デジアナ逆十字固め…[91]「ボケ/ブレ不思議写真術」刊行!
── 上原ゼンジ ──

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随分と原稿の間が開いてしまった。本当は月一ぐらいで書かせて貰うつもりだったんだけど、易きに流れてしまった。反省。でも何もしていなかったわけではなく、写真に関するいくつかのアイデアを実践中だし、新たな著作も上梓することが出来た。

ここ一年ぐらい、本誌に書かせて貰ったネタをまとめた本だ。きれいなデザインで印刷もうまく上がったから、書店で見かけたらぜひ手にとってみて欲しい。本文のキャプチャも16ページほど公開しているので、チラッとご覧ください。

「ボケ/ブレ不思議写真術 カメラプラス」
< http://www.zenji.info/profile/book/fushigi/fushigi.html
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キッチュレンズネタで原稿を書き始めた頃というのは、100円ショップなんかでレンズとして使えそうなものを探してきては、それぞれの描写を味わうというようなことをやっていた。しかしその後、レンズの実験だけではなく、シャッタースピードを遅くしたり速くしたり、万華鏡を使ったり、ビー玉を使ったりという感じで実験の幅が広がってきた。

シャッタースピードを遅くするというネタでは、NDフィルターを使って手で振り回す。空中に放り投げる。電動ドリルにくっつける。バネにくっつけてビヨンビヨンさせるというネタを掲載した。バネというのは、直径58mmあるんだけど、これにカメラをくっつけると、びっくり箱のような感じで、スゴーク情けない姿になる。

別に冗談でやってるわけじゃないんだよ。いや、少し冗談も入ってるか。でもコンセプトとしては、今までになかったような写真が見てみたいというところから始まっている。だから、ブレを意識した写真を撮ろうと思った時に一休さんのように知恵を絞り、考えいたったのがバネを使うという方法であり、工作してみたら情けない姿になってしまったというのは、瑣末な問題なのだ。

自分の手でカメラを振り回すのと、バネを使うのとではちょっと意味が違ってくる。手でカメラをブラすと、どうしても意図が入ってしまうし、手の動きに縛られてしまう。これはカメラトスをやってみた時によく分かった。カメラを放り投げた時に描かれる軌跡を真似して手を動かしても、絶対に同じようにはならない。

ただし、このカメラトスというのは、あまり突き詰めてみようとは思っていない。すでに世界中の人がたくさん楽しんでいるし、偶然の要素が多過ぎるからだ。「ある被写体を撮るためのイメージがあるんだけど、バネのせいでうまく撮れない」というあたりが狙っているところだ。流し絵やドロッピングアートには行きたくないんだけど、自分のドローイングの線から逃れてみたい、という感じかな。

今回、このバネカメラを使って撮影したのは、著者近影の写真だけだ。ただし、けっこう可能性は感じているので、今度は一眼レフをバネでぶら下げながら、街中でスナップがしたいと思っている。撮影しているところは、あまり格好良くはないかもしれないな。もし私が撮影している姿を見かけたら、暖かい目で見守ってください。「原稿いつも読んでますよー」とか、声かけてくれなくていいからね。

●ビー玉の宇宙

ビー玉をレンズ代わりに使うというやり方は、ずうっとやってきたけど、これは現在も継続中のネタだ。透明球の素材はソーダガラス、クリスタルガラス、天然水晶、消臭ビーズなどいろんなものを試してきた。そして、今年の正月に新たな方法を思いついた。それは、ビー玉の周りを透明にする方法だ。

従来の方法では、ビー玉を厚紙やスチロール板で挟んでいたので、球の周りにはその厚紙やスチロールが写ってしまった。なんかハンパな円周魚眼レンズのイメージだ。それをビー玉レンズ〈ネオ〉では、透明の塩ビでビー玉を挟むことにした。その結果、宙に浮かぶビー玉に映った世界を捉えたようなイメージになったのだ。

この撮影のヒントは、自分の写真展をやっている時に見つけた。写真展に来てくれた人にドアスコープを渡して、試し撮りをしてもらった。その時、手でつまんで持っていたドアスコープの中の世界と、ドアスコープを通さない世界が同時に映り込んだ状態に面白さを感じたのだ。

これをビー玉レンズで再現するための方法として、透明アクリルや塩ビシートを使って試してみたというわけだ。ビー玉を通した部分は景色が天地逆さまになり、ビー玉を通さない周囲の部分では、天地は逆さまにならず、ピンぼけになるという対比も面白い。

ビー玉をレンズ代わりに使うという方法は、いろんな人がやっていると思うが、周囲を透明にして同時に写し込む、というようなことをやった人はいないんじゃないだろうか? もしかして世界初? ついに世界を揺るがすような発明をしたんじゃないかと本人は思ってるんだけど、どうだろう? 本の中ではこのビー玉レンズ〈ネオ〉の工作方法も公開している。世界の最先端の写真に触れるチャンスだ!

【うえはらぜんじ】zenstudio@maminka.com
◇上原ゼンジの新刊
「ボケ/ブレ不思議写真術 カメラプラス」雷鳥社(1,575円)
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◇上原ゼンジのWEBサイト
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photo
ボケ/ブレ不思議写真術―カメラプラス
上原 ゼンジ
雷鳥社 2009-04

by G-Tools , 2009/04/14