Webディレクター養成ギブス[10]ウソも方便
── 蓮井慎也 ──

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私はWEB制作ディレクションをするにおいて、よくウソをつきます。ついて良いウソと悪いウソに分けられるとしたら、私がつくウソは"ついて良いウソ"に分類できると思っていますので、常套手段と捉え、積極的にウソをついています。

なかにはウソをつけない、あるいはウソは悪だと思っている真面目な人もいるでしょうが、すべてを真に受けて予定通りにWEB制作進行ができていなければ、クライアントに進行が遅れるたびに謝り倒さないとならなくなり、謝る回数が増えると信用も失う上、それだけ無駄な時間を使うことになります。

また、WEB制作者には「まだ?」「まだ?」としつこく聞くこととなり、クライアントにもWEB制作者にも嫌がられるようになるでしょう。

結果をプラスの方向に働かせるためにつくウソを、"ウソも方便"といいますが、WEB制作ディレクションでは、この"ついて良いウソ"をどれだけつけるか? が、腕の良い悪いを分けるポイントでもあると思います。

この"ついて良いウソ"は、WEB制作ディレクションの色々なシーンで活用することができます。簡単な例で見ていきましょう。



●"ついて良いウソ"とはこういうもの

・納期に提出する場合

納期が例えば18:00設定されているとしたら、WEB制作者には16:00と伝えておいて、クライアントには17:00にテストアップ連絡しましょう。

WEB制作者がウソの納期に数分遅れたところでまったく問題はなく、遅れたことに謝罪があっても、WEB制作者には「なんとか食い止めたよ。次は遅れないでね」と恩を売り、クライアントには18:00としていた納期よりも1時間早く上がってくることで「早い!」という信頼を得ることができます。

また、WEB制作者に18:00納期がバレても問題ありません。「おかげでクライアントから『仕事が早いね!』と評価の声をいただいているよ!」と、ねぎらいの一言(これもウソ)をかけておけば、これもウソだとバレながらも喜んでくれるはずです。

・WEBデザイナーのデザインが気に入らない場合

WEB制作者が自信満々のWEBデザインを上げてくるが、どうも気に入らず、でも気に入らないとは直接言えない場合、クライアント担当者に一度提出したフリをして、チェックバックを受けたように装い、WEBデザインを修正してもらい、WEBディレクター自身が自信を持って提出できるデザインでクライアントに勝負(実は一回目の提出を)していきましょう。

ここでクライアントから思ったような評価が得られず、大量のチェックバックを受けてしまうと、WEBデザイナーには怪しまれるかもしれませんが、心配することがありません。クライアント担当者よりもひとつ上の役職の人に(架空で)登場してもらい、「担当者的にはOKなんだけど、ひとつ上の役職の主任さんからNGが出たよ...」と残念そうなフリをして、WEBデザイナーと修正の打ち合わせをすれば、みんながみんなハッピーです。

・値切りや納期交渉を受けたとき

クライアント担当者から「安くしてほしい」や「納期を縮めてほしい」と要求されてしまい、その場で「無理ですよ〜」も聞き入れてもらえないような場合、いったん自社の上長に確認するフリをして、時間を置いてから「社内でも検討した結果、無理です」と答えましょう。

受け入れる、受け入れられないはあるでしょうが、とりあえず言ってみて、受けてくれたらラッキーと思うヨコシマなクライアントが中にもいるので、すべてを真に受けて持ち帰って上長に相談していては、面倒くさい部下のひとりになるでしょう。ある程度は現場判断に任せてもらい、クライアントに対しては正面から「無理です」と返すのではなく、ワンクッションおいたふりして「無理です」と返したほうがベターです(「無理です」と返すのではなく、なるべく代案を示しましょう)。

もし受け入れらなかった場合も心配はありません。「もう一度、社内に掛け合います」で十分です。上長に(受け入れなかったことも含めて)経緯を説明し、判断を仰ぎましょう。上長もよく考えて行動しているなぁ〜と、評価を上げてくれるかもしれません。

すべてがすべてこのようなシーンに当てはめることは不可能ですが、上手にウソをついていくことをおすすめします。しかし、ウソが下手だしバレたら...?と不安になる声も聞こえてきそうですので、バレたときの対処法も書いておきます。

●ウソがばれたときはこうする

・社内の人間にバレたとき

悪いウソでないのであれば、決してウソをウソで塗り固めるということではなく、バレたときのことを考えて、社内においては先に自分は上手にウソをついていることを公言しておいて、バレてたところで笑って誤魔化すくらいの愛嬌が必要でしょう。

・クライアントにバレたとき

強引にウソを突き通して関係を悪化させるよりは、クライアントの要求を呑んで、丸く収めましょう。悪いウソではありませんが、そもそもウソはいけないのと、下手なウソをついた授業料だと思って、受け止めるしかありません。

ただし、社内の上長や、WEB制作者は、よい結果に導こうとしたウソがバレたと正直に話すなど(バレていないのにバレた...と落ち込んだウソを話すこともあります)し、飲み代一回くらい奢るつもりで頑張ってもらいましょう。

"ウソも方便"とは本当によく言ったもので、状況に応じて対応方法を変え、結果をよりよい方向に導くためにつくWEBディレクターのウソは、強力な武器になります。

ウソはつけない、つきにくいと思っている人も、最初の時間を前倒しして伝えて、早めの対応をしていくというのからやってみてください。もし、現在がウソもつかない状況でWEB制作ディレクションをしているのであれば、今以上に動きやすくなるはずです。

ウソをつくことで罪悪感に苛まれることもあるかもしれませんが、ウソをつくことによって関係者全員がハッピーになれるのであれば、と信じて良いウソを積極的につくべきです。

WEB制作者から「あの人のウソでついノセられてしまう...」と嘆かれるくらいが理想ですね!

【蓮井慎也 / Shinya Hasui】WEBディレクター
地元WEB制作プロダクションに所属。大手通販企業に常駐し、WEB制作をしています。オンライン名刺 < http://card.ly/hasui/
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