気になるデザイン[64]何もないのが逆に気になる
── 津田淳子 ──

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夏の暑さ攻撃が一段落したかと思ったら、今日はまたぶり返すらしいですね...。暑い時期には暑く、寒い時期には寒くないと、農作物含め、よくないとわかってはいても、この暑さは堪え難いです。早く秋にならないかなぁとぼんやり考えたりしますが、秋になるってことは、今抱えている仕事をすべて校了させてなければいけないわけで......。はぁ、時間は早く過ぎてほしくないけど、早く秋にはなってほしい。うまくいきませんな。

今日ご紹介する、気になる装丁の本。まず一冊目は『へうげもの 13巻』
(山田芳裕著/講談社/543円+税)
装丁はシマダヒデアキさん(Local Support Department)。
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4063870243/dgcrcom-22/
>

書店で目にした時、「あれ? なんか白い紙がかぶさっちゃってるのかな?」と思って近づいてみると、いや違う。こういうカバーなのか! と驚いた次第。

というのもこの『へうげもの 13巻』、カバーの表1部分の多くが「真っ白」。右上部分に少し絵があり、帯にタイトルは入っているものの、いやぁ、久しぶりに驚きました。通常、少しでも絵をたくさん見せようというタイプの装丁が多いコミックスの中に、この白部分がいっぱいのものがあると、なんとも目立ちますね。



この潔さに惹かれてついつい購入してしまったのですが、帰ってから開いてみて「?」。帯のソデ部分(中に折り返されている部分)に、丸いシールが貼られている。見える部分の帯にも同じ絵柄が刷られていて、それと同じものが丸く型抜きされたシールとして、帯のソデに貼られているとは、これどういうことなのだ?

ちょっとググってみたところ、これは「はがせない&はれない茶陶ステッカー」とのこと。う、うーむ、なんだかよくわからないが、帯のそれも見えないところに、ステッカーを貼るとは......。これ、当然手作業ですよね......。なんかすごいな。

ちなみにこの『へうげもの』、この巻以外にもけっこう大胆なカバーが多い。最初は色ベタは多いものの、驚くほどではなかったが、巻を追うごとに色べた部分が多くなり、11、12巻ではかなりの部分が色ベタで占められ、絵柄スペースがどんどん小さくなってきていた。そこにきてこの13巻。次巻以降がどうなっていくのか、大変たのしみだ。

今回のもう一冊は、書籍ではないのですが、展覧会の図録をご紹介したいと思います。「生誕100年記念 瑛九展」図録。アートディレクターは祖父江慎さん、デザインは佐藤亜沙美さん(cozfish)。
< http://tokino.lib.net/catalog/ctlg/detail.php?id=353
>

こんな本が2000円の売価でつくれるんですね......。Webではぜんぜんその良さがわからないと思いますが、実際に手にしてみると、この物感はすばらしいものです。

まず目を惹くのが、本体の背。パステルカラーの表紙がついた薄い中綴じ本が何冊も重なって一冊に綴じられたかのよう。最近「コデック装」という名前で落ち着きつつあるこの製本、こうしてそれぞれに折の一番外側に色紙を使うときれいですねぇ。
< https://bn.dgcr.com/images/se >

でも、背がこうなので、棚ざししたときに、背文字がないことになる。しかしこの図録は、表紙が少し長くなっていて、その長い部分に背文字が印刷され、それを小口方向に巻けばちゃんと背ができるっていうしかけ。

中面はといえば、構成ももちろんステキなのですが、使われている紙がところどころ更紙だったり、ピッカピカな銀色(大日精化の「LR輝き」というステキ銀インキ)がそこかしこに使われてて、うーん、中身もうっとり。

展覧会で買えるのが一番いいと思いますが、遠くていけない、東京にくるまで待ちきれない! という方は、上に書いたURLのショップで買えるようなので、なくなるまえにぜひ。

とまあ、今週はこんなところで。
次回は校了直前。はぁ、あっという間に来そうで怖い、怖い。校了にも負けず、今週も本、買いまくるぞ!

【つだ・じゅんこ】tsuda@graphicsha.co.jp  twitter: @tsudajunko

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