封筒・名刺・ビジネス文具コレクション』『しかけのあるブックデザイン』など。
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