気になるデザイン[22]沖縄の牛乳は1リットルパックじゃない!
── 津田淳子 ──

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電車や街中で、マスクをしている人をすごく多く見かけますね。風邪やインフルエンザ予防もあるんでしょうが、やはり花粉症の方が多いんだろうなぁ、と思って見ています。私は数年前からちょっと目がかゆかったり鼻がむずむずしたりするものの、「私は花粉症ではない」と言い聞かせ、なんとかしのいでいます(しのげてるのか?)。

そんな時期だからこそ、でしょうが、先日電車内で目につく広告に出会った。コンタック600プラス」という、鼻水鼻づまりくしゃみを改善する薬の広告。ドア横に貼られた小さなものなのだが、なんと「目的地ではないが、つぎの駅で鼻をかみたい。」と墨文字がスクリーン印刷された本物のポケットティッシュが貼られていたのだ。うーん、アイデア勝負。面白いですな。



とまあ、変わった印刷物が好きでたまらないわけなのですが、そんな私なので、街中どこででも印刷物があれば凝視してしまう癖がある。その癖のお陰で日々面白い印刷物に出会ったり、謎に出会ったりして楽しいのですが、国内でもっとも「?」と思うことが多いのが沖縄ではないだろうか。

そのひとつが、牛乳やお茶、ジュースなどの1リットル紙パックのこと。いや、1リットルパックとは言えない。……だって、946mlしか入っていないのだから。

離島旅行が好きな私は、沖縄へよく行くのですが、その際、スーパーなどでその地ならではのパッケージなどをしげしげと眺めている。そうしたときに気がついたのが、飲み物パックの内容量表示が946mlになっていたこと。たまたまその商品だけなのかと思ったら、どのジュースを見ても、どの牛乳を見ても、どれも946ml。

うーむ。なぜだ。疑問に思って、そのお店のおばぁに聞いてみても、「それが普通よぅ」と言われただけで、どうして1リットルじゃないのかわからない。そうなると俄然気になる。

その島にいる時にはわからなかったので、帰って来てから調べてみたら、やっとわかりました。戦後、沖縄がアメリカ統治下に置かれていた頃の本土復帰2年前に、初めて沖縄に牛乳工場がつくられた。だが、その時入ってきた機械や紙パックなどのサイズは全て米国製。従って、その容量を測る単位も米国で使われているものが基本となった。そう「ガロン」なのだ。1ガロン=約3758ml。

で、沖縄が本土復帰の際に、日本で一般的な容量「1000ml」に合わせようと1000mlにもっとも近い「クゥォーターガロン(1/4ガロン)=946ml」で製造・販売するようになったんだそうだ。なるほど。

でもここで気になるのは、なぜか明治や森永などの大手メーカーが販売するものも、沖縄では946ml。もともとの沖縄サイズに合わせてるんだろうけど、沖縄で消費するものだけのために、そのサイズのパックをデザインしたり、製函したりするのって大変じゃないのかしら。

とまあ、今日は気になる「デザイン」の話とはちょっと違ってしまったのですが、印刷物を凝視してたからこそ出会えた謎だったので、ちょっとお話してみました。

そうそう、他にも気になる謎は多々あるものの、未だに理由がわからないものがある。それが、沖縄のお酒・泡盛の3合瓶の謎。1合=180mlだから3合だと540mlですよね? でも泡盛の3合瓶はみーんな600ml。泡盛は戦時下など、物資不足の際にビール瓶を代用して使ったので、その名残で3合瓶が600mlになっているとも聞いたのだが、ビール瓶って633mlですよね? ……うーん、よくわからん。この謎、ご存知の方がいたら、ぜひ教えてください!

※ビール瓶が633mlと半端な数値なのは、ビールが造り始められた明治のはじめは4合が主流だったものの、時代とともに量が少なくなり、昭和19年の酒税徴収の絡みから、当時最も小さかった3合5勺(630ml)に統一されたところからきたもので、3mlは底上げしていた瓶底を平にしたための増加分、だそうですよ。いやぁ、調べてみると面白いっすね、こういうことは。

【つだ・じゅんこ】tsuda@graphicsha.co.jp

前号で特殊印刷をうまく使って表現したかわいいステーショナリーをご紹介すると書きましたが、それはまたの機会に。だって、泡盛の3合瓶の謎を広く聞いてみたかったんです! すみません。

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