ところのほんとのところ[54]写真作家・所幸則としてできることはなにか
── 所幸則 Tokoro Yukinori ──

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この度の東日本大震災で被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。

私の回りでも、繋がりのある人達の安否の確認などでパニック状態が続きました。311から始まった様々な非常事態が一日も早く収まっていくことを心から願います。

東日本大震災に対する義捐を目的として自分ができることは何かを考え、様々なチャリティー写真展への参加に加え、写真作家・所幸則個人としてできることとして、東京・渋谷の作品をチャリティーオリジナルサイズA5サイズ(148mm×210mm)に設定し、特別価格10,000円で販売したいと思います。

作品はA5サイズでも良さが伝わる3枚を選びました。各50枚程度を考えています。すべての作品にチャリティ企画としての、きちんとしたオリジナルプリント証明書をおつけします。一枚につき9,000円を日本赤十字に寄付し、約1,000円を送料等にします。それ以外にも、すべてのプリントの売上の25%を2011年末まで寄付することも決めました。4月18日(月)、以下に詳細を掲載します。
< http://www.tokoroyukinori.com/
>



[ところ]は去年末から体調を崩し、しばらく満足な作家活動ができなかったけれど、ギャラリー21のキュレーター太田菜穂子さんと岡山修平さんと三人で今後の活動、未来の展望の話をして、決意を新たにエネルギーを燃やして頑張ろうと、気持ちを立て直したのが311の前夜の3月10日でした。

次の日の夜(3月11日の夜)には、[ところ]を慕ってついてきて二年間作品を作り続けていた、写真家を目指す二人と、彼らの二人展の会場を見に行き、最終的な展示プランの確認をする予定でした。地震が起きた時点では、凄い地震だと思いましたが家には何も被害もなく、どれほどのものか理解できないまま普通に夜を迎えました。二人のうちの一人は夜に自転車に乗って現れましたが、もう一人は連絡がろくにとれないまま、その日から一週間が過ぎました。

展示場所は西麻布の老舗ギャラリーバーBAR AMRTA、申し込んでOKが出ても2年待ちという場所です。震災のあった翌週、BAR AMRITAに一応電話してみると、普通に営業していました。展示を中止にはできないと確認もしました。

その後、地震だけではなく日本ではおそらく最大級の津波もあって何万人という被害者が出て、原子力発電所が海沿いにあるという知識もそれまでなかったのですが、そこも大変なことになっているということを知って、少しずつ事態の大きさ、深刻さも理解し始めました。

311の夜、普通に過ごしていた[ところ]は渋谷、打ち合わせに訪ねてきた青年は中野、BAR AMRTAは西麻布、その次の夜スカイプで話していた友人たちも中目黒と自由が丘だったということもあり、電車が止まって都市機能が麻痺している感覚も、あまり実感としてなかったと思います。

打ち合わせに現れなかった写真家の卵の一人は、都心にバイクで通勤していたので埼玉の自宅に飛んで帰ったあと、停電のなか余震に耐えていたそうです。ガソリンもすぐに買えなくなり、水も食料も手に入らず、パニックになっていたことを数日後に知りました。ニュースで買い占め騒動がおきていると報道されていましたが、マスメディアをあまり信じていない[ところ]にも、実感として伝わってきました。

その後、4月1日からの彼らの展示が始まるまではいろいろ大変でしたが、無事に展示ができて良かったと思います。BAR AMRITAもお店である以上、閉めれば従業員も働けなくなり給料も減ります。同じことが様々な業種で言えることで、東京でいつも通り仕事ができる人は働くべきで、そうしないと結局は被災地の人達への支援も満足にできなくなるのです。

事務の人、営業の人、飲食店の人、魚を売る人、仕事としてスポーツをやる人さまざまですが、もちろん今は電力不足という大きな問題もありますから、あまりに電力を使用する業種は工夫をしなければいけないのかと思いますが、被災地の人達を助けるにはまず自分たちが元気であることが大事です。

と、えらそうなことを書いている[ところ]ですが、実はツイッターやたまに見るテレビの報道にまいってしまって、数日前までほとんど倒れていたのですが......。実際、渋谷を撮ることがメインの[ところ]も、撮ってる場合か? と悩み、しばらく撮る気になれませんでしたが、ようやくまた撮ろうと思えるようになりました。

ニコニコ動画などで人と話すと、その間だけは少し起きていられる、そんな感じの大変な毎日でした(被災地の方々は比較にならないほど大変な状態なのに申し訳ない)。しかし、4月18日から渋谷のハチ公前にあるモニュメント(電車の車両)内での展示の打ち合わせに、渋谷の区役所に行かないともう間に合わないという催促もあり、2日前の水曜日に行って話をして、それは無事進んでいますが、体を無理やり動かしている感じです。

311以降、人々の意識もずいぶんと変わったように思います。政治のこともそうですし、本当にやりたいことが何なのか考え直す人も増えました。みんなの心の変革期になったかもしれないと思っています(特に東日本では)。今、この瞬間を大事に生きようという、当たり前のことを思う人が増えたのではないでしょうか。

[ところ]もいい加減立ち直って頑張ることが大事だと思っています。この世界はいつ何が起きて無になるかわからない、儚い存在だということを実感したからです。とりあえず、寝込んだ間に落ちた体力を回復させなければ、と思っています。

さて、それ以前に書こうと思っていたですが、フランスのオンラインマガジンで特集されています。デザインがなかなか秀逸なので是非ご覧になってください。インフォメーションのページにリンクがあります。それ以外にも、NYのオンラインマガジンでの特集もご覧いただけると思います。
< http://www.tokoroyukinori.com/
>

文中の二人展は「TJ二人展 夜 駆ける 夜 BAR AMRTA」が正式名称です。[ところ]がすべてキュレーションしました。なかなか見ごたえがある展示になっています。都会的で洗練されたフレーミングの布施有輝の交差点中心の作品と、実直な視点の立ち位置で撮る菅野健一の重機中心の作品の対比が面白い写真展です。詳しくはこちらに掲載されています。
< http://ichikojin.sakura.ne.jp/tokorojyuku/index.html
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もうひとつは渋谷ハチ公前広場の展示「渋谷1秒in渋谷ハチ公前」は前半4月18日(月)から4月27日(水)、後半5月9日(月)から5月18日(水)を予定しています。朝10時から夕方18時までです。未発表作、新作等の展示も予定しています。渋谷にお寄りの時はごらんください。ただし、雨天の場合は閉まっていますのでご注意ください。

それと、4月10日に発売された「アイデア」。震災直前の入稿だったので出るかどうかわからないと思っていたのですが、羽良多平吉特集は豪華過ぎて奇跡のようです。ぜひご覧になってください。デザイン界における美の巨人の本領発揮です。表四と表二ともに[ところ]の撮りおろしの新作も見れます。[ところ]のブログに、デジクリがみなさんに届くまでに表紙等アップしておきますので取り合えずごらんください。印刷も紙も非常にこだわっているので、手に取らないとほんとのとのところはわからないかもしれませんが。
< http://tokoroyukinori.seesaa.net/
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ニコニコ動画では芸術と未来を中心にいろんなアーティストとの話を放送していますが、近々大物の映画監督が登場します。
< http://com.nicovideo.jp/community/co60744
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多分来週と思われますが、混雑の場合プレミア会員やコミュ会員が優先されて見れないこともあるのでご了承ください。ちなみに、今週日曜日夜も放送はあります。そのとき誰なのか言えるといいのですが。

【ところ・ゆきのり】写真家
CHIAROSCUARO所幸則 < http://tokoroyukinori.seesaa.net/
>
所幸則公式サイト  < http://tokoroyukinori.com/
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