デジアナ逆十字固め...[101]電子書籍で印税生活?
── 上原ゼンジ ──

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世の中では、電子書籍方面の話題が盛り上がりを見せている。私の知り合いでも、Amazonで本を売ると印税を7割受け取ることができるらしいぞ! と興奮している人がいる。原稿を書いたこともないくせに、すでに印税生活を送っている自分を想像しているようだ。

でも、その話が本当であれば私も乗っかってみたい。印税はよく10%と言われるけど、私が本を出して貰っている印税は7%。ということは10倍ではないか!それに紙の本では企画が通らなかったようなネタも、電子書籍であれば発表ができるかもしれない、などと考えれば夢は大きく広がる。

ということで、私も自分で電子書籍を作る方法を模索してみることにする。まず、重要なのはファイル形式をどうするかだ。ファイル形式には大きく分けて3つのパターンがある。文字を大きくしていった時に、ウインドウサイズに合わせて字詰めが変わるものと、変わらないもの。

前者はワープロソフトやWEBブラウザのようなスタイルで、電子書籍としてはドットブック形式やEPUBなどがこれにあたる。後者はPDFのように、拡大縮小してもレイアウトが変わらず、改行位置も固定のもの。そして、三つ目はテキスト属性のないビットマップ画像化したもの。コミックなどに採用されている形式だ。

私が作りたいのは、画像が多めの電子書籍。改行位置可変パターンか固定パターン(この正式な呼び方はありますか?)のどちらかになるわけだが、これはけっこう悩むところだ。もしも、テキストばかりで画像が少なければ、迷わず可変パターンを選ぶ。



本を読む人がどんな端末を使うのが分からないわけだから、ディスプレイの大きさや縦横比に合わせて、文字組みが変化するというのは、けっこう便利。さらにブラウザで書体や文字サイズ、行間などが変更できるとすれば、読者にとっては一番読みやすいパターンだと思う。ただし、図版が多かったり、レイアウトに凝りたいような場合にはちょっと向かない。

PDFであればInDesignから簡単に書き出しができるし、テキストエディタからでもPDF化できるから、一番取っ付きやすい方法だと思う。ただしレイアウト固定の問題は大きいから、長文を読んでもらいたいのであれば、PC向けとか、携帯端末向けとかで、レイアウトを変えるといった工夫は必要だと思う。

●ドットブック形式にチャレンジ

結局、どちらがいいのか判断がつかなかったため、字詰め可変パターンの方をちょっと試してみることにした。トライしたのはドットブック形式だ。ドットブック形式は無料の電子ブックブラウザ「T-Time」(ボイジャー社)で閲覧することのできる電子書籍の形式だが、日本の電子書籍の草分け的存在だから、多くの出版社の電子書籍で採用されている。

「T-Time」を使って電子書籍化するためには、テキストエディタで作ったファイルを「T-Time」で読み込んで、どんな見え方になるのか確認しながら作成していく。だからテキストエディタでHTMLを書きながら、WEBブラウザで確認してホームページを作る、というやり方と同じだ。

馴染みのあるソフトだからと試してみたのだが、画像をたくさん入れたいとか、もうちょっとレイアウトをどうにかしたいと思ったら、タグを覚えたり、いろいろとお勉強をする必要が出てくるのが、ちょっとしんどい。InDesignから書き出したファイルを利用する方法なんかもあるみたいだけど、これもそれなりの知識が必要だ。

ボイジャーでは、データを送るとドットブック化してくれるサービスも行っているから、テキスト主体の電子書籍の場合は、いいと思う。テキストだけだったら、1,575円でドットブック化が可能。ただし、私がイメージしているような本の場合には、やはり向かないのかなあと思い、速やかに撤退を決意する。

◇ドットプレス
< https://www.dotbook.jp/dotPress/index.html
>

●Acrobatの表示はどうなってる?

で、今度はPDFに挑戦。基本はパソコン画面での閲覧を想定。縦組一段で、本文の下に小さく写真を入れるスペースが作りたい。スクロールではなく紙芝居形式で、1ページずつページをめくって読むような感じにしたい。いろんな端末で読書することを考えると、どんな「判型」にすればいいのか、いまいち分からないが、とりあえず自分の使っているモニタを基準にInDesignでフォーマットを作ってみる。

800×600ピクセルの横長サイズにして、本文は22Qに設定。22Qと言えば、およそ16ポ。「えっ! デカイんじゃないの?」というのが一般的な反応だと思うけど、近眼で老眼の自分に合わせたらこういうサイズになった。いいか悪いかは、よく分からない。ただ、電子書籍での可読性ということを考えれば、文字サイズの設定よりも行長に対する行間の設定の方が大切だと思う。

テキストを流し込み、写真を配置して何ページ分かとりあえず作ってみる。そしてPDFに書き出して、Adobe Acrobat Proで閲覧。ここで問題発生。今まで見ていたInDesignの画面とAcorbatでは、等倍表示でのサイズが違うんですが......。

今までInDesignからのPDF書き出しというのは何度もやってきたけど、気付かなかった。そして分かったのは、Acrobatには解像度の設定があるということ。デフォルトだと「システムの設定を使用」となり、私の環境では「99ピクセル/インチ」となっている。そしてもうひとつの選択肢である「カスタム解像度」の設定はデフォルトが「72ピクセル/インチ」で数値の変更ができるようになっている。

これはつまり、「あなたの使っているディスプレイの解像度は99ピクセル/インチです。ですから72ppiを想定して作成されたドキュメントは小さく見えます。そこで、Acrobatでは正しいサイズで見せて上げますよ」ということのようだ。

つまり、それぞれのディスプレイの解像度の違いによって変わってしまう表示サイズを、マシンに繋がっているディスプレイの解像度情報から、本来のサイズに計算し直す、ということをやってくれているということか。であれば、Acrobatを利用すれば、解像度の違うディスプレイで表示させたとしても表示される大きさは同じになるはずだ。ややこしいね。

紙に出力する場合は、12ポと言えば12ポで、4.23mmだけど、ディスプレイの場合はそれぞれの解像度によって大きさが変わってしまう。iPadの解像度は132ppiとのことだけど、これは72ppiで12ポの文字がiPadに行くと6.5ポ相当になるということだよな。なんだか随分小さくなっちゃうけど、オレの計算は本当に合ってるのか?

今、電子書籍というとKindleやiPadが連想されるが、ソニーのReader Daily Editionだってあるし、携帯電話やDS、PSPで閲覧する場合もあるだろう。それぞれに画面サイズが違い、縦横比が違い、解像度が違う。そこに一つのコンテンツを最適化していこうというのは、なかなか悩ましい問題がありそうだ。

現在は紙媒体用にレイアウトしたものをただPDF化し、電子書籍でございますと言って売られているものも多いけど、読む側にとっては、もうちょっと工夫が欲しいところだ。自分でいろんなデバイス向けにオーサリングするというのは厳しいけど、出版社が商売としてやっていこうというのであれば、各デバイスに合わせ、きちんとオーサリングをしていくべきなんだろうなと思う。

●4月からワークショップをやります

2月20日の「デイズフォト通信」主催のワークショップは満員となりました。ありがとうございます!

4月からは連続的ワークショップを予定しています。いろんな撮影技法にチャレンジし、最終的には写真集(金のかからない)を作るというところまでをやりたいと思っています。ワークショップの詳細や写真展などの情報が欲しい方は、以下からメールアドレスをご登録ください。詳細が決まり次第、メールを流します。
< http://www.zenji.info/melma/mag.html
>

●接写用ストロボの工作

YouTubeにまた工作動画をアップ。接写をするとストロボの光がうまく回らないことがあるが、フレキシブルチューブを使って光が回るようにしてみた。ちょっと不思議な姿だけど、わりときれいに撮影できます。
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デジタル一眼レフカメラが上手くなる本 基本とシーン別の撮り方60「デジタル一眼レフカメラが上手くなる本 基本とシーン別の撮り方60」(翔泳社刊)上原ゼンジ/桃井一至/荻窪圭
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