3Dプリンタ奮闘記[14]造形の基礎と応用・その2 素材選び
── 織田隆治 ──

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もの作りをする上で、重要なポイントになってくるのが、その用途によってどのような素材を使用して製作するか、と言う事である。

何をどのような方法で、どういった使用目的かで製作の方法や素材が変わって来る。それは、作家といわれるアーティストが作るアート作品であったり、博物館や科学館に展示している模型、他にもフィギュア造形など様々である。

作家性の高いものについては、その素材は一概に保存性や使用目的を逸脱した物が使われる事もしばしばあるが、今回は割愛しよう。

模型などでは、照明が強く当たる場所に展示される場合は、ある程度熱や紫外線などに強い素材を使用しなければならない。どれも、最終的にどのように使用されるかで素材を決めていく必要がある。

これは、紙媒体にも言える事であり、その使い方によって紙の質をどうすべきか。厚みは?
インクはどういった物を使用すべきか?
コートする必要があるか?
コートするなら、どういったコート素材を使用するべきか?
と、色々な選択が求められる。

今あげてきたのは、最終的な素材、という事だが、それに至るまでの「試作」や「原型」といった箇所では、色々な素材が使われている。

これは、最終的な素材が金属といった硬質な物は、当たり前にこねたり削ったり出来ないので、その代用で形状を他の加工しやすい素材で製作してから最終的に置換える、という手法だ。

もちろん、鉄などの金属が加工出来ない訳ではない。マシニングセンタなどで、フライス加工、中ぐり、穴あけ加工などはもちろん可能だが、当然それは目的によって使い分けられる。

FRP造形などでは、一般的には粘土→石膏型→FRPと、最終的にはFRPに置換えられて完成となる。途中の素材は自ら使いやすい素材を使うが、最終的にはポリエステル樹脂とガラス繊維、というところに落ち着く。ブロンズ像などもほぼ同じ工程を経て、ブロンズに置換えられる。




最近流行のフィギュアに至っては、紙粘土、インダストリアルクレイ、スカルピー、エポキシパテ、ポリエステルパテなど、その制作者にとって一番使いやすい素材、その制作物に対して一番合った素材が使われる。

しかし、長期保存するためには、その原型となる形状からシリコン型を作り、ポリエステル樹脂やエポキシ樹脂を流し込む事で目的に合った素材に置換えられる。市販されているフィギュアは主に、PVC(ポリ塩化ビニル)等に置換えれられる。

要は、「最終的に適切な素材に何を使うか」を頭の中に入れておけば、途中の素材は特に限定はされないということである。

3Dプリンタも、その中のひとつの選択肢であり、それですべてを製作できるとは限らないのである。特に、長期保存しなくてはいけないようなものには、UV硬化型の素材は適さないし、衝撃や力のかかるものには石膏を硬化させるタイプの素材は適さない。

Zプリンタのような「石膏にインクジェット方式」のプリンタで出力された物については、あくまでも私の感想だが、紫外線などによる色の劣化が結構激しいと感じた。

最新の技術で耐光性も上がって来るのだとは思うが、これを回避するために紫外線を反射できるコート剤などを塗布したりしているが、それでも色落ちは仕方のない事だと思う。

チタンなどを出力した物の耐久性は試したことがないので、私の方では判断しかねるが、金属をプリントする機器に至っては、これはかなり優秀なのかな、とは思う。

モノ作りをする上で、色々な知識がある方が良いに決まっているが、中でも素材選びがかなりの重要なファクターになる事は間違いない。

私の場合は、展示模型を作る事が多いので、木工、アクリル、ラテックスなどのゴム、シリコン、FRP、レジンキャスト、アルミ、しんちゅう、鉄などを、適材適所で使って行く事が求められる。

それらの選定については、これまで色々と経験してきた案件などで「実践学習」して、体験によって得られたものが多い。要は色々触ってみよう、って事になる訳だ。

自分で経験して、「ありゃ〜! こりゃ! アカンがな!」と失敗した事ほど、脳内に強くインプットされる。私の場合は特にそうだ。

「身をもって知る」学習にはこれが一番。。。だと思う。そういう失敗を繰り返して、色々な知識を身につけ、製作する物のレベルが上がって行くのだと思う。まあ、何度も同じ間違いを繰り返す事は避けたいところだが。

知識としては知っていても、やっぱり体験する学習の方が良いに決まっているのだ! と、思う。きっとそうだ。と信じている。

【織田隆治】
FULL DIMENSIONS STUDIO(フル ディメンションズ スタジオ)
< http://www.f-d-studio.jp
>

頭デッカチは面白くない。本ばっかり読んでても面白くない。やっぱり「五感」で感じたいじゃないか、ですね。