ところのほんとのところ[81]存在の証明
── 所幸則 Tokoro Yukinori ──

投稿:  著者:


[ところ]にとって初めての、ヌードがテーマの写真展が6月9日で終わった。NYPH(ニューヨークフォトフェスティバル)や中日友好現代美術展なども同時期に出展していたこともあり、今回のNiiyama's Gallery and sales Salonで行われた「1 second-ほんとうにあったように思えてしまう事」についてお知らせする力がほとんどなくなってしまっていた。他のことも含め、詳細はここに書いてあります。
< http://tokoroyukinori.com/info_j.php
>

個展「1 second-ほんとうにあったように思えてしまう事」が決まったのは去年の年末ぐらいだったから、開催までたっぷりと時間はあったわけなのだが...。突然「NYPH」への出品が決まり、それも「東京画」の参加作家全員ではなく50人前後の中から18人だけが作品を展示する、そのなかに選ばれたというのは光栄なことであり、またNYでの展示は初めてということも相俟って、[ところ]の神経がそっちに向いてしまったのです。

さらに3月末には中日現代美術交流展への出展依頼も来て、しかも草間彌生さんや、荒木経惟さんと並んで展示されるという話で、これも開催時期が同じ。ということで、気持ちが分散してしまったのは否めない。

作家にとっては個展が一番大事なんだけれども、こういう滅多にないような話がまとまってやってくると、[ところ]も集中力が持続できないんだなと思い知らされました。




それでも、[ところ]の初めてのヌード作品オリジナルプリント展の最後の数日間は熱心に見に来てくれる方達も増えて、プリントも二枚売れました。個展で一枚もプリントが売れなかったことはない、という所幸則伝説(?)は続いています。

個展開催前にも売れたので、合計で今回のヌードシリーズは三枚売れたことになります。少しですが売れたことで、ギャラリーに迷惑をかけなかったのが非常に嬉しいのですが、今回のこの個展は、隠れ家的ギャラリーで所幸則の作品に本当に凄く興味があって、買いたい程好きな人達だけがくればいいやという気持ちで開いたので、[ところ]は本当はこれでいいんだとも思っています。動員数ではなく濃度が問題なんじゃないかと最近思っているからです。

美術館などは入場券を沢山売る使命があります。本当は芸術にそんなに興味がなくても、私って芸術好きなのよってことがファッションだったりする人など、誰でもいいから人が集まればそれでいいわけです。[ところ]ら純粋芸術のなかの写真というカテゴリーの人間は、人数至上ではなく本当に好きな人至上のはずなんです。

[ところ]は、もちろん多くの人に好きになってもらえれば、それは一番素晴らしいことだと思っていますが、今回の作品は特別だったのです。

裸体を撮る、そのこと自体が[ところ]にとってはとても個人的な記憶の確認のための行為なのです。僕と彼女の間にあったことが確かに存在したという、事実の証として撮る意味合いが大きい作品であり、被写体にはものすごく愛情があります。本当はそんなに沢山の人に見せたくないという複雑な思いもある[ところ]でした。

それゆえ、渋谷のシリーズと違い極端にエディションも小さく、渋谷は50枚なのに、今回のシリーズは7枚とか、ものによっては5枚だったりします。ですが、一方では印刷物の世界でオランダのファインアートフォトマガジン「Eyemazing」の2012年3月21日発売号に特集されたことにより、
< http://www.eyemazing.info/all-issues
>
この写真の存在は世界の何十万人かの知るところとなりました。

そこで、一部の人にでもいいから印刷ではない本物のプリントを見てもらおうという思いでコスモスの新山さんにお願いして個展を開くことにしたのです。そして最終日、平日の昼間にアーティストトークをしました。

告知は3日前でしたが、充分な人が集まり、この作品はなぜ撮ったのか、個展のタイトルである「1 second-ほんとうにあったように思えてしまう事」の意味などを話しました。脱線して今の写真界の様子とか、今後[ところ]はどこにいくのかなども話し、とても濃密な時間が過ごせました。

人間は過去から未来へと繋ぐための遺伝子ランナーだと思っている[ところ]としては、異性との出会いは特別なものなんだという意識があるのでしょう。ヌード作品展にこういうタイトルをつけるということは。「存在の証明」という言葉が殆どのヌード作品に付いています。

【ところ・ゆきのり】写真家
CHIAROSCUARO所幸則 < http://tokoroyukinori.seesaa.net/
>
所幸則公式サイト  < http://tokoroyukinori.com/
>