ところのほんとのところ[43]「東京フォト2010」と2つの個展
── 所幸則 Tokoro Yukinori ──

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いよいよ第2回目となる「東京フォト2010(TOKYO PHOTO2010)」が始まった。去年、初めての「東京フォト2009」は凄く嬉しかった。さらに言えば"自分にとって"嬉しかった。それがすべてだったように[ところ]は思う。「東京フォト」は、2回目、3回目〜20回目と続いていくことが大事なんだと[ところ]は思う。そうやって写真の見方や買い方を知り、「世界の写真市場」と並ぶ日本になってほしい。[ところ]も、それに出展作家であり続けること、輝き続けること。それが大事だ。
< http://www.tokyophoto.org/
>

日本はカメラ大国だ。それはもうまちがいなく世界一といっていい。だけど、世界一の写真大国は日本ではない。それはアメリカだったり、フランスだったりする。そのことは欧米に比べて、写真だけの写真誌は日本では長続きしないことでもわかるし、良い作品を買う習慣がないことでもわかる。しかし、最近の動きを見ていると、「ヨコハマフォトフェスティバル」やこの「東京フォト」が、少しづつ成長して行けば変わって行くのではないかと期待している。

[ところ]は、GALLERY 21から、今年最も注目しているイヤーズ・アーティストの作品として出展された。東松照明さんとならんで選ばれているのは光栄なことでした。
< http://www.tokyophoto.org/exhibitor_gallery21.html
>



1回目と会場が変わって、六本木ヒルズ森タワー40階 academyhills 40になり、相当広くもなったし、出展ギャラリーも随分増え、作品の点数に至っては500点を超えている。まだ始まったばかりの「東京フォト」は、まだまだこれから出展数も増え、観客の目も肥えていくことを願っているし、きっとそうなると信じている[ところ]です。

ただ、作品をじっくり見て購入するにはいろいろなところを整備しないと駄目だと思う。まず、全ギャラリーの代表作品出展リスト、カタログといってもいいけれど、そういうものがないと買いたい人は困る。

それと、本気で写真を数100点鑑賞するには、最低2日はかかると思う。[ところ]の持論では、見て脳が刺激されるようないい写真は100枚〜150枚も見たら脳みそが疲れ果てる。

作品数はこれからもっともっと増えるだろうし、本当に写真が好きな人や、何度も見て購入を検討する人に対して、開催期間中の通し券が1日券の1.7〜2.0倍程度で販売されるといいのではないだろうか。

この二つは必須な気がする。実際パリフォトではそうやっているので、いい見本はどんどん取り入れてほしいと思う。

1日目、さらっと全体を見て、気になった写真をカタログでチェックして、2回目で気になった作品をじっくりチェックする。そういうスタイルをこれから作って行って欲しいな。

それと、徐々にでないと無理だろうけれど、参加ギャラリーの審査ももっとしてほしい。今回はある意味、玉石混合の展示だったと思う。玉が9割ぐらいなら石もあって楽しいのだろうけれど、それより石が多いと購入意欲が消えるのではないだろうか。もちろん、いろいろな価値観があるからある程度は仕方ないのだろうけれど。

ちなみに、写真が世界で一番売れるアートフェアはパリフォトである。ギャラリーの審査も厳しい。厳しい審査をくぐり抜けたアートフェアだからこそ、来客者も安心感をもって作品を買って行くし、見にもくるんだと思う。

もちろん、買う人が好きな作品が買える値段なら安心感とかいらないという意見は正論だけれど、どうせ買うなら安心感もついて来た方がいいに決まっている。新進気鋭のギャラリーが審査を通りにくいという弊害はあるけれど、実績はなくとも、今年のニューフェィスみたいに枠を作ればいいと思う。まあ、これは[ところ]の妄想なので気にしないでほしい。

さて、[ところ]が実際に「東京フォト2010に」顔を出したのは、9月16日の内覧会&レセプションパーティだ。これはギャラリーのお得意様と、マスコミ関係者、アート関係者、作家達が中心だ。入ってみると、2500人近い人が森ビルの40階にあふれていて凄く盛況だった。作品がちゃんと見られないくらいだった。もうこれで、この後の4日間で1万人は行けそうな感じ。ちょっとビックリするくらい、レベルの低い作品も何枚か混ざっているようにみえたけど、全体としては見応えがあるという印象をもった[ところ]でした。

[ところ]のアーティストトークは、初日の13時、なぜか一番集客のないポイントだった。非常に心配だったけれど、30人以上のお客さんが話を聞いてくれてよかった。役目は果たせたかな。その日はちょっと疲れたので、話の後1時間ぐらいで一度帰ったけれど、結局また会場に戻って少し見て回ったけどね。

2日目は、やることが多過ぎて行けずじまい、残念。3日目、行ったときちょうどサンディエゴ美術館の館長のデボラさんがギャラリー21に来ていた。去年の「東京フォト」でもお会いして、誉めて頂いて、パラドックスタイムを一冊収蔵してくださった。今回も新作を気に入ってくれたようだ。
< http://www.gallery21-tokyo.com/jp/purchase/book_paradox/
>

スポンサードをしている日産のスカイラインを、実行委員会のギャラリーの所属作家3人が撮ったポストカード3枚と、「東京フォト」が選んだ作品5枚のポストカードセットが、NISSANのアンケートに答えるだけでもらえる。[ところ]は5人の作家の中に選ばれていたので、今回はそれをデボラさんにお渡しした。来年の春までには、サンディエゴ美術館を訪ねて行きたいと思っている[ところ]です。
< http://tokoroyukinori.seesaa.net/?1284891833
>

さて、ここで10月からの個展の告知をさせてください。

■所幸則写真展「失われて行く渋谷、失われてしまった渋谷」
時間の流れへの考察、喪失感。
< http://www.amrta.co.jp/
>
会期:2010年10月1日(金)〜10月30日(土)18:00〜04:00(日祝休)
会場:渋谷@BAR AMRTA(東京都港区)

ほんの少し前まで会ったはずのあの行きつけの本屋さん。あのプラネタリウム。もう見る事ができない風景、もうじき見る事が出来なくなる風景たち。AMRTAの暗い空間の中で浮かび上がるいつか見た風景。まだ存在する風景もいつなくなるのか、過去、現在、未来へと時間の旅をしてみてください。

2年前の9月末に、渋谷のギャラリーコンシールで初めて今の所幸則の原点である「渋谷1sec」を発表したときのオープニングパーティで、BAR AMRTAのオーナーさんぺいさんに、2年後にBAR AMRTAで展示してくれ! と頼まれてその場で快諾した写真展です。お酒を飲みながらどうぞ。

■所幸則写真展「写真における新しい取り組み」
時間の流れへの考察
< http://www.tosei-sha.jp/gallery.html
>
会期:2010年10月1日(金)〜10月31日(日)11:00〜19:00 日月祝休
会場:ギャラリー冬青(東京都中野区)

1秒という時間の流れを一枚の写真でどう表現するか、その考えに至ったのは写真の世界でよく用いられる瞬間という概念への疑問からだった。日本語的には、瞬間とは点のような印象を持ちやすい言葉だと感じていたし、僕もさまざまな素晴らしい写真をみてきて、時間を切り取っていると感じていた。

しかしあるときから、1/30秒 1/125秒 1/1000秒といえども、決して点ではない事に気がついた。1万分の1秒ですら、10万分の1秒が10回集まったものであり、100万分の1秒が100回も集まったものであり、どんな写真にもその中で時間の流れはあるのです。

写真とは、非常にあいまいではっきりしないっものだと感じるようになっていったのです。人間が一番身近に感じられる時間が1秒ということもあり、ならば逆に1秒という枠を所幸則が決めることによって、それを人に見せてみようと思うようになった。

このテーマは最初、渋谷の街の時間の流れを表現しつつ美しく撮るというところから始まったが、実はどこまでも広がりのあるテーマだということがわかっていきました。今は渋谷1秒から始まって、世界の都市、人間にいたるまで展開しています。今回はその序章という意味で、あらゆる都市、人物の実験的作品を見て頂きたいと思う。

もちろん、1秒露光などでは逆に時間の経過は見えにくい、所幸則が結論に至った1秒へのアプローチをご覧下さい。そこには見たことのない1秒の時間の世界があります。ほとんどまだ世の中に出ていない作品達ばかりです。ぜひご覧になってください。