気になるデザイン[46]路線図のいいとこ悪いとこ
── 津田淳子 ──

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東京は毎日、溶けてしまうんじゃないかという暑さですが、みなさんお元気ですか? 私はそんな猛暑もなんのその、日々、次号の『デザインのひきだし』のリサーチや別の書籍の取材などで、炎天下の中を歩き回っています。

そんな中、先日乗った電車の中で、ちょっと気になったことが。

先日、ある製造メーカーに取材に伺ったときのこと。現地の最寄り駅「みずほ台」でカメラマン、デザイナー、私の3人で待ち合わせをしたのですが、3者ともにドキドキしながら電車に乗っていたのです。

どうしたわけかというと、池袋から東武東上線に乗車し、みずほ台駅まで行こうとしていました。3人別々に乗ったんですが、3人とも東武東上線にはほとんど乗ったことがなく、駅や電車内の案内表示を頼っての乗車です。私は一応、事前に調べていた「川越」行きの電車に乗ったのですが、座った場所から見える、電車内のドア上に貼ってある路線図に「みずほ台」がない! おまけに乗っている電車が停まる駅がその路線図の駅名と違う!?

時間に余裕がなく、乗り間違えたら即遅刻。そんな状況もあり軽く慌て、とりあえず次で降りようかと思い、席を立ってすぐ横のドアの前にたつと......そのドアの上に貼ってある路線図には、「みずほ台」がちゃんとあり、かつ、駅名も合っている。むむむ?



実は、ちょっと電車のことをわかっていれば簡単なことだったんです。まず、私のように電車に詳しくない方のために、ちょっと説明を。東武東上線は池袋と寄居を結ぶ電車で、途中の主要な駅に和光市/川越/坂戸などがあります。

そして、その東武東上線と乗入れている東京メトロ有楽町線という電車があり、これは新木場と和光市をつなぎ、途中の主要な駅に有楽町/飯田橋/池袋/小竹向原などがある。有楽町線は和光市までくると、電車によってはそのまま東武東上線に乗入れて、川越方面に行くことができる。

どちらも池袋と和光市駅を通っている。といっても、両線は平行して走っているだけで、池袋と和光市以外の途中駅は、どちらの電車もそれぞれ別の駅になっている。

ここまで書けばおわかりいただけたかもしれないが、私は池袋から東武東上線に乗っていた。でも、電車内で見ていた路線図は有楽町線のもの。そして席を立って見た路線図が東武東上線のもの。つまり、乗り入れをしてるため、電車のドア上には左面に有楽町線、右面に東武東上線の路線図が掲示されていたというわけ。なので、東武東上線では池袋の次は「北池袋」なのだが、私が見ていた路線図では「要町」となってしまい、軽くパニックになっていたのだ。

この2線の関係を知っていれば、何も慌てることもないことなのだが、私はよくわかっていなかったので、非常に慌てた。でもこれは私一人がわからなかっただけで、みんなはそんなことないんだろうなぁ、と自虐的に思っていたところ、他の2人も同じようにわからなくなって、そのうち一人は、電車を間違ったと思って、乗り換えようとし、遅刻! いやぁ、私だけじゃないではないか!(鼻高々)

これ、どちらの線でこの車両を使うときでもわかりやすい路線図って、つくれると思うんだけど、どうしてそうしないのかしら? まあ、今回のように100%の人が迷うわけではないと思うけど、初めて乗った人は、ドキッとした人多いと思うんだけどなぁ。

でも、他の日本の路線図がわかりやすく出来てるから、この程度のことが気になるのかしら? というのも、海外に行ってよく思うのですが、海外の電車内の路線図は、左右のドア上のどちらか一方は、必ず進行方向と逆順に駅が書かれてますよね!

日本の電車だと左右のドア上に貼られた路線図は、左右どちらを見ても、電車の進行方向と同じ向きに、駅名が書かれています。でもそのためには、左側用、右側用の路線図を印刷しないといけません。

でも海外では1パターンしか路線図をつくらず、それを左右どちらのドアの上にも掲示しているので、どちらか一方は進行方向と逆向きになってしまうのだ。これ、特に初めてでわからない土地に行くと、けっこう戸惑います。それを考えると、日本の路線図の多くは、日本人の細やかさがよく現れてるなぁと思います。

持ち上げてるんだか下げてるんだかわからないコラムになってしまいましたが、基本的にはよく出来ているものの、もう一歩、改善してもらえると、よりわかりやすくなるのに! というところです。でも、これは路線図の問題とは言いにくいですが、首都圏の路線図はあまりに電車が入り組んでて、知らない人から見たら、すっごーく難しいですよねぇ。

【つだ・じゅんこ】tsuda@graphicsha.co.jp
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