アナログステージ[55]立ち往生を実感することに成功
── べちおサマンサ ──

投稿:  著者:


とても今更な話になりますが、3月11日の地震後、寝室のクローゼットをはじめて開けてみた。なんとなくは分かっていたものの、やはり扉が開かない。音楽CDが8割を占めているクローゼットですが、手前側の山積みにしてあるCDが倒れ、折れ戸扉のヒンジにジャストフィットしてしまっており、中からCDをどかさないと開けられない。という状況になっておりました。

壁に穴を開けてクローゼットに進入するか、折り戸扉をぶち壊すかの二択しか現実論として出てこなかったのですが、当然、どちらも選択したくはない。しばし扉の前で考え込むこと10分、CD破損を覚悟で無理やり開ける! という方法も考えたが、倒れこんでいるCDの中にレア版が混じっていたら...... と考えると、バーサーカーにはなれない。

またもや扉の前で考え込むこと10分。今度は、折り戸をゆっくりと開けたり閉めたりして、その刺激でCDをずらし、元の状態に整列できるのではないか......ということを考えはじめた。幸い、倒れこんだCDの奥に、別のCDが山積みになっているので、その列のCDがストッパーになり、開閉の振動で倒れているCDが整列されていく案だ。

さすがナノテク業界のR&D(技術開発)を仕事にしているだけあって、我ながらのアイデアだと感心しながら、いざ試してみる。ガチャガチャ。ガチャガチャ。ガチャン!

なんと、倒れているCDたちは、元のように整列されるどころか、折り戸が少し開いた状態のところに更に倒れこんでしまい、折り戸の折りに完全にジャストフィットしてしまった。動かない。さっきまでカチカチと動いていた戸も、完全に内側から鍵をかけられている状態になってしまった。

冷静に考えれば、手前側に倒れこんでいるのだから、開いて隙間ができれば、当然手前に倒れこんでくる。アホだ。なにがナノテクのR&Dだ。サルがバナナがたくさん入っている箱の、片手が入るだけの穴に腕を突っ込んで、バナナを掴めるだけ掴んで手が抜けなくなるのと同じじゃないか。

というようなことを、どうしようもなくなった扉の前で考えはじめることまた10分。ついに、「なんでダンボールにきちんと整理しておかなかったのだろう」「あんな山積みしていたら、普通に開いても倒れこんできて危ないに決まっているじゃないか」「カミさんが『この中どーにかしなさいって、いつもいつも言ってんだろー!』って、ホント、そのとおりだわ」と反省会がはじまる。



これを読んでいるかたは、何がどーなって、どういう状態なのか想像がつき難いだろう。実は、3月6日にネタでTwitterに載せたクローゼットの画像があるのだ! その画像がこれ。

・ちなみに、問題になってるクローゼットに埋まってるCD たち:Twitpic
< http://twitpic.com/46shrz
>

「越後・白雪そだち」と書かれた白いダンボール、左側に積んである茶色いダンボール、これもすべて音楽CDだが、これらのCDは、この先10年くらい聴かないであろうと封印してしまったCDたちなので問題ない。今回問題になっているのは、当然ながら、ただ山積みされているCDたちだ。

上の残っている貴重な画像を見る限り、レア版が2枚ほど、間に重なっていることができたので、バーサーカーにならなくて安心していたり。そのレア版とは、METALLICAが1985年に出演した、モンスターズ・オブ・ロックのときの海賊版。まだクリフ・バートンが生きているころの貴重な音源。もう1枚は、GUNSN' ROSESの、EP/LIVE FROM THE JUNGLEで、発売禁止となったレイプジャケット版。いまではもう値段つけられない。
恥ずかしい話ながら、ワタクシは普段から「整理整頓」という行為が苦手というよりも、散らかっていても気にならない性格。血液型がO型というせいなのか、たんに無頓着なのかは分からないけれど、まったく気にならない。むしろ、自分の空間演出の一部と捉えている節があるので、「散らかっている」ではなく、「アーティスティック」と自負していたりする。しかし、汚れているのはダメ。

ラボ(職場)でも、散らかって汚いのはワタクシの空間だけ。ほかの連中は、マジメに5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)を実行している、維持改善者たちばかり。なので、部下ちゃん(とくに女性部下ちゃん)たちから、「スローガンをひとつも守らない上司」と崇拝されている。光栄の極みだ。

しかし、お片付けスイッチがいったん入ると、ものすごい勢いで掃除を始めるのも、血液型がO型のせいなのだろうか。仕事しないで2日間くらい整理することが1年で1回はある。そういえば、以前にデジクリでそんなことを書いたことがあったなぁ... と読み返してみたら、見つけた。

・アナログステージ[11]:散らかっていることの美学
< https://bn.dgcr.com/archives/20090317140200.html
>

●クローゼットの中で誰かが悪戯している

ワタクシの散らかり自慢をしても仕方ないので、本題に戻る。独り反省会を終え、このまま御札でも貼って封印してしまおうかとも考えたが、CDのほかに、仕事の資料もクローゼットの中に仕舞い込んでいることに気がつき、「これは何とかしてでも開けないとマズい!」と、開けるための知恵を絞り出し始めた。

といいながらも、知恵を絞り出したところで、現実はシビア。扉を壊すか、壁に穴を開けるかの二択しかない。壁に穴を開けるならば、「扉を壊したほうが修繕費も安く済むだろう...」と、折り戸に目を向けると、わずかだが、折り目の部分に0.5mmくらいの隙間があるのを見つけた。

これはチャンスだ、この隙間を有効活用すれば、扉を壊さずに済む! ということで、定規使って隙間からCDを奥に押し込む作戦にでてみた。「おお、これで扉が開いたら、これぞ隙間産業! 開かない扉を開けます!」とか、くだらないことを考えながら実行。

隙間から見えるCDケースを定規を使って押してみる。動かない。上のほうから順番に押してみるが、まったく押し込まれていく気配がない。なぜ? なぜ動かない? またもや扉のまえで呆然としながら考えこむこと10分、CDケースが動かない仮説を立ててみた。

1)手前にあるCDだけでなく、奥にあるCDも倒れているから動かない
2)ダンボールが倒れており、その重さで動かない
3)カミさんがクローゼットの中で意地悪をしている

普通に考えると1番目の仮説が当たり前に感じるが、うちのカミさんだと3番目の可能性も捨てきれないので、折り戸の隙間から「おーぃ、あけてくれー」と声をかけてみたりする。当然ながら返事はない。でも、声をかけちゃうあたり、自分の純粋さというか、可愛さに、独りでニヤニヤする。

本格的にどうすることもできなくなったので、椅子の上にあがり、隙間の上からLEDライトで中を照らして見てみると、手前側のCD、奥側のCDというよりも、山積みされていたCDが、空いていた隙間全部に倒壊しており、上からCDを取り出さないと絶対に扉は開かないことが分かった。

と同時に、「クローゼットの中に入って、上から取り出せるなら苦労しないわ」と独りツッコミをし、椅子のうえで立ち往生することに。困った。CDはどうでもいいとして、仕事の資料が参った。こういうときに限って必要になったりするのが世の常。さて、どうするか。

この原稿を書いている5月29日現在、いまだクローゼットは開けられないままでいたりします。このままだと数年放置しかねないので、今度の日曜日にドアを解体しようか悩んでます。みなさん、日頃から整理整頓をやりましょう。

【べちおサマンサ】pipelinehot@yokohama.email.ne.jp
FAプログラマであり、ナノテク業界の技術開発屋
< http://bachio.posterous.com/
> ←更新してまっせ
< http://twitter.com/bachiosamansa
> ←フォローしても役に立ちません

○ついに、本格的な「6月危機」が到来してきたようです。製造業の方は、すでに実感しているのかもしれませんが、オイラのところはボチボチと危機が到来といった様子で、本当に製品が入荷してきません/9月にも「9月危機」が訪れると予想されておりますが、やっと景気の波に乗り始めた中小企業には、大打撃になるのではないかと危惧しております/受注はたくさんあるのに、作れない......これほど歯痒いものはないですよねぇ。

○記憶に残っている2週間の出来事→いきなり天丼が食べたくて、三ノ輪(東京)にある老舗、土手の伊勢屋さんに足を運んだ→どうせ食べるなら、美味しいものが食べたい! →丼からはみ出す穴子の天ぷらに、海老天がどどーん!→タレも甘すぎず、口当たりの良いタレで、ソースやケチャップなどが苦手なオイラでも完食→天丼は東京で喰うべし。→その足で柴又帝釈天へ行ってきた。