南西の方は台風の影響で、すごい荒天のようですね。土砂災害など被害が出ないことを祈ります。東京も今朝は一時かなりの雨が降りました。空気の入れ替えのために窓を開けていたら......床がびしょびしょ。飼い猫が遠巻きにぬれた床を眺めておりました。
この時期は湿気が多くて、紙ものをたくさん所持している私は、やきもきする季節です。でもそんな中でも、相変わらず紙ものを増やしては喜んでいる訳ですが、そんな紙もののなかから、ジャケ買いした本を二冊ご紹介します。
まず一冊目は『河野裕子歌集 母系』(河野裕子著/青磁社/3000円+税)装幀は濱崎実幸さん。
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4861981077/dgcrcom-22/
>
この本、実は2008年に初版が発行されており、このコラムで取りあげるには少し古い出版かもしれない。でも不勉強ながら私は目にしたことがなかった。
著者は著名な歌人で、昨年8月に亡くなっている。その最終歌集『河野裕子歌集 蝉声』が最近発売され、それと一緒に神保町の東京堂書店に平積みされていたのが『母系』だ。『蝉声』もすてきなブックデザインだったのだが、どうにもこの『母系』の方が心惹かれるものがあり、4年前のものながらここでご紹介する次第です。
この時期は湿気が多くて、紙ものをたくさん所持している私は、やきもきする季節です。でもそんな中でも、相変わらず紙ものを増やしては喜んでいる訳ですが、そんな紙もののなかから、ジャケ買いした本を二冊ご紹介します。
まず一冊目は『河野裕子歌集 母系』(河野裕子著/青磁社/3000円+税)装幀は濱崎実幸さん。
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4861981077/dgcrcom-22/
>
この本、実は2008年に初版が発行されており、このコラムで取りあげるには少し古い出版かもしれない。でも不勉強ながら私は目にしたことがなかった。
著者は著名な歌人で、昨年8月に亡くなっている。その最終歌集『河野裕子歌集 蝉声』が最近発売され、それと一緒に神保町の東京堂書店に平積みされていたのが『母系』だ。『蝉声』もすてきなブックデザインだったのだが、どうにもこの『母系』の方が心惹かれるものがあり、4年前のものながらここでご紹介する次第です。
最初はタイトルの流れるようなタイポグラフィに目がいき(ちなみに赤いこのタイトル文字には、スクリーン印刷でUVスポットニス厚盛りになっていて、透明なニスが少し盛り上がっている)、手にしてみると、帯は白に赤い文字が印刷されているのだが、何やら赤い色がちらちら目に入ってくる。
気になって帯をめくってみると、裏側には赤ベタが刷られグロスPP貼り加工が。その赤が反射したり、帯の断面から覗き見えたりしていたのだ。「母という生命の本源は、歌人としても、ひとりの女性の思いとしても、わたしの最も大きなテーマであった」と帯にあり、またこの歌集を読んでみると、人の内側に流れる血、そして思いのようなものがこの帯で表されてるように感じ、ひとりなんだか納得させられた装幀でした。
そして、帯に見られるような繊細で心の行き届いたブックデザインは、他の部分でも随所に感じられる。例えば表紙。手触りのいい白いクロス装に、背部分のみ深い赤色のビニルクロスが継がれていて、その上から透明の艶箔(もしかしたら赤い箔かも)でタイトルが押されている。
また手触りのいい表紙、見返しを開いていくと、扉には透明の艶箔押しされたタイトル文字。手間暇、そして愛情がかけられた本書。どうしても通勤電車内などで慌ただしく読む気にならず、休みの日、椅子に腰掛けてゆっくりと拝読しました。
二冊目にご紹介するのは、『世界をやりなおしても生命は生まれるか?』(長沼毅著/朝日出版社/1600円+税)ブックデザインは吉野愛さん。
< http://www.asahipress.com/bookdetail_norm/9784255005942/
>
奇しくも今回は、生命の根源とか、何か身体の内部から発する血潮のようなイメージのブックデザイン二冊になってしまったのだが、この本は何かビッグバンのような、生命の起源のような、無機物質から生命が誕生した爆発を思わせるような装画が気になって買いました(装画は北村範史さん)。Webの画面上ではニュアンスがよく伝わりませんが、鮮やかで力のある印刷で、強い装丁になっています。
並製の表紙は地券紙(それもけっこう薄め)で、その表裏や見返しにも装画と同じ絵や別バージョンの絵が墨で刷られている。ちなみに裏表紙の表裏にも刷られていて、こうした隅々まで手をかけているブックデザインに惹かれることが多いです。
本書は広島大学付属福山高校と生物学者である著者との「宇宙と生命」に関する質疑応答をまとめているのですが、これがおもしろい! こうした分野の本はふだんあまり読んでいないのですが、読んでみるもんですねぇ。これこそブックデザインの力。この装丁じゃなければ、私、買いませんでしたから。
ただほめておきながらなんですが、二つばかり個人的に惜しいと思った点が。ひとつは読んでいるときノンブルの主張が強くてちらちら気になってしまったこと、それと本文中の欧文(特にスクリプト)と数字が若干太くて、こちらも少々気になりました。まあ、私がそういうことを意識しすぎているから気になってしまった、ということが多分にあるとは思うのですが。
それにしても面白い本がいろいろありますね。やっぱり本屋通いはやめられないな!
※私が編集している『デザインのひきだし』の人気連載をまとめた『本づくりの匠たち』という書籍を発売しています。それの刊行記念トークイベントを、青山ブックセンター(7月31日)とジュンク堂書店池袋本店(8月4日)で行ないますので、ぜひおいで下さい。それぞれ製本職人、フロッキー加工職人とブックデザイナー名久井直子さんが語り尽くします!
詳しくはこちら↓
< http://dhikidashi.exblog.jp/16572769/
>
【つだ・じゅんこ】tsuda@graphicsha.co.jp twitter: @tsudajunko
『デザインのひきだし13』好評発売中。名久井直子さんがさまざまな本づくりの現場を訪ねた、デザインのひきだしの連載をまとめた『本づくりの匠たち』も発売中です。
デザイナーの「やりくり上手」の秘密が満載の『予算がなくてもステキなデザインのフライヤー・コレクション』、『装丁道場』『見た目よし! 機能よし!のショッピングバッグコレクション』『グッズづくりのイエローページ』、『デザインのひきだし』バックナンバーも好評発売中です!
デザインのひきだし・制作日記 < http://dhikidashi.exblog.jp/
>