3Dプリンタ奮闘記[07]3Dプリンタ『接触篇』
── 織田隆治 ──

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さて、前回までは色々と前置きというか、基礎的な事について触れてきた訳だが、今回から「どんなふうに使っているのか?」について、雑談を交えながら、《ここ重要》というところを述べて行くつもりだ。凄くつまらない事かもしれないが、これが結構忘れがちなポイントで、個人的には重要事項なのだ。

まず、僕が導入した2012年1月。事務所に到着する時に時間は遡る。ただでさえ糞狭い事務所に、「ピンポ〜ン、宅配便で〜す」の声と共に、600mm角のデカイ段ボール箱が届いた訳だ。

狭い事務所の入り口をギリギリ通過して、とりあえず事務所にご案内。でかいぞ...。これ...。まずは梱包を解かない事には、事務所内を動き回るのも大変だ。まあ、一人親方の個人事業なので、人に迷惑をかける事もないのだが。

設置するのに「地べた」に置く訳にも行かず、まずは設置する台を用意するのだが、知り合いの大工さんに、木工で制作してもらうには重くなるし、いざという時に持ち出すのも大変。夜逃げ、とか、引っ越し、とか、ね。という事で、スチールシェルフの600角のBOXを作ってその上に設置した。

僕が購入した3Dプリンタの「3DTouch」は、要は昔懐かしい製図用プロッターみたいなもので、前後左右にヘッドが動き回る。製図用プロッターを使った人には分かると思うが、その際の音と振動は結構なものである。騒音と振動でご近所に迷惑をかけるばかりか、台が崩壊する恐れもある。

《ここ重要》自重も37kgほどあるので、しっかりした台を用意したいところだ。他の機種はもっと重いのである。

これは、購入前に動作を確認していたので、準備は万端だった。




さて、セッティングにかかる訳だが、これが結構一人で持ち上げるのは辛い。本当に辛い。箱から出す事が出来ず、箱の底をカッターで切り取って開封...。笑い事ではない。持ちにくいこれを、無理な体勢で持ち上げたらギックリ腰になるのは必定だ。

《ここ重要》みなさんも導入、セッテイングされる時には、複数の人が居た方がよいという事を忘れてはならない。

なんとか老体に鞭を打ってスチールシェルフ上に鎮座させる事に成功し、「さて、今日は終るか...」という考えが頭に浮かんだが、そんな事してたらいつまでたっても使えないので、説明書を片手にセッティングを開始する。

「3DTouch」は3mmφの樹脂の線材を原料とし、その線材が電線の巻いた物みたいなドラムに1kg巻かれている。まず、その線材を本体に付いているチューブに差し込んで、高温になるヘッドに誘導する。線材の先端を丸く削って、チューブを傷つけないように差し込んで行く訳だ。

なんとかヘッドに差し込みが完了し、ヘッドの動作とベッド(積層していく台)の水平をきっちり合わせ、さて、テスト出力。「3DTouch」は、PCを直接接続するのではなく、データをUSBメモリに記憶させ、そのUSBメモリを本体に差し込む。

《ここ重要》PCを占領しないので、その点もこのプリンターを気に入った理由のひとつだ。3Dプリントは、時間がかかる。その間、PCをずっと起動しておく必要もない。

まずは、初めからUSBメモリに入っているテストデータを出力するのがセオリーだが、性格の曲がった僕は、まず自分で作ったデータを出力したいと思い、そこまでやってからMacに向かって、3DCADを立ち上げたのであった。

とりあえず、僕の名前を3Dテキストで制作し、それを出力してみる事にした。「そんなのアクリルをレーザーカッターで切った方が早くね?」とかいう意見は却下。とにかくやってみたいんですよ。これ。

大小何種類かの文字を作って、レイアウトし、専用のソフトで構築データを作る。ここまではスムーズじゃん! って事で、USBメモリにデータを書き込んで「セッタップ!」という声と共に「3DTouch」に差し込む。

《ここ重要》仮面ライダーX、と分かったあなたは立派なオッサンです。

「3DTouch」のセッティング画面で、文字データを選択、スタートさせる。まずはヘッドの温度が上がって行くのが、画面に表示される。そして、PLA樹脂の溶解温度の195°に達した時に、冷却ファンの音と共にヘッドが動き出した。

「ウィィィィィィィィ〜〜〜〜〜ン!」
「こいつ。動くぞ...」 続く...。

【織田隆治】
FULL DIMENSIONS STUDIO(フル ディメンションズ スタジオ)
< http://www.f-d-studio.jp
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