デジアナ逆十字固め...[115]球体関節人形と盆栽と
── 上原ゼンジ ──

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私がWEB上で運営しているギャラリー「bitgallery」に、新たなコンテンツが加わった。GrowHairさんの「Dollfriends」と増田茂さんの「盆栽宇宙」だ。GrowHairさんはデジクリ読者ならご存知、デジクリに執筆している「あの」GrowHairさんです。

以前大阪に行った時にデジクリデスクの濱村さんをはじめ、関西在住のデジクリ執筆陣の方々と小宴を催したことがある。その時、GrowHairさんの話題になった途端、失笑、いや妙な雰囲気、じゃなくて場が和んだというか、まあなんというか、秘密を共有する者の連帯感というか、そういうものが生まれた。

それはまあ単純にGrowHairさんが発表しているセルフポートレイトのせいだ。40代後半のオッサンのセーラー服姿。違和感有り過ぎで逆に似合ってしまっているという恐ろしさ。「セーラー服を着ることは簡単だが、着こなすことは難しい。それが日本で唯一できているのはGrowHairだけだ」とは誰も言ってませんが、まあ大変な存在感です。

・GrowHairさんのプロフィールページ
< http://bitgallery.info/GrowHair.html
>



GrowHairさんとはお会いしたことはなかったんだけど、写真に魅力を感じて「bitgallery」への参加をお願いした。作品としては、コスプレイヤーを撮った写真などもあるけど、今回は人形を撮影した写真をテーマに構成することにした。

元々私自身は特に人形好きというわけではない。ただ、うちに「ハンス・ベルメール写真集」(リブロポート刊/1984年)なんていうのもあるぐらいだから嫌いではない。っていうか、ハンス・ベルメールは好きか(笑)。でも、ただハンス・ベルメールが好きというだけで、特に人形の展覧会に足を運ぶということもなく過ごしてきた。

そして、今回GrowHairさんのWEB写真集を編集するにあたり、いろんな人形作家の作品を見せて貰ったけど、四半世紀の間に日本の球体関節人形シーンはかなり充実したものになっていたんですね。知りませんでした。素晴らしい。これほどのものがWEBで簡単に見られるなんて。ぜひ御覧ください。

・bitgallery
http://bitgallery.info/


●なぜか羽賀研二?

「盆栽宇宙」の増田茂さんは、娘の友達のお父さんだ。娘から友達のお父さんがカメラマンだということを聞き、最初は本当かどうか訝しんでいた。すると今度はその友達のお母さんが、うちのカミさんと昔会ったことがあるという情報がもたらされた。うちは地元の人間ではないので、その情報に対しても懐疑的だった。

ただ、カミさんは何か思い当たるふしがあったらしく、「じゃあ、そのお母さんに、昔、羽賀研二にナンパされたことがあるかどうか聞いてみてごらん」と、娘に託した。するとビンゴで、昔、仕事でお世話になった人だったということが発覚。その後は子供同士の仲が良かったこともあり、家族ぐるみでお付き合いさせていただくことになった。

増田さんは広告やエディトリアルの世界をベースとして活動するフォトグラファーだが、見せていただいた「盆栽・美の極意」山本順三著(講談社インターナショナル刊)の写真が素晴らしく、「bitgallery」への参加をお願いした。

どこが良かったかと言うと、撮影者が主張していないところ。まあ、盆栽が主役だから当たり前なんだけど、写真作品となると、撮影者の主張が出てしまうことがままある。それを淡々と撮り、盆栽の良さを引き出しているところがいいと思った。ライティングもすごく自然だ。これは技術とセンスがなければ、こうはならない。素晴らしき盆栽の世界をご堪能ください。

・The Space of Bonsai 盆栽宇宙
< http://bitgallery.info/book/bonsai/
>

●自分にとっての禁じ手

人の写真をセレクトしたり、順番を考えるというのは面白い。撮影者の思い入れなど関係なく、冷徹に判断することができるからだ。だから、自分の写真をセレクトする場合でも、客観的に判断できることが重要だと思う。撮影する時に苦労したとかいうことは見る側にとっては関係ない。それが自分自身に対してできるかどうか?

私は撮影をする場合に人の作品というのは、あまり撮りたいと思わない。たとえば建築物というのは、人が作った物で自分の作品ではない。だから被写体としては、いまいち食指が動かない。同様に芝居の写真なんかも撮りたいと思わない。演出家や演者のものだと思うからだ。ただ、これはあくまで自分に対しての禁じ手であり、建築物や芝居を撮ったものは写真ではない、などという気はない。

で、何を撮っているかというと、路傍の草花などを撮っているわけだけど、これは誰が作ったものでもないので、自分的にはオーケーなわけだ。ただ、誰もがきれいだと思うようなものよりは、自分で美しさなり何なりを見出したものの方が価値はある。

今回の人形と盆栽はそれぞれ作者がいる。つまり、私の被写体としてはアウトなわけだけど、ここに写された人形や盆栽を目の前にしたら撮りたくなるだろうな。そんな魅力のある被写体だと思う。人形の写真、盆栽の写真は、その作者のものか写真家のものか。写真自体が感じる写真だったらどうでもいいことなんだけど、まあ撮る側としてはそんなことも考えてしまうわけです。

◇電塾勉強会
このたび電塾の運営委員に加えていただきました。そのデビュー戦として勉強会で話をさせて貰います。持ち時間が75分なので、けっこういろんなネタを披露できると思います。
< http://www.denjuku.gr.jp/index.htm
>

【うえはらぜんじ】zenji@maminka.com < http://twitter.com/Zenji_Uehara
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・Soratama - 宙玉レンズの専門サイト
< http://www.soratama.org/
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